遅いですけど、3日連続投稿!!
体力が続く限り、続けて行こうと思います。
12
崎守 燈火。
それが現実での私の名前だった。
私はいつも通り、カオリとはフィールドへ出たと同時に別れた。カオリはクエストに私はレベリングに。
カオリに自信をつけされるため、マコトの趣向でここ数日の間にカオリと共に行動することが疎遠となっていた私にとってはいつも通りのことで、特に気にはしなかった。
レベルが18に達したことで、街に出てすぐに広がる草原フィールドに湧出するモンスターは単独で戦うことが可能になっていた。
しかし、それと同時に草原フィールドに湧出するモンスターでは経験値の取得が困難になっていた。
モンスターを倒した際に入手できる経験値はモンスターの強さによって変化する。
最初の頃は一日で3も上がっていたが、今ではたいした経験値の足しにもならない。
そこで私は森林フィールドに赴くことにした。
《魔導師》の扱える攻撃魔法はどれも遠距離攻撃に特化した魔法だ。そして魔法を発動させるに当たりコマンド入力が必要となる。それ故に、《魔導師》はソロに向かない。
MPが無くなれば攻撃手段が無くなるのは当たり前だが、モンスターに至近距離に接近されれば魔法はろくに発動出来ないからだ。
よって、《魔導師》にとって見晴らしの悪い森林フィールドは敵の位置を容易に掴めないため、滅多に利用することはない。
ただ、私は《魔導師》の短所の克服について事前にマコトに聞いていた。
普通であれば、即刻切り捨てられる相談だったが、マコトというプレイヤーは奇想天外な発想をするものだ。
相談したものの数秒の内にその答えを返してきた。
『お前の場合、接近戦に持ち込まれても勝てる』
その答えは至極簡単であると同時に、私を困惑させた。
私はマコトが『敵の位置を早期に発見する方法』を告げるものだと思っていたからだ。
敵の位置を早期に掴むことが可能な《索敵》スキルは《魔導師》の職業を持つ自身には派生しないスキルだ。だからこそシステム外スキルに詳しそうな彼に聞いた。
しかし彼は全く違う戦法を自分に教えた。
マコト曰く、『トウカの長所は魔法発動のコマンド入力の速度と正確さ』らしい。たとえ接近戦に持ち込まれたしても、いつも通りのコマンド入力速度ができれば問題はないらしい。
もちろん反論した。《魔導師》に接近戦は無理だと。しかしマコトは、
『《魔導師》が接近戦が無理だなんて誰が決めた?俺は《魔導師》の職業を持っていながら、《ライト・ウォリアー》や《騎士》と同様に《調整役》を担っているプレイヤーを知っている』
だそうだ。
カオリと共に修行を開始して一週間ちょっとだが、マコトというプレイヤーについて私は一つだけ分かっていることがあった。
《彼は嘘をつかない》
それはパーティを組んでいる者として当然のことなのだろうが、マコトというプレイヤーは少し違った。
たとえ小さな疑問にもパーティメンバーが相談すれば、必ず解を導き出す。
言ってしまえば、パーティメンバーを大切にしているのだ。
私は《フォーマメント・オンライン》に閉じ込められる以前、数々のVRMMOゲームをプレイしてきた。しかし、それは《死んでも生き返る世界》である。パーティメンバーを囮にして逃げるプレイヤーも少なからずいた。
そして今現在、自分達が囚われているのはデスゲームだ。相手のことなど二の次。最優先は自身の命。そう考えるプレイヤーが殆どだろう。真に人間性が問われるこのゲームでマコトのような攻略組プレイヤーが自分達の修行に付き合うのも、信頼させて盾にでも使う気なのだろうと疑っていた。
しかし違った。マコトというプレイヤーは自らの命を投げ打ってでも、自分達を助けてくれる。
たとえ《生命維持》というスキルが付与されている装備に身を包んでいようと関係なく助けてくれるのだ。
だからこそ度々思ってしまう。
自分の兄も彼のような人なら良かったと…
赤い軌跡を描きながら自分の頭上を凪ぐ大斧に舌打ちし、右手に持つ大剣で数秒前に再使用可能となった《ヴァリアブル・ストライク》を放つ。
白いスパークを迸らせ、大斧を振るった亜人モンスター《ジェネラル・ゴブリン》を沈黙させる。
しかし、勝利の余韻に浸る間もなく、後方から鋭利な鋏が迫る。
それを整わぬ姿勢で回避し、コートの内ポケットに隠し持っていた投擲ナイフを放つ。
