ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース (宇宙刑事ブルーノア)
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第3話『戦車、探します!』
『ガールズ&パンツァー+ボーイズ&ゾルダース』
第3話『戦車、探します!』
大洗男子校・校庭………
「では、諸君。記念すべき歩兵道最初の授業だが………諸君等には女子学園の戦車道受講者の生徒と協力し、戦車を探してもらいたい」
集まった歩兵道受講希望者達に向かって、迫信がそう言う。
「? 戦車を?」
「そりゃ如何言う事っすか? 生徒会長?」
迫信の言葉の意味が分からず、了平と地市がそう問う。
「大洗女子学園で戦車道が廃止されたのは今から20数年前だ。当時使っていた戦車は所在が分からなくなっており、資料にも記述されていない」
すると、迫信に代わる様に、十河がそう説明する。
「戦車道を復活させるのに、肝心の戦車がなくちゃ話にならないからな」
俊も頭の後ろで手を組みながらそう言う。
「手がかりは?」
「残念ながらまるでありません」
楓の問いに、清十郎が申し訳なさそうにそう返す。
「オイオイ、マジかよ………」
「この広い学園艦を手掛かり無しで探すんかいな………」
露骨に肩を落としながら海音と豹詑がそう呟く。
「明日には自衛隊から歩兵道の教官が来られる。戦車道側も明後日には教官が到着する。それまでには何としても機甲部隊を再編しなければならない。既に女子学園の生徒達は捜索に乗り出している。彼女達と協力し、戦車を探して欲しい」
「では、捜索開始!!」
迫信と十河がそう言うと、生徒達は戦車の捜索に繰り出すのだった。
学園艦の街中………
「探すつったってよぉ………手がかりゼロなんだろぉ?」
「んなんで見つけろってのが無理だっつーの」
地市と了平が早くも愚痴を零し始める。
「如何します? 舩坂さん」
楓も困った顔をしながら弘樹にそう尋ねる。
「取り敢えず、演習場として使われていた場所を中心に探そう。見つけられないにしても、何か手がかりは掴めるかも知れん」
学園艦の地図を広げていた弘樹は、地図のかつて戦車道の演習場として使われていた場所を見た後、地市達の方を見ながらそう言う。
「ったく………いきなりこんな前途多難で大丈夫かよぉ………」
「ちょっと! 止めてよぉっ!!」
と、了平が再び愚痴る様に呟いた瞬間………
女性のものと思われる声が響いて来た。
「ん?………」
「何でしょう?」
弘樹達がその聞こえて来た方向を見やると、そこには………
「だから、アンタ達と遊ぶ気なんて無いって言ってるじゃん!!」
「良いじゃんかよ~、ちょっとぐらい」
「そうそう。俺達と一緒に来た方が楽しいぜぇ」
「ですから! 先程からお断りすると申し上げているではありませんか!!」
3人のチンピラ風の男達が、大洗女子学園の制服を着た4人の女子達に絡んでいた。
良く見ると、女子学園の生徒の方は、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女と長いストレートの黒髪の少女が、怯えている様子の癖毛の少女と弘樹が助けた少女………『西住 みほ』を庇っている。
「彼女達は、大洗女学園の………」
「フラグキターッ! コレ絶対フラグだって! ココでカッコ良く助けて、それでそれが馴れ初めになるってフラグっしょ!!」
楓がそう呟いた瞬間、了平が何処かのロケット頭のライダーの様に叫びを挙げる。
「よ~し!!………行け! 地市!!」
「って、俺かよ!?」
「だって怖いし………良いとこだけ頂くから安心して散って来い!!」
「ふざけんな、コラァっ!!」
「ちょっと! 2人供! 喧嘩している場合じゃ………」
コントの様な遣り取りから喧嘩に発展しそうになる地市と了平を、楓が止めようとしたところ………
「イデデデデデデデデッ!?」
「「「!?」」」
チンピラのモノと思われる悲鳴が聞こえて来て、再び地市達がそちらの方向を見やると………
「………彼女達は嫌だと言っているぞ」
弘樹が、チンピラの中の1人の腕を掴んで捻りながらそう言っていた。
「な、何だ、テメェは!?」
チンピラ達は、突然現れた大正時代の書生の様な弘樹の姿に驚く。
「えっ!? 何々っ!? 何なのっ!?」
「まあ、随分と古風な方ですね………」
「あの校章は………県立大洗国際男子高校の?」
「! あの人!!」
女学園の生徒達も、弘樹の登場に戸惑う。
「ああ! アイツ、1人で抜け駆けしやがって!!」
「お前が馬鹿なこと言ってたからコッチが出遅れたんだろうが!」
「しかし、躊躇無く助けに入るとは………舩坂さんらしいですね」
まだ言い争う了平と地市を尻目に、楓は何の躊躇いも無く助けに入った弘樹を見て笑みを浮かべる。
「クッソ! 如何する? 俺達も加勢するか?」
「バーカ、今から行ったところで遅いっつーの」
「ココは舩坂さんに任せましょう」
そして地市達は、そのまま観戦の態勢に入るのだった。
「イデデデデデデデッ! お、折れる~~~~っ!!」
弘樹に腕を捻られているチンピラが、情けない悲鳴を挙げる。
「…………」
そこで弘樹は、突き飛ばす様に腕を捻っていたチンピラを解放する。
「テメェッ!」
「舐めた真似しやがって!!」
チンピラ達は、弘樹に標的を変えて睨み付けて来る。
「無駄な争いはしたくない………去れ」
しかし、弘樹はそんな視線を受けても一切物怖じせず、平然とした顔でチンピラ達にそう言い放つ。
「テメェが消えやがれぇっ!!」
当然チンピラ達が引き下がるワケが無く、1人が弘樹に殴り掛かる!!
