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1人と2人の違いは時に戦況を大きく変えることがある。
例をあげるなら、今がそうだと言わざる得ない。
トウカ合流から僅か数分、俺の周囲を取り囲んでいたモンスターは全てポリゴン片となって虚空へと散っていった。
大樹に身を預け、荒い呼吸を整える。

「トウカ、おまえ強くなったな」
「私だって遊んでたわけじゃないのよ」

同じく隣で身を預けているトウカに苦笑する。
確かにここ数日はトウカの修行を満足に見れていない。
カオリさんに受注させたクエストの内容を細部まで説明し、付き添いで何度か連いていったことはあるが、トウカの力量の変化を悟るのは怠っていたという自覚はある。

「でも、お陰でレベル20に到達したわ」

トウカの呟きで意識を再度彼女に向けつつ、後のことを思考する。
トウカは先の戦闘でレベル20に達した。あとはカオリさんのレベルを待つばかりなのだが、まだここに来た目的をなし得てはいない。

「あとは、アカネの出方だな…」
「あの陰湿な野郎のことだからね…」

顔を見合わせ互いに苦笑していると、不意に俺の脳内でアラーム音に似た音が響く。
モンスターを全滅させた際に増援の接近が分かる様にと、仕掛けていた《索敵》スキルにプレイヤーが引っ掛かったのだ。その数11人。

「噂をすれば…か。一週間とちょっとぶりだな。アカネさん」

四方八方が囲まれていることは、既に承知している。トウカを庇う様にして大剣を構え、樹々が生い茂るある一点を見つめる。
森林に一層影が落ち、暗闇の中から1人の女性プレイヤーが現れた。
その頭上に表示されたカーソルに視点を合わせると、【Akane】の文字が浮かび上がる。

「調子にのんじゃないよ。クソ野郎」

一週間前とのえらい違いように肩を竦めつつ、包囲網の解れを探す。
先程までのモンスター群は全てシステムによって定められた動きをした意思のない敵でしかなかった。が、今眼前に直立しているのはプレイヤーだ。それも複数人。
トウカはMPの殆どを攻撃魔法に使役し、俺もまた攻撃力、属性の付加に殆どを使っていた。

「あんたらのMPは限界だろ。例えどんだけ強くても、回復できなくちゃ同じだよ!!」

己の得物である片手剣を抜き放ち、こちらを威嚇するように鋒を俺に向ける。
面倒なことになったな…、脳内で呟きつつ二度目のアラーム音が鳴り響く。

「最後にチャンスをやるよ。トウカ、あんたがギルドに戻るんなら、殺さずに済ませてやる」
「失って初めて気がつくものがある。気付くのは良い事だが、執着するのは感心しないぜ」

アカネの要求(命令?)にトウカに代わり代弁し、トウカを片手で抱き上げる。
それに1番驚いたのはトウカだった。

「なっ!?あんた何して!?」
「掴まってろ」

トウカのあたふたした行動に若干の優越感に浸りつつ、大剣を片手に筋力値が許す限り跳躍する。

「《フレミング・インパクト》!!」

熱を帯びた大剣を地面に叩きつけ、地面を隆起させる。その隙間より波打つようにして、猛火が周囲を襲う。
《フレミング・インパクト》は広範囲技に設定されており、敵味方問わず傷付けてしまう。それを阻止するためトウカを抱き上げたわけだが、その正当なる理由を彼女が認識しているかどうかと問われれば否と答えるしかない。

「あんた、なんて事すんのよ!?マジでビビったわ!!」
「しょうがないだろ。こうするしか無かったんだから」

俺の頭部を狙っての肘鉄を避けながら、周囲を見やる。
そこには何人かのプレイヤーの姿が確認出来た。
《フレミング・インパクト》による広範囲攻撃が、敵の姿を隠していた樹々まで吹き飛ばしたのだ。

「木を燃やしちゃったけど…、山火事にならないことを祈るばかりだな」

無論、樹々はオブジェクト指定されているため、火が燃え広がることは無いのだが、自身の作り出してしまった惨状を見てしまうと、どうにも不安になる。

「さてと、トウカ。魔法でさっさと倒せ」
「MPが無いから無理。あんたの《剣技》でやってよ」
「……再使用可能な《剣技》の最短はあと8分」

互いに顔を見合わせる。
漫画などで視線を交じ合わせることで意思の疎通を図るという描写がよく描かれているが、現実で出来るのだと初めて知った瞬間だった。
俺の放った《フレミング・インパクト》の影響で、《倶楽部》のプレイヤー達は陣形を崩している。その穴をすり抜ける様にして、俺たちは逃走を図った。

「追いな!!絶対に逃がすんじゃないよ!!」

後ろからアカネの怒声が耳朶を打つが、気にしている場合では勿論ない。
…というか、会った時の面影ゼロだな。

「走れ、トウカ!!10メートル先、左!!」

先を走るトウカに指示を浴びせつつ、《索敵》スキルによってこちらに向かってくるプレイヤーに模した光点を睨む。
あと少し…!!

「そこを右だ!!」
「ちょっ!?此処って!!」

トウカとマコトが出たのは、隠れる場所どころか、逃走する道すらない絶壁がそびえ立つ場所…、簡単にいうなら崖下だ。

「どうすんの!?逃げる場所ないじゃん!!」
「大丈夫だって」

戸惑うトウカに笑いかけつつ、周囲を確認する。しかし、その動作はやってくるであろう《倶楽部》に対しての確認ではなかった。

ここ、俺の作戦にはうってつけだな。
脳裏で呟きつつ、システムウィンドウからマップを表示しマークする。

「あんた、何してんの!?」
「えっ、マップに現在地を記録してるだけだけど」
「この状況で何してんのかって言ってんのよ!!」

トウカの怒声がフィールドに木霊した直後に森林から数人のプレイヤーが出てくる。
11人いたプレイヤー数が、7人になっている所をみると、手分けして探していたのかもしれない。

「あーあ、トウカが大声だすから」
「私のせい!?」

隣で非難の声を浴びせるトウカを華麗にスルーし、先頭に立つアカネに視線を向ける。

「アカネさん、降参するなら今の内だぜ?」
「….は?何言ってんの。あんた、今の状況分かってんの?」
「ああ、分かってる。そして、俺はこの現状を打破する方法をすでに考えている」

ハッタリだ!!
トウカの脳裏でその言葉が何度も呟かれる。
マコトは自分がこちらに向かっていることを知らなかった。その時点でマコトの万策は尽きていたのだから。
だが、もしその脅しがアカネ達に通用するのなら…

「じゃあ、その打破する方法ってのを使ってみな!!やっちまえ!!」

黒光りする片手剣が振り下ろされるのを合図にアカネを除く6人のプレイヤーが肉迫する。

「あーあ。折角チャンスをあげたのに…、カオリさん!!」

マコトがその名を叫んだと同時に、得物を構え迫っていたプレイヤー達が吹き飛ばされる。

「ナイスタイミング。カオリさん」

私の前に立つプレイヤー向かってマコトは呟く。
そこには、片手剣を構えた《ライト・ウォリアー》が立っていた。















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