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【コラム】

筆洗

 「自分なんか生まれてこなければよかったんだ…」。絶対、子どもたちに口にしてほしくない言葉だ。世の中には、さまざまな道徳観がある。だが、子どもにそんな思いをさせる法があるのなら、それは倫理的に正しいのか▼「児童の権利に関する条約」は世界中の子どもの尊厳を守るためにつくられた。その二条は<児童又(また)はその父母…の人種、皮膚の色…出生又は他の地位にかかわらず、いかなる差別もなしにこの条約に定める権利を尊重し…確保する>よう各国に求めている▼日本もこの条約を守ることを、世界に約束した。しかし、国連の人権機関から「出生にかかわる差別だから改めるように」と言われ続けてきたのが、法律上の結婚をしていない男女に生まれた子(婚外子)の遺産相続分を、結婚した夫婦の子の半分と定めた民法の規定だ▼何人もの婚外子たちが違憲だと訴えてきた。最高裁はおととい、大法廷で当事者らの意見を聞いた。秋にも違憲と判断する可能性がある。原告の一人は「自分の命の価値が半分と言われているみたいだ。そんな差別はおかしい」と思いを語った▼自ら裁判を闘ったことがある女性はこう言ったそうだ。「両親への恨みはないし、婚外子に生まれたことを不幸とも思っていない。不幸なのは婚外子を差別する社会に生まれたこと」▼私たち一人一人に、重く問い掛ける言葉だ。

 

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