「! 危ない!!」
「…………」
みほが叫ぶが、弘樹は身体を半身にして最小限の動きでチンピラの拳をかわす。
そのまま、チンピラの伸び切った腕を掴んだかと思うと、そのまま振り回す様にして投げ飛ばす!
「ぐはっ!?」
顔からブロック塀に突っ込んだチンピラは、そのまま顔を摩り下ろしながら地面に倒れる。
「野郎っ!!」
「…………」
別のチンピラが弘樹を蹴り上げようとしたが、弘樹はまたも半身になって最小限の動きでかわす。
そして、チンピラの上げた足を取ると、軸足に足払いを掛け、そのまま取った足を持ち上げる。
「がふっ!?」
軸足を払われた上に蹴り上げた足を更に持ち上げられ、チンピラは背中から地面に倒れ、更に後頭部を強打する。
「!?~~~~~~~っ!?」
あまりの痛さに声無き悲鳴を挙げて、後頭部を押さえながら地面の上を転がるチンピラ。
「す、凄い………」
「アッと言う間に2人を………」
その光景に、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女と癖毛の少女が感嘆を漏らす。
「コ、コイツゥッ!!」
と、その時!!
最後の1人となっていた、弘樹に腕を捻られていたチンピラが、ポケットからバタフライナイフを取り出す!!
「!? 刃物!!」
「ちょっと! 卑怯じゃない!!」
長いストレートの黒髪の少女が驚きの声を挙げ、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女が思わずそう叫ぶ。
「ウルセェッ! 卑怯もらっきょうもあるか! へへへ………如何するだ、兄ちゃんよぉ? 土下座して謝るんなら許してやって良いぜ」
武器を持った事で優位を確信したのか、チンピラは弘樹に向かってそう言う。
「…………」
だが弘樹は、「何を言っているんだ、コイツは?」と言う様な視線をチンピラに向ける。
「テメェッ! 分かってんのか!? コレが目に入………」
と、チンピラがバタフライナイフを見せつける様にした瞬間………
鋭い風切り音が鳴ったかと思うと、銀色の閃光がチンピラの持っていたバタフライナイフに命中。
バタフライナイフは弾かれ、余程勢いが付いたのか、ブロック塀に突き刺さった!!
