土日は訳あって投稿出来ません。
また来週の月曜から投稿します。
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桜木誠にとって家族とは大切な存在だ。
例えば義姉が重度のブラコンであっても、例えば義妹が極度のお節介であろうと、彼にとって家族はかけがいの無いモノである。
例えばそれが偽りの家族であろうとも…
桜木誠には、記憶が無い。
正確には、7歳までの記憶が無い。
孤児として孤児院に拾われ、それから一年の孤児院生活を送り、桜木家に養子に入った。
彼には自身の家族の記憶が無い。
しかし、彼はそれを不自由に思った事は無かった。
何故なら、今自身には家族がいるのだから。
最初の頃は負い目を感じていた事もあった。しかし、今はその負い目も消失している。
養子という境遇で小学校生活の序盤をバカにされて過ごす事もあったが、その度に義姉は義妹は助けてくれた。
たとえ自分が負い目を感じていても、何処か遠慮しても彼女達は決まって助けてくれた。
それが嬉しく彼は無意識の内に自身の本当の家族について心の奥底に封じ込めた。
自分を捨てた家族について何も知らず、彼は中学3年までの8年を過ごした。
これからも、それが続くと彼は思っていた。
しかし、それは簡単に終わった。
「・・・・・」
個人飛行艇に揺られながら、マコトは過去進行形で見ていたロケットをストレージにしまい込んだ。
この写真の中には、6歳程度の少年と少女が写っている。
1人はマコトであり、1人は『ネメア』だった。
それが何を意味しているのか、何を示唆しているのかマコトには知り得なかった。
こんな形で自分の過去を知る手掛かりが掴めると思っていなかったし、掴めるとも思っていなかったからだ。
「…親か」
「親がどうかしたんですか?」
不意に背後からの声に驚きながらも、平静を装いつつそれを発した人物に振り返る。
そこにはカオリさん、そしてトウカが立っていた。
「何?ホームシック?」
「違う!!」
全くの的外れと言えるか微妙な茶々を入れるトウカに否定の返事をしながら、徐々に鮮明となっていく大陸に視線を向ける。
『3番目の大陸』
マコト達は今そこに到着しようとしていた所だった。
「マコト君、何で《キャンペーンクエスト》を受注しなかったんですか?」
「お前らのレベルでクリア出来るものじゃないからに決まってんだろ!!」
本気で分からないといった表情を浮かべるカオリさんに思わずため息を吐きたくなる。
後ろではトウカもまたなんとも言えぬ微妙な表情になっているのが確認出来た。
「幸いにもここ『3番目の大陸』ではレベリングに適したクエストが数多く置いてある。明日は《四聖獣クエスト》をするつもりだから、今日はオフな」
「《四聖獣クエスト》ってレイド級のクエストじゃないの?」
定番となったトウカの何処からか仕入れた情報の問いが帰ってくる。
本当、どこから手にいれてんだよ情報…
「ああ。だから既にフレンド登録してる仲間に連絡を送って来てもらえるよう手配した」
「あんたにフレンドいたんだ…」
「・・・・・」
本気で驚かれた。
軽く死にたくなるな…
「ま、まあとりあえず明日まではゆっくり出来るってことですよね?」
珍しく場の雰囲気を読み、カオリさんが助け舟を出す。
「ああ。今日中に必要なアイテムや装備は買い揃えとけ」
笑顔で答える2人の同行者に微笑み返すと、再度マコトは『3番目の大陸』へと目を向けた。
カグヤが恐らく故意に残していったロケット。これをどういう意図で置いていったのかは定かでは無いが、マコトがカオリさんと同行する理由はできた。
カグヤと再会し、この写真について聞き出す事。
それが現段階でマコトがカオリというプレイヤーに同行している理由だ。
ーーそれもまた、過去への『逃避』だとマコトは自覚していた。
「着きましたねー、『3番目の大陸』」
「なんか古風な雰囲気出てるなぁ」
「三国志をモチーフにしてるからだろ」
道を行き交うNPCを視界に捉えながらも、カオリさんとトウカの食すスピードは止まらない。
ていうか話しながら食うなよ…
そんな事を考えつつ、マコトもまた食事へと戻る。
『3番目の大陸』中央大陸《最古の大陸》へ接岸し、既に2時間が経過していた。
『3番目の大陸』へ長期でないまでも、滞在する理由は先に述べたとおり、圧倒的なレベル格差だ。
固定パーティを組む以上、一定のレベルでなければ2人が足を引っ張ることは否めない。
そして、もう一つ。
ある意味こちらの方が重大なのだが…パーティメンバーの不足だ。
カオリとトウカがレベル55に達した時を頃合いに設定し、《キャンペーンクエスト》を受注しようとマコトは考えているが、幾ら何でも3人では挑めない。
勿論、《キャンペーンクエスト》受注の際はある程度親密な仲であるフレンドパーティに声を掛けるつもりだが、招集する自身のパーティが3人と少数であるのは、やはり格好がつかない。
最低でも、パーティ限界数である10人の半分…5人にはしたい所だ。
まあ、もしもの時は学級委員長に土下座してでも協力してもらうといった手段も残されている訳だが、果たしてその上にいる『アイツ』がそれを了承するかどうか。仮に了承したとしても後にどんな要求をされるのか分かったものではない。
「やっぱり、パーティメンバーを募集するか…」
「何の話ですか?」
無意識に口に出していた様で、カオリさんが覗き込む様にしてこちらを伺っている。
まあ隠す必要性も無いので一通りの説明を行う。
「成る程ね。そしたらさ、明日くる連中の中から引き抜けばいいじゃない」
「トウカちゃん。そんな事したら友好関係が…」
トウカの冗談混じりの提案にカオリさんが律儀に反対する中、俺の中で雷に打たれた様な衝撃が走った。
「それだっ!!」
カオリさんとトウカが呆然とこちらに視線を集める中、俺は既にパーティメンバーに加入するであろう1人の人物を思い浮かべていた。
カオリは自身がマコトという少年に向けている感情について気付いている。
それが恋愛感情であることも…
トウカにそれを相談した時は四六時中茶々を入れられたものだ。
しかし、その感情をカオリは持て余していた。
会って一週間の、しかも年下の少年に果たしてそんな感情が芽生えるのか?
恋愛感情だと分かっていても、そんな問いに悩まされてしまう。
傍目から見れば完全に恋する乙女なのだが…、それを彼女は自覚していないし、またその感情を向けている少年も気付いていなかった。
トウカに言わせれば、まさに漫画のような絵面だ。
しかし、それとは別にカオリ自身にはある疑問が浮上していた。
《アイアンゴーレム・ガーディアン》との戦闘の最中、『懐かしい』と感じた事だ。
それが何を意味するのか彼女は知り得なかったし、その事実を知る一般プレイヤーもまた、この世界にはいなかった。
ーーそれが後に大きな波乱を生む事になるとは、この世界において誰も知る由もなかった。
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