(cache) 鈴木寛のSPEEDI隠し - 報ステの年末原発特集から : 世に倦む日日

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鈴木寛のSPEEDI隠し - 報ステの年末原発特集から

鈴木寛の問題がネットで関心を呼んでいる。福島の原発事故のとき、文科省の副大臣だった鈴木寛が何をしたのか、何をしなかったのか、そのことが、参院選終盤の東京選挙区における最大の論点となり、少なくともネットの中では最も注目を集める争点となっている。事故直後、SPEEDIの情報が活用されず、公表されることなく握り潰され、そのことによって、福島の特に浪江町の人々が大量に高線量被曝させられた問題は、原発事故の中でもきわめて重大な事件としてマスコミ報道でも何度も特集された。その中でも、最も記憶に鮮明なのは、年末（12/28）に放送された報ステの特番で、大きな反響を呼び、ネットに録画が上げられて論議された。今日まで、この報ステの特集を上回る原発事故のジャーナリズムは、ETV特集の「ネットワークでつくる放射能汚染地図」を除いて、テレビの報道作品では他にない。この番組は、大きく二つの謎に迫っていて、一つは、メルトダウンが起きた原因が津波による電源喪失ではなく、地震による配管破断ではないかという問題の検証を試みていた。事故直後より、田中光彦らが提起していた問題である。もう一つは、放射能の拡散予測のために国が莫大な予算を投じて構築、運用していたSPEEDIの情報が、事故時に活用、公表されることなく放置された問題である。その結果、何も知らされなかった浪江町の住民は、放射性物質が大量に飛散する北西の方向に避難、深刻な被曝被害を受ける惨事となった。

報ステの録画映像の中にあるが、文科省は、震災発生（3/11）の2時間後から、すぐにSPEEDIを使った予測作業を始めている。3/16までに保安院45回、文科省38回、安全委1回と、合計84回の予測指示が、システムを運用する原子力安全技術センターに出され、シミュレーション図が作画されていた。SPEEDIは、原発事故の際、もしくはその危険性があるとき、放出源の情報と気象条件や地形データを入力し、最大79時間先まで放射能の拡散を予測するシステムだ。周辺住民の避難と安全のために整備された防災システムで、1979年のスリーマイル島事故を契機として構築された。浪江町では、政府が半径10km圏内からの避難指示を出したところの、すなわち事故翌日の3/12に町民の避難を始めた。浪江町は福島原発の北に位置し、町を走る幹線道路は、南北に伸びる国道6号線と東西に伸びる国道114号線の2本である。住民は114号線を車で西へ逃げ、道路は大渋滞となった。このとき、SPEEDIは、3/12に北西方向への風が吹き、放射性物質が北西に拡散することを予測していた(36:30)。114号線を北西へ避難した8000人の住民の大半は、浪江町の西の山間部である津島地区に留まって4日間（3/12-15）避難生活をする。放射性物質が最も多く噴出したのは、3/15-3/16であり、この予測もSPEEDIは確実に捉えていたが、情報は避難住民には一切届けられなかった。

SPEEDIの存在がマスコミ等で話題になるのは、3/23以降である。それまで、飯舘村など北西方向が特に大量に放射能汚染された事実は表に出なかった。ホットスポットという言葉が人口に膾炙され始めたのも、3/23以降のことで、それまで一般国民は同心円の概念でしか危険範囲を意識していなかった。NHK-ETVの「ネットワークでつくる放射能汚染地図」のメンバーが、赤宇木地区の避難所を訪れて取材したのは3/28、避難所の屋内で毎時20マイクロシーベルト、屋外の敷地で毎時80マイクロシーベルトの線量が計測されていた。「飯舘村の3倍」と説明を受け、避難所で寝起きしている住民が「エッ」と絶句する場面が番組の中に登場する。この放送も反響を呼んだ。3月下旬、赤宇木をはじめとする津島地区で、人々が何も知らされず不安な日々を送る中、文科省はこの近辺に防護服姿の作業員を派遣、住民には何も伝えないまま土壌や空中の線量を調査計測していた。この年末の報ステの特集番組の時点では、鈴木寛ら政務三役の不作為は明らかにされていない。口を噤んで真相を言わない関係者（渡辺格・斑目春樹・福山哲郎・枝野幸男）の「証言」だけを流し、「手洗回しして責任を押しつけ合っている」と批判しているだけだ。それが、2012年4月に福島瑞穂の質問主意書と答弁書が出て、3/15に政務三役が入った会議があり、そこでSPEEDIの試算結果についても担当者から報告があった事実が明らかになった。