「………へっ?」
何が起こったのか分からず、呆然となるチンピラ。
「…………」
そのチンピラの目の前で、弘樹は何時の間にか右腕を横へ水平に伸ばしたポーズを取っていた。
そして、その手にはギラリと鈍く輝く刃………
日本刀が握られている。
「………刀?」
「本物か試してみるか?」
本物かと疑うチンピラの喉元に刃を突き付け、弘樹はそう言う。
「!? ヒイイッ!?」
途端にチンピラは狼狽え、踵を返して逃げ出そうとする。
「待て!!」
「!?」
しかし、弘樹に呼び止められ、絶望した顔で振り返る。
「………そこに転がっている2人も連れて帰れ」
だが弘樹は、倒れている2人のチンピラを見ながらそう言い放つ。
「ス、スンマセンでしたーっ!!」
チンピラは大慌ててで倒れていた2人を引っ掴むと、引き摺りながら逃げ去って行った。
「…………」
それを見た弘樹は、刀を腰に差していた鞘へと戻すと、外套(マント)で隠す。
「………無事かい? 君達?」
そしてみほ達の方を振り返り、そう尋ねた。
「「「…………」」」
しかし、みほ以外の3人の少女は、突如現れてチンピラを瞬く間に倒し、日本刀を帯刀している大正時代からでもタイムスリップして来たと言われても信じられそうな弘樹の姿に声が出ずに居る。
と………
「あ、あの!!」
そこでみほが、3人の前に出て弘樹と対峙する。
「!? ちょっと! みほ!!」
「西住さん!!」
「西住殿!!」
みほの身を案じる様に、3人の少女が声を挙げるが………
「君を助けたのは………コレで2度目だな」
弘樹は朗らかな笑みを浮かべてそう言う。
「「「…………」」」
その安心感さえ抱きそうになる笑みに、3人の少女は毒気を抜かれた様な表情となる。
「流石だな、弘樹! 3人ぐらいじゃ物の数じゃねえってか!」
「クッソーッ! 何でお前ばっかフラグ立ててんだよ!」
「日頃の行いじゃないですか?」
とそこで、成り行きを見守っていた地市、了平、楓の3人も、みほ達の前に姿を現す。
「貴方方は?」
「申し遅れた。小官達は、県立大洗国際男子高校の歩兵道受講者だ。生徒会長の命により、大洗女学園戦車道受講者の戦車捜索に協力しに馳せ参じた」
長いストレートの黒髪の髪の少女が尋ねると、弘樹はヤマト式敬礼をしながらそう説明する。
「やっぱり、男子校の方だったんですね」
「みほ、この人のこと知ってるの?」
癖毛の少女がそう言うと、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女が、みほに尋ねる。
「うん。ホラ、前に轢かれそうになったを助けてもらったって人、この人だよ」
みほは、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女にそう説明する。
「ああ~! あの話で言ってた、みほの王子様って、この人だったんだ!!」
すると、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女は納得が行った様な表情となり、両手をパンッと鳴らして合わせる。
「お、王子様って!? そ、そんなんじゃないよ~!!」
それを聞いてみほは、顔を赤くしながら両手を振って否定する。
「まあ、そうでしたか。ありがとうございます。みほさんを救っていただいて………私は『五十鈴 華』です」
とそこで、長いストレートの黒髪の少女………『五十鈴 華』が、弘樹に礼を言いながら自己紹介をする。
「あ、アタシは『武部 沙織』」
続いて、先端にウェーブが掛かったロングの茶髪の少女………『武部 沙織』が右手を挙げながら自己紹介する。
「私は『秋山 優花里』です。よろしくお願い致します!」
更に続いて、癖毛の少女………『秋山 優花里』が敬礼しながらそう自己紹介する。
「西住 みほです。この間は本当にありがとうございました」
そして最後に、『西住 みほ』が弘樹に改めてお礼を言いながら自己紹介をした。
「これは如何も御丁寧に。僕は大空 楓です」
「俺、綿貫 了平! よろしく!!」
それに対し、丁寧な様子で自己紹介する楓と、明らかに鼻の下が伸びた様子で張り切って自己紹介をする了平。
「俺は石上 地市だ。で、コイツが………」
「舩坂 弘樹だ。今後は長い付き合いになるだろう。よろしく頼む」
地市は自己紹介をしながら弘樹の肩に手を置くと、最後の弘樹がそう自己紹介と挨拶をする。
「えっ!? 舩坂って………」
「!? 舩坂あぁっ!?」
と、弘樹の名を聞いたみほが何かに気づいた様子を見せ、優花里が大層驚いた様子を見せる。
「キャッ!? あ、秋山さん!? 如何したの!?」
