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憲法を問う (3)国会 熟議かスピードか

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 先月閉幕した通常国会では、参院の存在意義が大きく問われた。

 最高裁から「違憲状態」と判断された衆院小選挙区の「一票の格差」を是正する区割り改定法は衆院通過後、与野党の対立によって参院でたなざらしにされ、審議が始まらないまま六十日が経過。憲法五九条の「みなし否決」が適用され、衆院で三分の二以上の賛成により再可決、成立した。参院は「再考の府」の役割を放棄した。

 衆参両院で多数派が異なる「ねじれ国会」では、確かに法律は通りにくい。こうした現状を念頭に、みんなの党と日本維新の会は二院制を定めた憲法四二条を変え、一院制の導入を主張する。

 みんなの党は公約に「衆参両院を統合し、定数二〇〇の一院制に改める」と明記。維新も「衆参合併により一院制を確立し、迅速な意思決定が可能な国会に変える」とする。

 維新は一院制の前段階として、参院で否決された法案も衆院の三分の二以上の再可決で成立するという憲法五九条を変えて、再議決の要件を過半数に緩和することを検討。もし実現すると、衆院で過半数を握れば、どんな法律も成立させることができる。

 両党は国会に提出された法案を効率よく成立させるには、衆院で可決した法案をもう一度審議する第二院はいらないと考えている。

 自民党も憲法草案の解説集で「今後、一院制について検討する」とするが、党内の参院議員の反発が強く、現段階では消極的。昨年四月に同党の衛藤征士郎衆院議員が会長を務める超党派の議連が一院制導入の改憲原案を提出したが、党全体には広がっていない。

 一方、民主、公明、生活、共産、社民、みどりの風の六党は、国会は法案を早く通すことよりも、中身をチェックすることが重要で、そのためには二院制は欠かせないと考える。「衆院のカーボンコピー」と呼ばれる参院の独自性を高め、十分に議論を尽くす「熟議」ができるよう国会改革を提案している。

 民主党と生活の党は「衆院は予算、参院は決算と行政監視」などと、役割分担を提唱。公明党は「ねじれも、ひとつの民意の表れだ」として、参院で否決された法案を衆院の再可決で成立させる要件の緩和に否定的だ。

 共産、社民両党は「参院には『再考の府』の役割がある」「(一院制にすると)問題のある法律が迅速に通ってしまう」と訴え、みどりも「ねじれが悪いのではなく、それを克服する知恵がないのが問題だ」と指摘する。

 国会に熟議を求めるのか、法成立のスピードを求めるのか。一院制の是非はそれを問う。 (岩崎健太朗)



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