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【岐阜】

レールバイク延伸要望に難色 飛騨市

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 飛騨市神岡町の旧神岡鉄道を走る観光自転車のレールマウンテンバイク。運行する片道2.9キロの先には、未使用の17キロに及ぶ線路が残っている。運行を担うNPOは、魅力を高めるため運行区間の延伸を求めており、線路を所有する飛騨市が認めて活用に乗り出すかどうか、注目されている。

 レールバイクは二〇〇六年に廃線になった鉄路を生かし、衰退する地域の活性化につなげようと、住民主体で考案した。市観光協会から引き継いだNPO法人の神岡・町づくりネットワークが運営する。自転車を鉄製の枠で線路に固定して走るため「ガタン、ガタン」ときしむ線路の音も魅力だ。

 人気の高まりで昨春に土日・祝日のみから週六日の営業に拡大。廃線を生かした取り組みのユニークさ、鉄路を残したいとの住民の熱意が評価され、昨秋は国土交通省の日本鉄道賞・特別賞にも選ばれた。

 NPOは、レールバイクの魅力を高め、リピーター獲得につなげようと、全線の活用を熱望している。未利用区間を「トンネルや橋が連続し、感動するコース」とNPO専務理事の山口正一さん(64)は話すが、飛騨市は安全対策を理由に現在の区間のみ運行を許可する姿勢で、NPOとの認識の差は大きかった。廃線後の線路は、鉄道会社が使用権限を無償で市に譲渡。市が延伸を認めて使用目的を変更しない限り、いずれは撤去される。

◆安全対策の議論に期待

 活用の道筋をつけたいNPO法人は三月、延伸を求める要望書を市に提出した。これまで延伸の考えはないとの見解だった井上久則市長だが、昨年に初めて乗客が二万人を突破したことや、鉄道賞受賞の評価を重視し、姿勢に変化も垣間見える。市議会六月定例会の一般質問で見解を問われた井上市長は「今後NPOと議論していく」と述べ、延伸の可能性に初めて言及した。

 一方で「問題があれば市に管理責任が課される」として、安全性を最優先させる考えをあらためて強調。鉄橋の補強やトンネル内のコンクリートの剥離防止などが不可欠だと述べた。未利用区間は、渓谷が織りなす迫力ある景観が魅力だが、手すりやネットを張るなどの対策が求められ、費用負担も課題だ。

 井上市長は「国などの施策で安全対策が施される場合、延伸を応援できる」と話すが、廃線の利活用に使える特定の補助金はなく、財源確保のめどは立っていない。市の厳しい財政状況から積極的な投資に乗り出せず、当面は奥飛騨温泉口駅の整備から始める考え。NPOの熱意と、市の現実路線との間のギャップは埋まっていないが、観光が地域活性化の鍵になる飛騨市にとって重要な課題で、双方の議論の深まりが求められる。

(島将之)

 <神岡鉄道>1966年に国鉄神岡線として開業した。全線のおよそ6割をトンネルや橋が占め「奥飛騨の地下鉄」とも称された。第三セクターによる運営を経て、利用客の減少などで2006年末に営業を終了した。猪谷駅(富山市)まで全長19・9キロ。レールマウンテンバイクの利用区間は奥飛騨温泉口駅を発着点に、神岡鉱山前駅までの片道2・9キロ。

 

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