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東日本大震災から1年あまり経った2012年4月25日。東京・銀座に、有名シェフが勢ぞろいした。三國清三(オテル・ドゥ・ミクニオーナーシェフ)、徳岡邦夫(京都吉兆総料理長)ら8人のシェフが東北復興支援のために立ち上がった。
B級グルメのように、東北6県それぞれの地元の食材を使った「ご当地ロール」を作るというプロジェクト。その名も、「東北6県ロール」。著名なシェフの力を借りて、各県独自に「ロール」のレシピを作り、事務局から認定を受ければ、誰でも製造・販売することができる。そうすることで、地元に雇用を生み、まちの活性化につなげよう、という狙いだ。ルールは、地元の食材を使い、地元で製造・販売ができ、しかもワンコイン(500円)くらいの低価格に抑えること、という。
銀座でのキックオフイベントでは、事前に準備を進めていた柿沢安耶(パティスリー ポタジエオーナーシェフ)が、山形県産のだだちゃ豆や県花の紅花などを使った「だだちゃ豆と紅花のロールケーキ」を披露した。
残る7人のシェフがどの県のどんな食材を使って新メニューをつくるのか。プロ野球のドラフトと同じ、抽選で決めることになった。東北6県の生産者たちによるPRを受けて、自慢の産品を、それぞれアピールを受けて、シェフは順番を決めたあと、それぞれ取り組みたい食材(県)を指名する。
1番のカードを引いた園山真希絵(食プロデューサー)は「岩手」を選んだ。その理由は、2月まで経営していた家庭料理割烹「園山」で、開店から7年間料理長を務めた女性の出身地だったこと。「岩手の郷土料理や食材になじみがあり、被災地のボランティア活動としてもよく足を運んでいました」。
こうして、県ごとに、担当するシェフが決まった。福島は徳岡と、三國、岩手は園山とデイビット・マイヤーズ(SOLA オーナーシェフ)、宮城は栗原友(料理家)、青森はドミニク・コルビ(ル・シズィエム・サンス・ドゥ・オエノン エグセグティブ・ディレクター)、秋田は萩原雅彦(カフェ・カンパニー エグゼクティブシェフ)。
プロジェクトを仕掛けたのは、CM製作会社「ロックンロール・ジャパン」プロデューサーの湯川篤毅(40)と、福島県相馬市の日本JCシニアクラブ福島ブロック担当世話人の荒井大蔵(46)。ふたりは2011年夏、東北の被災地沿岸部10カ所で一斉に花火を打ち上げるプロジェクトで出会い、意気投合した。花火大会が終わっても、「東北のために何かできないか」とたびたび語り合うようになった。
そして昨年1月、東京・代官山で飲んでいるとき、荒井がこう提案した。
「湯川さんがやってる『○○ROLL』を東北のご当地グルメにできないだろうか?」
湯川は以前から、芸能人や有名シェフとコラボレーションして「○○ROLL」という巻き寿司やクレープを作り、車でケイタリングで販売していた。そこに荒井が目を付けた。会話のなかで、「ロッケンロール」という名前になり、湯川は会社名の「ロックンロール・ジャパン」をもじった響きに運命を感じ、やることに決めた。 そこに、震災以降、東日本の食の復興を目的に活動する「東の食の会」とリバースプロジェクトも加わり、3団体で「東北6県ロール」というプロジェクトが動きだしたのだった。
いったい、どのような食材を使って、どのようなレシピが出来上がったのか。=敬称略(つづく)
俳優、映画監督の伊勢谷友介が09年に株式会社リバースプロジェクトを設立。東京芸術大学の同級生らとともに、デザインで、社会的に利用価値が低いとされているものに新たな命を吹き込み、よみがえらせる「再生プロジェクト」を展開している。原発事故で見送られた卒業式を飯舘村の子どもたちにプレゼントするなど、社会貢献につながる「元気玉プロジェクト」なども活動している。
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