そんな優花里の様子に、沙織が驚く。
「あ、あの! ひょっとして、貴方は!! 『舩坂 弘』軍曹殿と関係があったりするのですか!?」
しかし、優花里は興奮した様子で、弘樹にそう尋ねる。
「舩坂 弘は、小官の祖先だ」
それに対し、弘樹は冷静にそう答えを返す。
「ええ~っ!? そ、そうなんですかぁ!? ああ~、あの『生きている英霊』と呼ばれたお方の子孫にお会い出来るなんて………感激です!!」
本当に感激しているらしく、優花里は目を潤ませながらそう言う。
「舩坂………弘?」
「って、誰?」
しかし、華と沙織は、優花里の言う『舩坂 弘』と言う人物の事が分からず、首を傾げる。
「! 知らないんですか!? あの大日本帝国陸軍の伝説の兵士を!!」
すると優花里は、信じられないと言う様な表情で華と沙織を見やる。
「え、ええ………」
「あ、秋山さん?」
「良いですか! 舩坂 弘軍曹殿はですね!!」
2人の戸惑いを他所に、優花里は弘樹の祖先………かつて、『生きている英霊』と呼ばれた伝説の日本軍兵士『舩坂 弘』軍曹の事を熱く語り始める。
『舩坂 弘』………
日本陸軍の兵士であり、特別銃剣術徽章、特別射撃徽章、剣道教士六段、居合道錬士、銃剣道錬士など、武道・射撃の技能を相当に習熟していた。
そして彼を有名にしたのが、太平洋戦争中の激戦の1つであり、『パラオ-マリアナ戦役』最後の戦いである『アンガウルの戦い』である。
この戦いに於いて、舩坂 弘は超人的な活躍をする。
当時、アンガウル島に上陸したアメリカ軍の兵士の数は実に2万1000人。
対する島の守備隊である日本軍は、1400人程。
絶望的な戦力差の中、日本軍は水際作戦でコレを迎え撃ち、その中で舩坂 弘は擲弾筒および臼砲にて米兵を200人以上倒した。
この際、擲弾筒の砲身が高熱の余り赤化するまで撃ち続けたと言う。
その後、日本軍は退却を続け、最終的に島の北西の洞窟に籠城し、ゲリラ戦に突入。
舩坂 弘も果敢に戦い続けたが、ゲリラ戦突入3日目にアメリカ軍の砲撃により、左大腿部に裂傷を負う。
負傷した場所が敵陣の中央に位置していた為、米軍の銃火の中に数時間放置されてしまう。
漸く頼みの軍医がやって来るも、傷口を一目見るなり、自決用の手榴弾を手渡して去ってしまったらしい。
しかし、瀕死の重傷を負いながらも、舩坂 弘は足を包帯代わりの日章旗で縛る事で止血し、夜通し這う事で洞窟陣地に帰り着く事に成功。
そして翌日には、左足を引き摺りながらも歩けるまでに回復している。
その後も瀕死クラスの傷を何度も負うが、動く事すらままならないと思われる様な傷でも、不思議と翌日には回復しているのが常であった。
これについて舩坂 弘本人は、『生まれつき傷が治り易い体質であった事に助けられた様だ』と、その事由を述べている。
舩坂 弘は絶望的な戦況にあってなお奮戦。
拳銃の3連射で3人の米兵を倒したり、米兵から鹵獲した短機関銃で3人を一度に倒し、左足と両腕を負傷した状態で銃剣で1人倒し、短機関銃を手にしていたもう1人にその銃剣投げて顎部に突き刺して倒すなど、鬼神の如く奮戦を続けていた。
その姿を見た部隊員たちから、『不死身の分隊長』、『鬼の分隊長』と形容する声が聞かれる程であった。
しかし、食料も水も無い戦場での戦いで日本兵は徐々に追い詰められて行き、洞窟壕の中は自決の手榴弾を求める重傷者の呻き声で、生地獄の様相を醸し出していた。
舩坂 弘も腹部盲貫銃創の重傷を負い、這うことしか出来なくなっていた。
その傷口から蛆虫が涌くのを見ると、蛆に食われて死ぬくらいなら最早これまでと、ついに自決を決意し、遺書を認めると、手榴弾のピンを抜いた。
だが、思いに反して手榴弾は不発であった。
舩坂 弘は暫し茫然とし、自決未遂という現実に、なぜ死ねないのか、まだ死なせて貰えないのかと、深い絶望感を味わったという。
なお、その後………
蛆虫は拳銃弾の火薬を患部に流し込む事で撃退したが、この時ばかりはあまりの激痛に意識を失い、半日ほど死線を彷徨している。
戦友も次々と倒れ、部隊も壊滅するに及び、舩坂 弘は死ぬ前にせめて敵将に一矢報いんとアメリカ軍司令部への単身斬り込み、肉弾自爆を決意する。
手榴弾6発を身体に括りつけ、拳銃1丁を持って数夜這い続けることにより、前哨陣地を突破。
4日目にはアメリカ軍の指揮所テント群まで20メートルの地点にまで潜入していた。
この時、舩坂 弘の負傷は戦闘初日から数えて大小24箇所に及んでいる。
このうち重傷は左大腿部裂傷、左上膊部貫通銃創2箇所、頭部打撲傷、左腹部盲貫銃創の5箇所であり、更に右肩捻挫、右足首脱臼を負っている。
