日本どこへ:2013参院選 「靖国参拝、後回しに」 「中国包囲網」目指し(その2止)
毎日新聞 2013年07月14日 東京朝刊
<1面からつづく>
◇対韓外交で誤算 米は改善を期待
「首相に就任して以来、月1回のペースで13カ国に出張した。自由や民主主義など基本的価値を共有する国々との関係を強化している」。安倍晋三首相はネット討論会で胸を張った。首相の外交戦略の柱は、市場経済など価値観を共有する国々との連携を深める「価値観外交」だ。東シナ海・南シナ海で海洋進出を強める中国へのけん制が狙いで「中国包囲網」づくりともいわれる。
世界第2位の経済大国となり、アジア全域で勢力拡張を図る中国に対し、日本はこれまで受け身の対応が中心だった。しかし、第2次安倍政権の誕生で様相が変わる。沖縄県・尖閣諸島など南西方面を重視する狙いで、2013年度の防衛予算が11年ぶりに増額されるなど、対抗姿勢が鮮明になったからだ。
中国も譲らず、尖閣諸島周辺の領海・接続水域に海洋監視船の派遣を続け、周辺は今も緊張関係が続く。首相は尖閣問題で「中国は力による現状変更を試みている」と妥協しない考えを強調する一方、「ドアは常に開いている」と対話も呼びかけている。しかし、首相の歴史認識発言もあって中国は態度を硬化させ、首脳会談どころか、外相会談もできていない。6月中旬には、首相の外交ブレーンの谷内(やち)正太郎内閣官房参与を訪中させ、首脳会談を模索したが、戴秉国(たいへいこく)前国務委員らは日本がのめない領土問題の「棚上げ」を主張、打開の糸口を見いだせなかった。外務省幹部は「首相も今のままでいいとは思っていないが、原理原則を曲げる気はまったくない。我慢比べだ」と現状を解説する。
首相は当初、(1)日米同盟の再構築(2)韓国などとの関係強化(3)中国はけん制しつつ関係を改善−−の順で外交を立て直す構想を描いた。島根県の竹島問題でぎくしゃくしていた韓国との関係は米国に次いで重要で、2月の施政方針演説では「価値を共有する最も重要な隣国」(首相)の位置づけだった。同じ米国の同盟国として、対中外交を有利に進めるための仕掛けでもあった。
期待は外れた。韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は2月に就任すると、日本に「正しい歴史認識」を求め、4月に予定された日韓外相会談は麻生太郎副総理らの靖国神社参拝で延期。今月1日にブルネイでやっと実現したが、首脳会談の見通しは立たない。