東京新聞 tokyo web
文字サイズ
全国ニュース

憲法を問う (2)権利・義務 人権か「公」優先か

写真

 憲法の第三章には法の下の平等や表現の自由など、個人の権利を保障する規定が並ぶ。憲法は国家権力を縛るためにあるという立憲主義の根幹をなす章として「人権カタログ」とも呼ばれる。

 特に、一三条の幸福追求権は人権規定のよりどころで、憲法で最も大切な条文といわれる。ただ、個人の権利にも「公共の福祉に反しない限り」という条件が付く。他人に迷惑をかけたり、多くの人に共通する利益を妨げる場合は一定の制約を受けることがある。

 自民党は改憲草案で「公共の福祉」を「公益及び公の秩序」という言葉に置き換えた。草案の解説集は「基本的人権の制約は、人権同士がぶつかるときに限らないことを明確にした」と説明し、「公共の福祉」とは違うことを認めている。「公益」「公の秩序」は国家、政府が決めた政策やルールとも解釈でき、政府の方針が人権に優先することもあり得る。

 背景には、現行憲法が「人権を尊重するあまり、究極の個人主義、利己主義が広がった」(保岡興治元法相)という考え方がある。改憲草案では義務規定も増やし「日の丸・君が代尊重義務」「家族の助け合い義務」を明記した。

 日本維新の会も同じような考え方で、衆院憲法審査会で「個人の権利行使は国家や社会の利益との調整も必要だ」と表明している。

 これに対し、民主、共産、社民、みどりの風の四党は「国家による恣意(しい)的な権利制限の意図が読み取れる」と反対。民主党は公約で「基本的人権は『公の秩序』に劣るものではない」と指摘し、社民党の福島瑞穂党首は「表現の自由を公の秩序で制限すれば、権利がなくなってしまう」と批判する。

 共産党は、東日本大震災の被災者や非正規労働者の生活の現状を挙げ「今の政治には、先駆的な人権条項を盛り込んだ現行憲法の精神がまったく生かされていない。憲法の理想に現実を近づけるべきだ」と主張する。

 公明党は権利と義務の見直しには触れない代わりに「新しい人権」を憲法に加えることに積極的だ。良好な環境を享受する環境権などの新設を求めている。自民党と維新は改憲の突破口にする狙いもあって新しい人権に賛成。民主党も前向きで、みんなの党は必要性は認めている。

 共産、社民両党は環境問題などには熱心だが、憲法に加えると「アリの穴から堤が崩れる」ことになりかねないと、護憲の立場から反対。みどりの風も「人権のインフレ化(憲法に多くの人権を書き込むと、結果として他人の人権を制限してしまうこと)が起こる懸念がある」と否定的だ。 (岩崎健太朗)



PR情報





おすすめサイト

ads by adingo