ネット上に、2012年3月の東京新聞の記事の情報がある。それによると、3/15の午後8時頃、「大臣室で高木義明文科省（当時）、副大臣、政務官の政務三役らの協議が行われる。テーマの一つはSPEEDIだった。政務三役5人と事務方ら計十数人がテーブルを囲む。担当者がSPEEDIと、より広域に拡散状況を試算できるWSPEEDIの試算結果を示し、状況を説明した。（略）三役は『一般にはとても公表できない」と判断』」。さらに3/16の午前10時頃、この日の政務三役の会議で、鈴木寛は次のように提案する。「当省は（放射線による）影響の評価は行わないことになったのだから、評価がないSPEEDI等の公表は意味がないので、今後は安全委員会において運用・公表する」。こうして、鈴木寛はSPEEDIの情報公表の責任と権限を一方的に安全委に押しつける決定を下し、それを安全委に電話で通告している。この件について、事故から1年経った後、鈴木寛は、「文科省は（略）放出源に関する情報を持っていなかったので、適切な公表・説明をし得る立場でなかった」と釈明をし、SPEEDI情報を公開しなかった不作為を正当化している。「放出源」というのは、核種やその量のことだろうか。しかし、報ステの番組映像（47:30）にあるとおり、3/15の放射性物質の拡散状況については、3か月後にシミュレーションした図と、そのときSPEEDIが予測した図とは一致する。つまり、SPEEDIは正確に拡散を予測していたのであり、鈴木寛の言う「意味のない予測情報」だったという主張は根拠が崩れる。

この鈴木寛と文科省・政務三役の不作為について、鈴木寛自身がどう後から言っているかについて、一つの情報がある。鈴木寛が、今度の参院選に出馬するに当たって、その宣伝文書として書いた「テレビが政治をダメにした」という本の記述の一部がJPGでネットに上がっていて、ブラウザのスクリーンを拡大すると文字が読める。ちなみに、この本は津田大介が販促キャンペーンをやっていて、ネット上に何本も関連記事がある。本の記述によると、SPEEDIの情報は、福島県災害対策本部もリアルタイムに共有していたから、県災害対策本部が市町村対策本部に情報を届けているだろうと思っていたと書いている。事故から1年後の昨年（2012年）の新聞記者からの取材には、安全委にSPEEDIの情報公開の責任を移したのだと言い、自らの責任逃れを言った鈴木寛は、事故から2年後の今年（2013年）になると、今度は福島県に責任を押しつけていた。さらに、「仮定値を用いたSPEEDIの予測計算のみが可能になる事態を想定しているマニュアルもなかった」などと言い、SPEEDIの本来的機能不全を言っているのかどうか、詭弁を弄して逃げている。しかし、報ステの2011年末の特番の映像（49:00）では、2010年10月に、浜岡原発の事故を想定した防災訓練をやり、そこでSPEEDIで出力した予測図を活用して菅直人が避難指示を出していた。3.11の事故から、わずか5か月前の官邸と保安院での訓練である。2011年3月のときも、政府内部でSPEEDIの予測図が参照され閲覧されていたことは間違いない。

以上、簡単だが、報ステの2011年末の特集番組を紹介し、SPEEDI隠しがどういう問題であったか、そこに鈴木寛がどう関わったかを振り返った。鈴木寛の関与と悪質な不作為は歴然で、現在の釈明は嘘と言い逃れと責任転嫁だけだ。本来なら、不作為による業務上過失致死で刑事被告人となる身である。この男を当選させてはいけない。

by thessalonike5 | 2013-07-16 23:30 | Trackback | Comments(1)

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Commented by ろうのう at 2013-07-16 20:53 x

平田オリザが見せてた兆候をあえて上げると
岩上氏、孫崎氏みたいなニュー鳩山イストじゃなくて
オールド鳩山イストだったことかなあと思いました。

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