2013参院選の現場:工夫こらす東京・国立の「滝乃川学園」 知的障害者の投票支え40年

毎日新聞 2013年07月16日 東京夕刊

 ◇候補者ら訪問、アピール

 参院選の投票日が近づいてきた。国は知的障害者らの代理投票をする際、障害者の意思確認を徹底するよう呼びかけているが、不慣れな作業に戸惑う選挙管理委員会職員もみられる。東京都国立市の知的障害児者施設「滝乃川学園」では、選挙のたびに入・通所者が投票所へ足を運び、福祉現場や市選管の職員がそれを支えている。三位一体の取り組みは、今年で40年目を迎えた。【夫彰子】

 11日午後、学園内の一室で参院選東京選挙区候補者の「お話を聞く会」が開かれた。立候補した20人のうち、本人や代理計8人が出席した。「憲法は国の大事な約束事です」「お父さんの給料を増やします」。候補の写真を掲げたり、名前を何度も唱えたり。各陣営とも5分の持ち時間で「分かりやすい言葉で候補をPRしたい」(無所属候補の代理)と躍起だった。

 利用者と握手して回る女性候補のもとへ、ある男性入所者が待ちきれずに駆け寄ると、会場は笑い声に包まれた。入所者の吉野道彦さん(67)は逆に「自分と同じ男(の候補)がいい」。学園では特定の政党や候補への投票を誘導しないよう気をつけており、意中の候補は十人十色だ。

 学園の資料などによると、利用者の投票参加は1974年に開始。選挙公報や政見放送の活用に加え、候補の違いをより深く理解できるよう81年から「お話を聞く会」が恒例行事になった。慣れない場所や行動が苦手な入所者のために、市選管に本物の投票箱を借りて園内で模擬投票を企画したこともある。100人を超す成人利用者の投票率は、最近は80%超。先月の都議選投票率(都全体で43・50%)の約2倍だ。

 市の投票所では、利用者1人に市職員2人で案内や代理投票を担当。候補名が書ける人は本人投票▽書けないが話せる人は市職員が代筆▽会話も困難なら誰に投票するか2度尋ね、選挙公報で同じ候補を指させば代筆し、異なる候補なら白票にする−−。学園と市が二人三脚で築いてきた意思確認のルールだ。

 今回の参院選は成年後見制度の被後見人に選挙権を認める改正公職選挙法の下で初めて実施される国政選挙。市内には有権者の被後見人が約120人いるが、市選管の風見康裕事務局長は「滝乃川との取り組み実績があるので不安はない」と話し、「障害者福祉に光が当たらない時代から選挙権は国民全員の権利という理念を実践してきたことは行政の財産」と胸を張る。

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