香港のコンサルティング会社「政治経済リスクコンサルタンシー(PERC)」がアジア諸国と米国、香港で事業を行っている世界の企業を対象に、各国の腐敗の程度を尋ねるアンケート調査を行ったところ、韓国は調査対象となった17カ国のうち、8番目に腐敗がひどい国という結果が出た。韓国はシンガポール、日本、オーストラリア、米国などの先進国はもちろん、マレーシアやタイなどアジアの中堅国よりもさらに腐敗がひどいという評価が下されてしまった。
国際透明性機構(TI)が昨年末に発表した腐敗認識指数(CPI)においても、韓国は調査対象となった175カ国中45位だった。経済規模が世界15位、貿易規模が世界8位と誇りに思ってきたことが逆に恥ずかしく感じられる悲惨な結果だ。
贈収賄などの不正腐敗は、市場における公正な競争を阻害し、経済の活力を低下させ、経済成長の大きな足かせとなる。また国際透明性機構による腐敗認識指数と経済成長率、国民所得との間には密接な相関関係があることも、すでにさまざまな研究で明らかになっている。韓国の腐敗認識指数が経済協力開発機構(OECD)の平均レベルにまで改善されるだけで、国民所得は138.5ドル(約1万3800円)、経済成長率は0.65%改善するとの研究結果もある。
不正腐敗の直接的な原因は政府の規制と干渉だ。政治家や官僚が規制を緩和せず、許認可の権限を強く握っていれば、企業などとの不正な関係はそれだけ増える。韓国は世界経済フォーラム(WEF)による規制最小化順位でも119位と完全に最下位圏にある。許認可、昇進、人事、入札に至るまで、まずは人脈から考える社会の風土や国民の意識も問題だ。政治家や官僚の腐敗だけでなく、納品汚職などをはじめとする企業の腐敗や、教育機関、医療機関など韓国社会全般に根付いている寸志や袖の下、餞別(せんべつ)、賄賂などの文化は、1日も早く根こそぎ取り除かねばならない。
不正腐敗から脱却して透明な社会を築き上げるには、それを実行するための拠点がまずは必要になるだろう。それには監督機関や取り締まり官庁など、権力を持つ所がまずは自らの腐敗の問題を完全に解決しなければならない。ところが国民権益委員会が発表した「公共機関清廉度評価」によると、法務部(省に相当)、検察、警察、国税庁、金融監督院、公正取引委員会、監査院など、法律を執行する絶大な権限が与えられた政府機関であるほど、逆に国民の信頼は得られていないという。他人を監視する政府機関が汚れた手を使って社会の問題点を修正しようとしても、国民の不信は一層深まるばかりだ。
腐敗した国という汚名をそそぐには、まずは個人がいくらの収入があり、そしていくら使っているのかを透明にすることが重要だ。国民のための福祉が進んでいるとされるフィンランドでは、国民個々人の年間所得をユーロの1桁台まで詳しく公表している。つまり先進国であるほど腐敗の程度が低い理由は、個人の所得を隠すことが難しい仕組みになっているからだ。韓国では自営業の従事者数が600万人といわれているが、その所得の把握率はいまだに70%を下回っている。このような現状で政府が福祉関連の支出を増やすとすれば、それは真っ暗な深夜に地図を広げて道を探すようなものだ。
韓国社会が不正腐敗を一気に断ち切るのは難しいだろう。腐敗の連鎖を確実に断ち切る第一歩は、国民にとって大小さまざまな不便さがあったとしても、まずは法律や制度をあらためて見直すことだろう。これらの対策を進めるに当たって力になるのは、この国が不正腐敗の泥沼から抜け出すことができない限り、福祉国家を実現し先進国になる夢など実現し得ないことを悟った国民の確かな知恵だ。