また、長い間匍匐していた為、肘や足は服が擦り切れてボロボロになっており、更に連日の戦闘による火傷と全身20箇所に食い込んだ砲弾の破片によって、宛ら幽鬼か亡霊の様であったと言う。
指揮所テントに指揮官が集まったのを見計らい、舩坂 弘は右手に手榴弾の安全栓を抜いて握り締め、左手に拳銃を持ち、全力を絞り出し、立ち上がった。
突然、茂みから姿を現した異様な風体の日本兵に、発見したアメリカ兵も暫し呆然として声も出なかったと言われている。
アメリカ軍の動揺を尻目に舩坂 弘は司令部目掛け渾身の力で突進するも、手榴弾の信管を叩こうとした瞬間、頸部を撃たれて昏倒し、戦死と判断される。
駆けつけたアメリカ軍軍医は、無駄だと思いつつも舩坂 弘を野戦病院に運んだ。
この時、軍医は手榴弾と拳銃を握り締めたままの指を1本1本解きほぐしながら、アメリカ兵の観衆に向かって、『これがハラキリだ。日本のサムライだけができる勇敢な死に方だ』と語っている。
だが………
何と、舩坂 弘は3日後に米軍野戦病院で蘇生したのである。
当初舩坂 弘は情をかけられたと勘違いし、周囲の医療器具を叩き壊し、急いで駆けつけた憲兵の持つ銃の銃口に自分の身体を押し付け『撃て! 殺せ! 早く殺すんだ!』と暴れ回ったそうである。
この奇妙な日本兵の話はアンガウルの米兵の間で瞬く間に話題となり、伝説と化した。
舩坂 弘の無謀な計画に恐れをなしながらも、大半はその勇気を称え、『勇敢なる兵士』の名を贈ったと言う。
そんな経緯もあってか、日本の公式な戦史である『戦史叢書』には、個人としては唯一、彼だけが個人名として登場している。
「というくらい凄い人なんですよ!!」
「何その最強伝説!?」
「1度死んで生き返る………凄まじい執念ですね」
優花里が語り終えると、沙織は仰天し、華も信じられないと言う様な表情をしていた。
「あ~、秋山くんだったかい?」
とそこで、弘樹が少し困った様な顔で優花里に声を掛ける。
「!? ハッ!? す、すみません! 遂に夢中になってしまって!!」
そんな弘樹の姿を見た優花里は、慌てて弘樹に向かって謝罪しながら頭を下げる。
「いやいや、気にしないでくれ。しかし、そこまで祖先の事を知っていてくれてるとは………嬉しいと言うと、何と言うか………」
「舩坂 弘さんは、戦後には日本でも歩兵道が始まると、その講師を務める傍ら、大会にも参加して、何度も功績を挙げてるの。日本に歩兵道が定着したのは舩坂 弘さんの存在が在ったからって言う人も居るくらいなんだ」
弘樹が微笑を浮かべると、みほがそう言って来た。
「アレ、西住さんも知ってるの?」
「うん。実は………私のご先祖様、つまり西住流の開祖に当たる人が乗っていた戦車の随伴歩兵を務めてくれていたのが舩坂 弘さんだって、昔聞かされた事があるの
「ええっ!? ホントですか!?」
コレは優花里も知らなかったのか、驚くの声を挙げる。
「うん。ご先祖様が指揮した戦車隊と、舩坂さんは当時の戦車道、歩兵道の大会で大活躍して、世界大会の日本代表になった程なんだ」
「へえ~~、凄~い」
「そう言えば、我が家には戦車道の家元との交流があったと聞いていたが………それが西住流だったとはなぁ」
みほの言葉に、弘樹も思い出した様にそう言う。
「それにしても、ご先祖様同士が知り合いで、2回も危ないところを助けてくれたって、何だか運命めいてるよね。ひょっとして舩坂くんって、西住さんの運命の恋人さんだったりして」
「ふええっ!? う、運命の恋人!?」
何事も恋愛事に例えたがる沙織がそんな事を言うと、みほは一瞬で顔を真っ赤にする。
「ハハハ、冗談は止してくれ。小官はそんな柄じゃない」
しかし、弘樹は笑ってそれを流すのだった。
「クソッ! 如何してアイツばっかりモテるんだ!!」
「それはやっぱり、日頃の行いじゃないか?」
「的を射てますね………」
そんな弘樹の様子を見て、了平、地市、楓がそう言い合う。
「ところで、戦車探しの途中だったんだろう? 何か見つかったかい?」
とそこで、弘樹は戦車を捜索中である事を思い出し、みほ達に尋ねる。
「あ、いえ、まだ何も………学校の倉庫には、Ⅳ号戦車が1両有ったんですけど」
「取り敢えず、ウチの学校の駐車場には無かったよ」
「そりゃそうだろ」
みほが返事を返すと、沙織がそう言い、地市がツッコミを入れる。
「女子学園の駐車場には無しか………なら、この山林に行ってみよう。近くが戦車道の演習場だったから、何かしら手がかりが有るかも知れない」
しかし、そんな沙織の言葉を真面目に受け取り、地図の大洗女学園の駐車場の場所に×印を刻むと、地図をみほ達に見せながらそう言う弘樹。
