慶応義塾大学の家田真樹特任講師らは人の心臓の拍動しない細胞を、拍動する心筋細胞に作り変えることに成功した。5種類の遺伝子を入れて変化させた。この手法を使い、心筋梗塞患者の体内で心筋細胞を直接作り出せれば、万能細胞のiPS細胞を使わない新たな再生医療が実現できると期待している。10年後の臨床応用を目指す。
成果は米科学アカデミー紀要(電子版)に16日以降、掲載される。
心筋梗塞では心筋細胞が失われるとともに拍動しない「線維芽細胞」が増え、心臓のポンプ機能が下がる。症状改善には心筋細胞を増やす必要があるが、失われた細胞を元に戻すのは難しい。
実験では心臓病で手術をした患者から線維芽細胞を採取し、5遺伝子を導入した。心筋細胞に似た細胞ができ、他の心筋細胞と一緒に培養すると同じリズムで拍動した。
心筋細胞に変化したのは5%程度だが、生後1カ月から80歳まで患者の年齢にかかわらず、変化させることができた。研究チームはすでに心筋梗塞のマウスの心臓の細胞に3遺伝子を送り込み、体内で心筋細胞を再生する実験に成功している。
心筋細胞の再生では、iPS細胞を心筋細胞に育て外部から補う研究が進む。今回はカテーテル(細い管)で遺伝子を導入し、患者の心臓の繊維芽細胞を心筋細胞に変化させるので、胸を開く手術が不要。iPS細胞を使うよりも作業を簡単にできるという。
iPS、心筋細胞
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