07
ゴーレム系モンスターにはどの個体も《シェル・アーマー》というエクストラスキルを所持している。《シェル・アーマー》は《火傷》、《毒》、《麻痺》、《氷結》…計4つの状態異常を無効果するスキルだ。つまり、ゴーレム系モンスターに状態異常は全く効かない。
「守護モンスターがゴーレムって相性悪過ぎだろ!!」
黒の光沢を放つ金属で覆われた腕が頭上から振り降ろされる。それを最低限の動きでかわし、《レディエント》によって強化した大剣を振るう。しかし、その巨体は全く微動だにしない。
ゴーレム系モンスターの主たる特徴は防御力の異常な高さだが、目の前にいる《アイアンゴーレム・ガーディアン》はその中でも明らかに上記を逸していた。
「いくら防御力が高いからってこれは流石にないだろ」
どれだけのステータスを所持しているんだか…。
追撃を大剣の腹で受け止める。腕に不快な痺れが走り、HPがいっきに一割も減少する。
防御力もさる事ながら攻撃力もまた規格外の高さだ。おそらくマコトが使っているシステム外スキル…、遠心力を利用した攻撃力の向上と同じ原理なのだろう。
多大な重量による攻撃力向上…、厄介な能力だな。
「…それなら!!」
《アイアンゴーレム・ガーディアン》の攻撃を掻い潜り、大剣を振るう。
ガキイッと大量の火花が散るなか、ノックバックによって巨体を吹き飛ばす。
「アバダ・ウーゴ・サキト・ガラミス…」
間髪いれずコマンド詠唱を行う。
《魔剣士》の使える数少ない放出魔法…
「《黒霧縛》!!」
掌から黒い霧が噴き出し、再度攻撃しようと向かって来たゴーレムに絡みつく。
《黒霧縛》
《魔剣士》の扱える数少ない放出魔法の一つで、高密度に圧縮した魔力により相手の動きを阻害する効果を持つ。
「スキル《分析》発動!!」
《黒霧縛》によって作り出した間を利用し、相手のステータスを分析するが、視界に映し出された情報に絶句する。
《アイアンゴーレム・ガーディアン》
レベル56
攻撃値135 防御値763 敏捷値65
レベル56!?
それはマコトと同じレベルだった。
ていうか、ステータス偏り過ぎだろ!?
予想通りではあったが、防御値が異常な程に高いな。
「なら…、アヴァダ・ヌーズ・シース。《付加》属性 氷!!」
口頭のコマンド入力の終了と共にマコトの握る大剣を仄かな光が包み込む。マコトの大剣…、正式名称 《エヴェニィー・ブレード》。無属性武器であるそれに《エンチャント》によって氷属性が付与される。
ゴーレム系モンスターの弱点である氷属性。さらに威力を増加させるため、《剣技》スキルを発動させる。
「《ヴァリアブル・ストライク》!!」
《剣技》スキルに設定してある剣技が発動し、大剣に白いスパークが走る。
「だあぁぁぁぁぁぁっ!!」
《黒霧縛》によって行動が阻害されている《アイアンゴーレム・ガーディアン》にシステムアシストの恩恵を受け、大剣を叩きつける。しかし…、
「効いてない!?」
HPは依然として数ドットしか減少しない。
ゴーレム系モンスター全般の弱点である氷属性の攻撃でさえ、守護モンスターである《アイアンゴーレム・ガーディアン》には通用しない。
この圧倒的な防御力こそが守護モンスターたる所以なのかもしれない。
数分後マコトは戦闘を放棄し、その場から逃げ出した。
荒い息を整え、渇いた喉を冷水で潤す。
氷属性が効果がないと分かると、雷、火、光、闇などの属性による攻撃を試みたがどれも決定打にはなりえなかった。
「状態異常が効かないうえに有効な属性も無いとは…、チートくさい奴だったな」
《アイアンゴーレム・ガーディアン》との戦闘で耐久値をすり減らした大剣に砥石を当て回復させる。
全快とまではいかなかったが、そこそこ耐久値は回復した。
「とりあえず、あいつを倒す作戦をたてないとな」
レベル56という『2番目の大陸』ではありえない力を持つゴーレム。厄介な相手だ。
「あいつらにも報告に行くか」
戦闘中は気付かなかったが、既に時刻は午後4時…カオリ達と別れてから約4時間が経過していた。
大剣を鞘に収めると、マコトはカオリとトウカが特訓しているフィールドへ歩き出した。
「…何だこれは?」
森林を抜け出し草原フィールドへ再度戻ったマコトは眼前の状況に絶句した。
そこには倒れ伏すカオリとうとうとと微睡んでいるトウカの姿があった。
モンスターの再湧出時間が長いとはいえ、システム保護の働いていないフィールドで睡眠をとるとは、呆れを通り越して感心を覚えるほどだ。
「起きろ!!バカ2人!!」
耳元で叫ぶと最初にカオリが続いてトウカがノロノロと顔を上げる。