「あ、ハイ。分かりました」
「おお~! 流石歩兵道の人! 頼りになる~」
「この場合、歩兵道は関係無いのでは………」
沙織の言葉に華がツッコミを入れながら、弘樹達とみほ達は合流して協同での戦車捜索に乗り出すのだった。
*
一方、その頃………
火蝋を初めとしたメンバーは………
「…………」
纏め役である火蝋は、公園のベンチの上に寝転んで居る。
「オイ、火蝋。ええんか?」
「戦車を探せって言われてるんだぞ?」
そんな火蝋に、豹詑と海音がそう呼び掛けるが………
「………知るか」
それだけ一言返すと、ゴロリと寝返りを打って2人に背を向けてしまう。
「火蝋さん………」
『まあ、彼の気持ちも分かるがな………』
飛彗はそんな火蝋に悲しそうな視線を向け、彼が持つパソコンからはアインシュタインのモノである合成音声が響いて来る。
*
再び、みほ達と合流した弘樹達は………
演習場だった場所の近くに在る山林………
大洗女学園の裏手へと来ていた。
「おほほ~っ! 女子学園があんな近くに見える!!」
木々の合間から見えている、大洗女学園の校舎を見て、鼻息の荒い了平がそう言う。
「オイ! 気持ちは分かるが、今は戦車を探せ!」
「この辺りに有ると良いんですけど………」
そんな了平に地市がツッコミを入れ、楓が山林の中を見渡しながら呟く。
「この辺りには無いみた~い」
「ですね………」
「うむ………では、次はコッチを探そう」
沙織と華からそう報告を貰った弘樹は、捜索した地点を丸で囲み、その囲んだ範囲の隣を指差す。
「了解しましたっ!!」
優花里が元気良く敬礼と共に返事をすると、先頭を切る様に歩き出す。
それを見て、他の面子も後に続いて行く。
「ありがとうございます。お蔭で助かってます」
捜索の手が増えた事で1人1人の負担が減り、みほは弘樹にお礼を言う。
「お礼を言うのは、戦車を見つけた後で良いさ」
弘樹はそう返答する。
「それにしても不思議な縁だな………かつて祖父が現役の頃、大会で活躍していた時に戦車隊を率いていたのが西住くんの祖母で、その孫である小官達が、またこうして歩兵道と戦車道で一緒になるとはなぁ」
「あ………は、はい………」
と、弘樹がそう言うと、みほの表情に陰が差す………
「む………」
それを見た弘樹は、やはり彼女が戦車道に対して何らかの心の傷を抱えている事を悟る。
「………戦車に………乗りたくないのかい?」
一瞬聞くべきか如何か迷った弘樹だったが、やがて耐えかねた様に、みほにそう問う。
「えっ!?」
「去年の黒森峰での決勝戦の事は知っている………それでもし君が何らかの心の傷は抱えているのなら、無理に戦車に乗る必要は無いのではないか?」
驚くみほに、弘樹はそう言う。
(イカンな………もっと気の利いた言い方と言うモノは無いのか………)
しかし、内心ではストレートな問い質しをしてしまった自分の不器用さを自己嫌悪していた。
「………ありがとうございます。気を使ってくれて。でも、大丈夫です」
だが、みほは笑みを浮かべてお礼を言う。
「ホントは私………戦車道が無いから、今の学校に転校して来たんです。でも、戦車道が復活する事になって、生徒会が経験者の私に履修しろって………」
「強制されたのかい?(生徒会としても、形振り構っていられなかったのか)」
「最初はそうでしたけど………でも、武部さんと五十鈴さんが私の事を庇ってくれて………2人共、本当は戦車道がやりたいって言ってたのに、履修まで私に合わせてくれて………」
「そうか………良い友達を持ったな」
「うん………私がこの学園に来て、初めての出来た友達なんです………だから………2人の為にも………私………もう1度だけ戦車道をやってみようって………」
「…………」
それを聞いた弘樹が、ふと足を止める。
「? 如何しました?」
それに気づいたみほも立ち止まり、弘樹の方を振り返る。
「いや、少し感動してな………君は凄いな。友達の為にやりたくなかった戦車道をやると言えるなんて」
「そ、そんな………別にそんな凄い事じゃ………」
「いや、大した事さ。君が今戦車道へどんな思いを持っているかは小官には分からないが………友達の為にそれを乗り越えようとしていう君の強さは称賛に値する」
「あ、あうう………」
手放しで褒めて来る弘樹に、みほは思わず照れて縮こまる。
「………良し。決心した」
と、次の瞬間には真面目そうな表情を、更に真面目そうにして、みほの方を向きながら姿勢を正す。
「? えっ? あの………」
「………小官、舩坂 弘樹は、この全身全霊を持って来て西住 みほ殿を助け、その力となる事を此処に誓う」
戸惑うみほに向かって、弘樹はヤマト式敬礼をしながらそう宣言した。
