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もう一話、17時に投稿しようと思います。
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『3番目の大陸』
先にも述べたとおり、この大陸はレベリングがし易い仕様となっている。
レイド級モンスターを一気に狩れる《四聖獣クエスト》や経験値を大量に獲得できるモンスターなど様々である。
また、『3番目の大陸』グランドボスは《イザナミノミコト》程度…つまり中ボス程度の実力しか持ち合わせていない。
その代わり《劉備》、《関羽》、《張飛》とかの有名な三国志に出てくる猛者達である。
強力な《剣技》を使用する人型モンスターと設定されており、3体を一度に相手しなければならないと、ボスとの初見の際は苦汁を舐めさせられたものだ。
グランドボスである《劉備》、《関羽》、《張飛》が湧出する大陸は『3番目の大陸』の中心に位置する《最古の大陸》からかなり距離を置く、それこそ末端の末端の大陸である。
《フォーマメント・オンライン》において、グランドボスが湧出する大陸を探すのは一苦労だ。実際のところ5ヶ月という短期間で『6番目の大陸』まで辿り着けただけでも奇跡と言える。
一つの『大陸』と呼称される『空域』には全100以上の大陸が存在する。
《個人飛行艇》と呼ばれるグランドボスを倒す倒さない関わらず上層へと行けるオブジェクトアイテムの存在が露見したのもつい最近の事であり(カグヤは以前から知っていた様だが…)、それまではプレイヤーが己の力で探索を繰り返し、グランドボスとの激戦を繰り広げて来たのだ。
レベリングを意図的に行わなくとも、探索の過程で安全レベルに達したと言うは話は決して珍しいものでは無い。
この世界のクリアに当たり、グランドボス探索こそが最大の難所といっても過言では無い。



マコトが目を覚ましたのは、深夜のことだった。
直前まで夢を見ていた様な奇妙な感覚を振り払うと、完全に覚醒してしまった意識を別に向ける。
夢など見る筈も無い。
VR世界で夢は見ない。
絶対的であり、常識となり得ている知識にウンザリしつつ、黒のコートを羽織り、外に出た。
陽が上がっているはずもなく、広場近くに面している宿屋の外であっても、人の往来する音は聞こえなかった。
この世界では四季をはっきりとさせる傾向があり、今現在の季節は冬と春の境、少し肌寒い仕様となっていた。
深夜(早朝?)から剣の素振りをする気にもなれず、静まり返る広場にポツンと置かれたベンチに腰掛ける。
こんな時に『ネメア』がいれば、暇潰しもなるだろうに…。本当、肝心な時に出てこない困った監視者だ。
いや、出て来て欲しくないとマコト自身が望んでいるのかもしれない。
彼女と相対すれば必ずあの写真についての話になり得る筈だ。即ち過去を知る手掛かりになる。

「俺は…望んでいないのか」

結局のところ、自分は逃げているだけなのだ。
知るのが怖いから。
自分を捨てた親と対面するのが怖いから。
そして、捨てられたという事実が怖いから。
そんな自分に嫌気がさし、苛立ち、目を瞑った。
視界に入るのは、闇のみ。
何も捉えず、何も思考せず、マコトは再び眠りについた。


マコトが次に目を覚ましたのは、眉間に容赦の無い拳骨が降って来た時だった。
視界がチカチカしながらも、周囲が明るくなっている事から、陽が昇ったことが分かる。

「痛っーーー!!」

無論、痛覚はないのだが、衝撃が脳を揺さぶり反射的に叫んでしまう。

「『痛い』じゃないでしょう!!こんな所で寝てっ!!」

眉間を押さえながらも、拳骨を振り下ろした相手を視界に捉える。
腰まで垂らした灰色の髪、豊かな胸、そして腰にさす二丁のリボルバー式の拳銃ハンドガン
カオリさんを可愛いと表現するなら、彼女は美しいといった表現が似合う。

「何だよ。マキか」
「何だとはなんですか!!こんな辺鄙な所に呼びたして!!」
「いや、そこまで辺鄙な所ではないと思う」

『3番目の大陸』中央に位置する《最古の大陸》なのだから、人の出入りが最多な筈だが…、彼女は何かお気に召さなかったようだ。

「ていうか、いきなり殴んなよ!!ビックリするだろうか!!」

マキ。俺が《四聖獣クエスト》を受注するに当たり、招集したフレンドの1人。
フレンド登録していたため、HPは減らないまでも、ノックバックを受け付けないシステム保護が働かなかったようだ。

「熟睡していたのですもの。ついでに私のセカンド・インパクトも喰らいますか?」
「…そのインパクトって全部で何個あんの?」

質問に質問で返したのが気にいらなかったのか、再度拳骨が降る(自称セカンド・インパクトである)。今度は溝内にだ。
まあ、今の会見から分かる様に彼女は大変なる暴君である。

あとで聞いた話だが、このセカンド・インバクトとは2012年に放映されたアニメ映画に出てくる単語らしい。
知らねえよ、そんな昔の事。俺らまだ生まれてないじゃん…


マキというプレイヤーを説明するに当たり、必然的に彼女が組んでいるパーティの話になり得る。
彼女が所属するパーティは男性2人、女性3人の5人パーティとなっている。
皆そこそこ腕の立つプレイヤーだが、その中でもマキは上記を逸していた。
何故なら、彼女は《魔導師ウィザード》で有りながらも《調整者バランサー》の役目を担っていたのだがら。
《魔導師》の弱点、短所とも呼べる点は、鎧装備が身に付けられない点である。
《魔導師》は後方支援が主な役割であり、防御力が高い鎧装備を装着できない。殆どの《魔導師》はこの設定が設けられている時点で、ソロでは無くパーティとして生き抜く事を決めた事になる。
マキもその1人であり、彼女は《魔導師》が装備できる武器《銃》の使い手である。
鎧装備は防御力が高いものの、敏捷性が損なわれる。
そのため、《魔導師》であり《調整者》の役割を担う彼女は魔法アシスト効果の無い革装備を使い、防御という概念を捨て、速さにモノを言わせたプレイスタイルをとっている。
攻撃が当たらなければ、命の心配は無い。
当時、そのプレイスタイルを完璧なモノとするため、よく練習に付き合わされたものだ。
…まあ、そのお陰で俺は『攻撃を避ける』という離れ技を習得したのだけれども。
話を戻すと彼女は《フォーマメント・オンライン》という世界で最初にしておよそ他にする奴のいない戦法を生み出してしまった訳である。
そんな彼女だが、近々彼女が属するパーティは解散する事になっていた。
男性2人、女性3人。
この組み合わせがそれを引き起こしたとも考えられる。
ようは、2人2組で恋人に発展してしまったわけだ。
そして取り残された1人がマキであり、残り2組のカップルはシステム的ではあるが《結婚》するらしい。それを期に彼ら彼女らは前線から身を引き、愛を育むそうだ。
そのため、彼女はもう少ししたらソロとなってしまうわけである。
まあ彼女の実力を知るプレイヤーは多くいるので、その事実が知れた時、予約が殺到するだろうと見越してマコトは彼女を事前にスカウトしようと考えた。
マキを引く残り4人には既に了承を貰っており、後は彼女の意思のみとなるのだが、マコトはそれについて強制するつもりは無い。
強制して入れた処で本来の力が発揮される訳が無いし、彼女とは長い付き合いであるため最後は好きにさせたいと思っている。

まあ、彼女がソロで挑むと言うのであれば腕ずくでも止めるが…
願わくば、これ以上心配事を増やさないで欲しいものだ。

ーーいや本気マジで。




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