まだ完全に覚醒出来ていないのか、周囲を2、3度見回した後マコトの顔を捉える。カオリとトウカは直後に硬直する。
「とりあえずはお前らは何で寝ていたのか聞こうか?」
レッツ・説教タイム♪
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
説教タイム終了。
「つまり、お前らはレベルを3ずつ上げ、モンスターが再湧出するまで仮眠をとっていたと…そういうことだな?」
「「Yes!!」」
「『Yes!!』っじゃねえよ!!モンスターに襲われてたら死んでたんだぞ!!」
いや、《生命維持》スキルが付与された装備を持たせてたから死にはしないか…。
しゅんとした表情で正座しているカオリとトウカを見つめ、ため息をつく。
「とりあえず街に戻るぞ。そろそろ日が暮れる」
レベルが15になったカオリと17になったトウカを連れ、マコトは街に帰還した。
「レベル56っ!?」
マコトの宿泊している宿から数キロ近く距離のある酒場でトウカは素っ頓狂な声を上げた。この酒場は二階が宿になっているため、カオリとトウカは昨日からここに泊まっているらしい。
「レベル56ってあんたと同じレベルじゃないの!!」
「ああ。しかも防御値が尋常じゃなかったな」
人数分の食事を頼み終え、今日戦った守護モンスター《アイアンゴーレム・ガーディアン》の簡単な説明を行う。
「倒せそうですか?」
「真っ正面からの戦いじゃ十中八九勝てないな」
脳裏に《アイアンゴーレム・ガーディアン》との戦闘を思い出しながら、マコトは眈々と告げる。
「そんじゃあ、どうすんのよ!?私たちまだレベル20にも達してないのよ!!」
それはお前らの問題だろうが。喉まで出かかった言葉を飲み込み、今日取得した《アイアンゴーレム・ガーディアン》の情報を整理する。
防御値763、属性攻撃が無効、重量による攻撃力の向上…
「とくに防御値が厄介だな」
マコトの持つ職業《魔剣士》は防御力では他の職業に劣る。それでもマコトが《魔剣士》でソロを続けることができた主たる理由は『攻撃を避ける』という異業を行うことが出来たからだ。もちろん攻略組では『攻撃を避ける』という概念は存在する。しかし、命を賭けるこの世界ではやはり恐怖が感情を支配することが多々ある。攻撃を直前で避けるよりも、距離を大きくとれば安全なため、『攻撃を避ける』という荒技を使うプレイヤーは攻略組でもそういない。
攻撃を避け、短時間で次の攻撃に転じる…、それがマコトの戦闘タイプだが、それは同時にある条件を示す。それは戦うモンスターの殆どが防御値、もしくはHPが高くないということだ。
マコトにはシステム外スキルとも呼べる攻撃力増強の他に《魔剣士》の扱える《エンチャント》があり、一撃一撃が決定打になりうる力を持つ。つまり短時間での戦闘終了を意味している。しかし、防御値またはHPが群を抜いて大きい個体…、言ってしまえば《アイアンゴーレム・ガーディアン》の場合はそうはいかない。属性攻撃が効かず、《剣技》スキルであり、マコトの扱う大剣の高威力攻撃の一つ《ヴァリアブル・ストライク》でも数ドットしか減らせなかった。そんなモンスターに短時間での決着がつくはずがない。
しかもマコトの使う『攻撃を避ける』は多大な集中力を必要とするため、長時間の使用はできない。
八方塞がりも良い所だ。
「どうすんの!?」
「どうするんですか?」
カオリとトウカが反対側の机から身を乗り出し、問いかけてくる。
「まあ、戦法はあとから考えるとしてまずはレベルだな。今のお前らじゃあいつの一撃で即死だぞ」
今日一日(?)のレベリングでトウカとカオリは3ずつレベルが上がっていたが、レベル56には到底敵わない。
「とりあえず、お前らがレベル20以上になったらもう一度下見に行こう」
「明日じゃないの?」
「明日は予定がある」
必ず食いついて来ると予想した通り、トウカはマコトの指定した条件に首を傾げた。
「とにかくお前らは明日も草原でモンスターを倒せ。目標はレベル20!!一刻も早く到達させるために明日は6時起きだ!!」
分かったらさっさと寝にいけー!!
その言葉を聞く前にカオリとトウカは酒場の奥にある自室に走って行った。
カオリとトウカが数秒前までそこにいたと証明できるものは、机に置かれた『2番目の大陸』内での高価な料理の空き皿だけだった。
「・・・・・あいつら、自分の飯代払わずに行きやがった」
ぽつーんと取り残されたマコトがその事実に気付いたのはそれから数分が経過してからだった。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。