「えっ?………!? えええ~~~~っ!?」
「!? みほ!?」
「西住殿!?」
「如何したんですか!?」
みほは思わず大声を挙げてしまうと、先へ進んでいた沙織、優花里、華が驚いて振り返る。
「何だ何だ?」
「オイ、弘樹。お前、何かしたんじゃないだろうなぁ? 俺を差し置いて~!」
「貴方と一緒にしない方が良いですよ」
地市、了平、楓は、弘樹の元へ歩き寄りながらそう言う。
「そんな積りじゃなかったのだが………迷惑だったかな?」
すると弘樹は、申し訳無さそうにみほにそう問う。
「う、ううん! そんな事無ですよ! ちょ、ちょっとビックリしただけです!」
みほは思わず、早口でまくし立てる様にそう返す。
「そうか………ならば良かった」
それを聞いて、弘樹は安堵した様な表情となる。
「さ、さあ! 行こう、皆! 早く戦車を探さないと!!」
と、みほが若干赤くなった顔でそう言いながら、集まっていた一同の先頭を切る様に進み出した。
「あ! みほ!!」
「待って下さい、みほさん!」
「西住殿!」
沙織、華、優花里が慌ててその後を追う。
「あ、オイ!」
「ちょっ! 待ってよ~っ!!」
「置いてかないで下さい!」
地市、了平、楓も駆け出す。
「…………」
そして、最後に、その様子を少し眺めていた弘樹が、やがてスウッと無言で歩き出したのだった。
由緒正しき戦車道の家柄に生まれた少女、西住 みほ………
かつて太平洋戦争にて、伝説的な活躍をした日本兵の子孫、舩坂 弘樹………
この2人の出会いが、後に伝説となる大洗学園艦の活躍の始まりになろうとは………
この時、誰も予想だにしていなかった。
つづく
オマケ
『もしⅣ号が、『あのアニメ』みたいになっていて発見されたら………』
みほ達と合流した弘樹達は、20年前の戦車道廃止に伴い、放棄された戦車を探し続ける。
しかし、碌な手がかりも無いままの捜索は困難を極め………
とうとう日が傾き、辺りの景色は夕焼けで真っ赤に染まっていた。
「もう~! 全然見つからないよ~っ!!」
長い捜索に飽き飽きしたかの様に、沙織が愚痴を挙げる。
「もうヘトヘトだぜぇ………」
了平も疲れ切った様に座り込んでそう言う。
「了平、弱音を吐くなよ」
そんな了平に地市がそう言うが、そんな彼も疲れている様子が表情に表れている。
「もうすぐ日が暮れますね………」
「夜になったら流石に見つけられませんよ」
華と楓が、既に大分傾いている夕陽を見てそう呟く。
「西住殿。如何しましょう?」
「う~ん………」
優花里の言葉に、みほは今日はもうコレで捜索を打ち切るべきかと考え込む。
「まだ完全に日は暮れていない。もう少しだけ捜索してみよう」
しかしそんな中、1人だけ疲れた様子を微塵も見せていない弘樹が、地図を手に皆にそう呼びかけ、先頭を進み始める。
「元気だなぁ~、アイツは………」
「流石は舩坂軍曹のお孫さんです!」
バイタリティ溢れる弘樹の姿に了平は溜息混じりに呟き、優花里が尊敬の眼差しを送る。
そして、一同はもう一頑張りと捜索を再開したが………
程なくして、先頭を行っていた弘樹が足を止めた。
「? 弘樹?」
「如何したの?」
地市達とみほ達が追い付き、立ち止まった弘樹に向かってそう尋ねる。
「…………」
しかし、弘樹はそれには答えず、目の前の風景をジッと見つめている。
今、彼の目の前には、赤茶けて干からびた様な不毛の大地が広がっている。
先程まで森林地帯であったのが嘘の様に、ある場所を境に風景が一変したのだ。
「此処は?………」
「荒野戦用の演習場ですね」
「何だか、SFの世界みたい………」
楓、優花里、そして沙織がその荒野を見て、そんな事を呟く。
「…………」
と、弘樹は無言のままその演習場に足を踏み入れ、目の前の小高い丘を登る。
「………!?」
そして、頂上にまで達したかと思うと、何かを発見したかの様に足を止めた。
「舩坂くん? 如何したの?」
みほがそう言いながら弘樹の方に駆け寄る。
「!? ああっ!?」
と、弘樹と同じ場所まで来たみほが、弘樹の視線の先を見て驚きの声を挙げる。
「西住さん!?」
「如何したの、みほ!?」
「西住殿!?」
「「「!?」」」
それを聞いた華達と地市達も、すぐに丘を駆け上がる。
「!? アレはっ!?」
「「「「「!?」」」」」
そして、今度は地市が驚きの声を挙げると、一同は一斉に驚きを露にする。
何故なら一同が見つめるそこには………
夕陽に照らされた赤茶けた大地に………
まるで亡骸であるかの様に斜めに擱座し、車体が殆ど大地に埋まって、装甲が赤錆びている戦車………
『Ⅳ号戦車D型』の姿が在ったのだ!!
