焦点:高まる自動操縦への依存、アシアナ機事故で見えた皮肉
[サンフランシスコ/シアトル 15日 ロイター] - 今月6日に米サンフランシスコ国際空港で着陸に失敗した韓国アシアナ航空の214便。中国人女子学生3人が死亡した今回の事故で、安全を追求したゆえの自動操縦への依存が、パイロットの能力の衰えという皮肉な結果を招いたのではないかとの見方も出ている。
今回の事故では滑走路進入時に機体後部が防波堤に衝突したが、直前の飛行速度が目標値を著しく下回っていたことが分かっている。事故機のパイロットは着陸の中止を試みたが間に合わず、オートスロットル(自動速度維持装置)は目標速度に設定していたと説明している。
事故を調査している米運輸安全委員会(NTSB)は、今の段階で事故原因を断定するのは時期尚早と強調しているが、航空業界の専門家らは、これまでにNTSBが明らかにした情報から、今回の事故と近年の航空機事故には共通点があると指摘する。
米ニューヨーク州バッファロー郊外でのボンバルディア機の墜落事故、大西洋に墜落したエールフランス機、オランダ・アムステルダムでのトルコ航空の墜落事故──。いずれも2009年に発生したものだが、これらの事故と同様、アシアナ機のパイロットは機体の速度が危険水準まで落ち込んだ後、立て直すことができなかったものとみられている。
2009年の3件の事故については、これまでに複数の原因が挙げられているが、いずれの場合も当局からはパイロットの訓練を疑問視する声が上がっているほか、コンピューター制御されたフライトシステムのモニタリングや、緊急事態への対応に関する指導強化を求める意見が出ている。
アシアナ機の事故は、大型航空機で高まる自動操縦への依存が、パイロットのマニュアル飛行能力や不測の事態への対応力を衰えさせた可能性をあらためて問う格好となった。
米連邦航空局(FAA)はNTSBからの勧告を実行しなければならないが、NTSBはFAAの対応の遅さへの批判を繰り返しており、今回の事故ではこうした点も浮かび上がらせている。特にNTSBは、コックピット内での失速警報の強化や、パイロットの訓練の改善を推奨しているが、FAAの動きは鈍い。
航空機の安全はここ数十年で大きく改善している。航空業界では、死亡事故減少を支えているのはコックピットの機械性能向上だという見方で概ね一致している。しかし、この高性能機器がパイロットに新たな問題も突き付けていることは今や明らかだ。 続く...