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【経済】

TPPマレーシア会合開幕 日本「聖域」設定主張へ

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 【コタキナバル=共同】環太平洋連携協定(TPP)拡大交渉会合が十五日、マレーシア東部コタキナバルで二十五日までの日程で始まった。初参加する日本は米議会の承認手続きが必要なため、二十三日午後から合流の見通しだ。日本は、コメや麦、牛肉などの農業の重要五品目を関税撤廃の例外とする考えを主張、出遅れの挽回を狙う。

 今回は十八回目の会合。米国など先行参加十一カ国は、十月にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会合での「基本合意」と、年内の「交渉妥結」を目標に掲げる。決められた日程は残り少なくなっており、日本には厳しい交渉も予想される。

 最終日の二十五日に日本向けの特別会合が開かれ、先行参加国が交渉の現状を説明し集中討議。日本はこの場を利用して、重要五品目を関税撤廃の例外としたい自国の立場を表明する方針だ。ただ、こうした「聖域」設定にはこれまで、複数の国が懸念を示している。

 安倍晋三首相が三月に交渉参加の意向を表明してから四カ月余りを経て、ようやく正式な交渉入りが実現する。

 最大の焦点となっている工業品や農産品の関税を扱う「市場アクセス」の作業部会のマレーシア会合での議論は十五〜十九日に行われる予定で、日本は間に合わなかった。

 交渉二十一分野のうち、五月のペルー会合では「原産地規則」「検疫」などで進展があった。今回の会合の議長国マレーシアは、協定草案の半分程度の分野で「交渉が実質的に終わった」と発表している。

 ただ、市場アクセスや「知的財産」をめぐっては、各国の利害が激しく対立し、協議は難航しているとされる。

◆関税維持、各国にも思惑 例外化の余地も

 TPP交渉は、年内の最終合意が目標だ。しかし各国の利害が激しくぶつかる関税を筆頭に、話し合いは難航。日本がルール作りに関与できる余地は残されている。決着は越年せざるを得ないとの見方が浮上しており、米国主導で進んできた交渉の変化もあり得る。

 交渉は関税のほか、知的財産や貿易円滑化、投資、労働など二十一分野で実施されている。最終的に二十九章で構成される協定にまとめる計画だ。今回の交渉会合を取り仕切るマレーシア政府は六月に「二十九章のうち、技術的で争いのない十四章は実質的に協議を終えた」と発表。具体的には、食品の安全基準を決める「衛生植物検疫」の章や、ビジネスマンの入国と滞在手続きを定める「一時的入国」などを挙げた。

 ただ日本政府高官は「マレーシアの発表は当てにならない。情報操作ではないか」と指摘する。協議を終えたとされる章に、公共事業の発注先や政府の物品購入先を海外に広げる「政府調達」が含まれていたためだ。

 マレーシア政府はマレー系住民を優遇する「ブミプトラ(土地の子)政策」を掲げ、公共事業の門戸を外国企業に広げるのに消極的。日本はマレーシアに公共事業の開放を迫る考えで「難しい交渉になる」(政府高官)とみている。

 関税では、日本がコメ、麦、牛・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物の重要五品目を関税撤廃の対象から除外できるかどうかが焦点だ。米国は砂糖、カナダは乳製品といった具合に、各国も関税を維持したい品目を抱える。各国の利害をうまく調整できれば、五品目の除外が認められる可能性はある。

 米国の交渉手法を「強引だ」と快く思わない国もあるとされ、TPP政府対策本部の幹部は「多くの国が日本の交渉力に期待している」と話す。

 

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