「アレは………戦車なのか?」
「ボロボロじゃない」
「まるっきりスクラップだな………」
地市、沙織、了平は、その赤錆びたⅣ号を見て、そんな感想を漏らす。
「わび・さびでよろしいのでは?」
「いや、アレは鉄錆ですよ」
華がフォローする様にそう言うが、流石に楓は無理が有ると言う様にツッコミを入れる。
(………この戦車が大洗女子学園の希望となるのか………それとも………)
そして弘樹は、赤錆びたⅣ号を見ながらそう思いやる。
「…………」
とそこで、みほがその赤錆びたⅣ号へと歩み寄り、その装甲に手を触れた。
「………装甲も転輪も大丈夫そう………コレで行けるかも」
そしてそう呟く。
誰もが赤錆びたⅣ号の姿に落胆する中、彼女だけはその可能性を感じ取っている。
そうだ、正しくその通りであった!
夕陽を浴びて、死んだ様に沈黙しているⅣ号………
しかしⅣ号には、大洗女子学園の明日への希望が込められているのだ。
果たして、Ⅳ号が恐るべき力を発揮するのは何時か?
Ⅳ号よ! 20年の眠りから覚めて甦れ!!
大洗女子学園廃校まで365日………
あと、365日しかないのだ!!
………正直、スミマセンでした!
と言っても、まだ麻子を除いたあんこうチームとですが………
次回は戦車捜索で他のチームとの絡み、そして歩兵道側の教官が到着しての訓練初日を書く予定です。
1話前書きの通り、弘樹は舩坂 弘の孫ではなく、子孫という設定に変更させていただきました。
さて、ココでちょっと、この二次創作小説での予定と注意をしておこうかと思います。
先ず、登場キャラクターについてですが………
登場するオリジナルキャラクター達は、私以外に2人の友人と弟が考えてくれたキャラで構成されています。
比率としましては、私が考えたキャラが多いと思いますが、話に合わせて修正を入れていますが、友人2人と弟に考えてもらったキャラクターで何かとズレが生じるか可能性があります。
また、登場オリキャラは歩兵道の男子だけではなく、大洗女子学園側にも登場します。
サポーター的なポジションのキャラに加えて、オリジナルの戦車チームを1チーム加える予定です。
そのメンバーは友人の方が考えてくれたのですが、如何やらとあるアニメのキャラをモチーフにしている様です。
因みに、使う戦車はイギリス製のものです。
そして、更に………
この作品では歩兵が登場するという要素がある為、原作での他校との試合の様子が結構変わる予定であり、またオリジナルの戦車道、そして歩兵道がある学校が登場し、大洗と試合を繰り広げます。
その為、原作では練習試合のグロリアーナと実質カットされたアンツィオ戦を含めて、試合回数は5試合でしたが、この作品では何と!
その倍以上である10試合以上を行う予定です。
ですので、原作では登場しなかった戦車なんかも登場する予定です。
勿論、アンツィオ戦もカットせず、私なりのアンツィオ戦を書く予定です。
更に、恐らくガルパンファンなら一度は考える事………
グロリアーナとの全国大会でのリベンジ戦もやる予定です。
以上、こう言った予定でお送りする予定ですので、上記の事が受け付けられない方は、申し訳ありませんが、この小説はお勧め出来ません。
で、今回付けたオマケですが………
完全に悪乗りの産物です。
失礼致しました。
某動画サイトや絵描きサイトのシリーズが好きで、ついやりたくなってしまって………
お目汚し失礼致しました。
長々となりましたが、この辺で………
ご意見・ご感想をお待ちしております。