しかし、《レッドティアシザース》の堅い甲殻に弾かれ、地面に落ちる。
荒い呼吸を繰り返しながら、マコトは視界の隅に表示されたHPバーを見る。
まだ3分の2程度は残るが、相手の攻撃が止む気配は無い。正確には連れてくる気配だが…
数十分の内に何体のモンスターを倒しただろうか。《倶楽部》が引き連れてくるのは、《レッドティアシザース》だけに止まらず、《剣技》を使用できる亜人モンスターをも連れて来やがった。…例をあげるのなら数秒前に倒した《ジェネラル・ゴブリン》がそうだ。
「ホント、陰湿な奴らだよっ!!」
突進攻撃のモーションをとる《フンシスボア》に攻撃力増強魔法を使用した大剣で横一文字に凪ぐ。
ポリゴン片となって消滅した《フンシスボア》に代わるように亜人モンスター《ゴブリンナイト》が現れる。
何度倒しても呼び寄せられる。
元を絶ったほうが良いのはわかっているのだが、《レッドティアシザース》の置き土産である《火傷》を誘発させる水溜まりが其処らかしこに並べられ、満足な移動もままならない状態となっている。
小学生の頃に受けた陰湿なイジメを回想し、この世界の何処かでギルメンの育成を行っている学級委員長の顔を思い出す。
『4番目の大陸』まで行動を共にした彼女はどうしてるんだろうと考えつつ、《剣技》スキルのスロットに表示される技を放つ。
「《フレミング・インパクト》!!」
刀身が真っ赤に染まった大剣を地面に叩きつける。それによって隆起した地面から猛火が噴き出し、周囲にいたモンスターを呑み込み、炎が消えた地には倒れ伏すモンスターの姿が見えるが、次々とポリゴン片に変わっていく。
《フレミング・インパクト》はモンスターを《火傷》状態にすることができる。その中で立っていられるのは、炎耐性を持つ《レッドティアシザース》ぐらいだろう。
まあ、それも今の一撃で一掃することが出来たのだが…
次なるモンスターが現れる気配がないという事は、《倶楽部》の面々はモンスターの補充にでも行っているのかもしれない。
「逃げるか、戦うか…」
今なら逃走も可能だろうが、ここで《倶楽部》を取り逃がせば、再び妨害してくる可能性が高い。
結局のところマコトの取る道は一つしかないのだ。
「俺の集中力が切れるのが先か、アカネの忍耐力が切れるのが先か、それとも…」
最後まで言葉を紡ぐことなく大剣を握り直すと、再度現れたモンスターにマコトは肉迫した。
カオリは《王族の墓地》に来ていた。
一週間ほど前にここに来た筈なのだが、懐かしく思える。
数分の間感慨に浸ると、ここに来た目的をこなすべく、目的のアイテムを探す。
カオリが今日受注したのは《王族の墓地》に生える《骸骨ざくろ》を入手する採取クエストだ。
此の所、1人で行動することが多くなったカオリにとって、採取クエストは容易いものだ。
台座の隅に生える《骸骨ざくろ》を手際良く刈り取っていく。
「このぐらいかな…」
クエストに定められた量の《骸骨ざくろ》をストレージに詰め込み、システムウィンドウでクエスト覧を表示する。
先頭に置かれた《王族の骸骨》をタップし、ストレージに置かれたざくろを送る。
数秒後、クエストクリアという文字と共に、報酬がストレージ内に入れられていく。
「この後はっと、トウカちゃんと一緒にレベリングでもしようか」
閉じたシステムウィンドウを再度表示し、トウカと表示された欄をタップしメールを書き始めようとした時、カオリはふと背後からの視線を感じた。
背後には先ほどカオリが採取した《骸骨ざくろ》と台座があったはずだ。
振り返ってみると、台座にちょこんと少女が座っていた。
黒いレースのついたドレスに身を包んだ金色の髪の少女は、モンスターの闊歩するフィールドではおよそ不釣り合いに見えた。
「えっと、迷子にでもなったの?」
話しかけてみるが彼女は何も発さず、じっとこちらを見つめている。
流石にカオリも困惑した。迷子なら親御さんを探すべきだろうが、彼女は何も喋らない以上、それは不可能だ。
頭を抱えていると不意に少女は言葉を発した。
しかし、その内容は自分の親のことではなく、カオリの予想を遥かに超えるものだった。
「マコトが1人で《倶楽部》と戦っている」
異国のお姫様にも思える少女から発された言葉を理解するのにカオリは数分の時間を要した。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。