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憲法を問う (1)戦争放棄 不戦か海外派兵か

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 憲法の将来を決める岐路となる参院選が始まった。改憲勢力が議席を大幅に増やし、発議への布石を打つのか、護憲勢力が改憲の流れを断ち切るのか。日本の平和主義の象徴となっている九条や、国会が改憲を発議する要件を定めた九六条などテーマごとに、各党の主張を比較し、検証する。

 戦争を放棄し、戦力の不保持と交戦権の否認を定めた憲法九条。各党の主張を比べると(1)自衛隊を「軍」と位置付けるか(2)米国などの同盟国が攻撃を受けた場合、反撃できるように変えるのか(3)自衛隊の海外活動を拡大するのか−の三点で対立している。

 自民党は昨年四月に改憲草案を公表した。九条を変えて自衛隊を「国防軍」と明記。米国などが攻撃された場合も反撃できるようにし、国防軍の海外活動も規定。現在は禁じられている多国籍軍への参加を可能にした。

 日本維新の会も選挙公約に「自立した安全保障体制確立のため、憲法を改正する」と明記し、自民党と同じような主張をしている。

 これに対し、共産、社民、みどりの風の三党は九条は変えるべきではないと主張。共産党は「日本を『海外で戦争する国』にする改憲を許さない」、社民党も「憲法改悪と戦争への道を許さない」と公約し、みどりは「九条の平和主義は国際社会における信頼の基盤だ」(谷岡郁子代表)と訴える。

 九条改憲派と護憲派の違いは、目指す国家像の違いによる。

 改憲派は日本も他国並みに「軍」を持って海外に派兵し、戦闘に巻き込まれる危険があっても「国際貢献」すべきだと考える。一方、護憲派は九条堅持によって自衛隊の海外活動に歯止めをかけ、戦後、日本が歩んできた平和主義を守ろうとしている。「不戦」こそが先の大戦で多数の犠牲者を出し、唯一の被爆国である日本の存在感を世界に示せると考える。

 どちらの路線に軸足を置くかはっきりしないのが民主党で、九条改憲の是非も明確な見解を示していない。公約は「平和主義、専守防衛、徴兵制禁止の原則及び、自衛隊に対する国会のチェック機能を明確にするための議論を深める」とするにとどめる。

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 公明党は今の九条の条文はそのまま残し、自衛隊の海外活動のあり方は九条に条文を加えて明記することを検討。ただし、活動内容は人道復興支援など非軍事的な協力を想定している。

 生活の党も九条の条文は残し、自衛隊の国連活動への参加の根拠となる条文を加えるべきだと主張するが、国連決議があれば紛争地域への派遣も認める方針で、公明党より改憲派に近い。

 みんなの党は、渡辺喜美代表が公示日の街頭演説で「民主主義を破壊する憲法改正は絶対に認めない」と強調。しかし、同党は公約で九条改憲の賛否は明らかにせず、三月の衆院憲法審査会では「わが党は九条に自衛権を明記すべきだと考えている」と表明している。 (岩田仲弘)



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