日本どこへ:2013参院選 「靖国参拝、後回しに」 「中国包囲網」目指し(その1)
毎日新聞 2013年07月14日 東京朝刊
◇首相ブレーンが進言
「参院選後は、日米同盟の強化を優先し、靖国神社参拝など歴史問題は後回しにすべきです」
参院選公示を約1カ月後に控えた6月6日。安倍晋三首相は、首相官邸でブレーンの岡崎久彦・元駐タイ大使と向き合った。岡崎氏は、首相が政治家としてこだわる課題を、集団的自衛権の行使容認など安全保障上のテーマと、靖国参拝など歴史認識に絡むテーマに分類。二つを同時に追求すると「中国などに右傾化と批判され、足をすくわれかねない」(岡崎氏)との理由で、優先順位をつけるよう進言した。首相はじっと耳を傾けたが、明確な返答はなかったという。
首相は「戦後レジーム(体制)からの脱却」が持論で、昨年末の就任前には、靖国参拝を示唆するとともに、従軍慰安婦の強制性を認めた1993年の河野洋平官房長官の談話の見直しに意欲を示した。
しかし、就任後は、参院選を意識して安倍カラーを極力抑え、靖国神社の春季例大祭(4月)も真榊(まさかき)奉納にとどめた。
封印したかにみえた首相の「本音」が外交に水を差したのは、この直後だった。「侵略の定義は定まっていない」。植民地支配と侵略を謝罪した95年の村山富市首相談話についての国会発言に中国、韓国は猛反発。5月に談話継承を表明して軌道修正を図ったが、中韓両国だけでなく、同盟国である米国にも不安定な印象を与えた。
参院選後には、8月15日の終戦記念日、10月の例大祭が控える。首相の靖国参拝の有無が政治的な焦点になるのは避けられない。「参拝すれば(中韓両国との外交関係は)終わりです」。外務省は首相官邸に注意喚起しているが、首相は「行く行かないは言わない」とあいまいだ。
首相側近は「首相は自分の支持層に配慮しながら、外交問題化も避けなければならない。独自色の出しどころが難しい」と語る。岡崎氏も「参院選に勝てば、支持層から靖国を参拝しろとの圧力が高まる。それを抑えられるか」と、首相の出方をつかみかねている。=随時掲載