「二分の一」の定めは違憲と判断されるのか。婚外子の相続差別をめぐる審理の弁論が最高裁の大法廷で開かれた。差別を認める国であり続けるのか、平等を実現しようとするのか。世界が見ている。
結婚していない男女間に生まれた子の相続分を、結婚した夫婦の子の半分にする民法の規定は憲法にかなうのか。遺産分割をめぐり憲法判断を争う東京と和歌山のケースについて、最高裁は婚外子、婚内子双方の主張を聞く弁論を大法廷で開いた。
「ついに大法廷まで来たという思いと、今回まただめだったらという心配で、体が震えました」
和歌山のケースで記者会見した婚外子の四十代女性は、弁論を傍聴席から見守った感想を、こう話した。
女性の両親は正式に結婚していなかった。父には結婚生活が破綻した妻と子がいた。妻子を残して家を出て、離婚しないまま母と暮らし始めて女性が生まれた。同級生に「めかけの子」とからかわれたこともあるが、家族の仲が良かったので気にしなかった。
ところが父が亡くなった二〇〇一年、遺産分割で婚内子の半分とされ「命の価値も半分」と否定されたようなショックを受けた。
婚外子の相続差別をめぐっては、最高裁の大法廷は一九九五年に「合憲」の判断を示しており、今回の審理は十八年ぶりとなる。
事実婚やシングルマザーも増えた。家族や結婚の価値観が多様になる中で、違憲判断を示す可能性が高い。
婚外子の差別規定について、日本政府は国連の人権機関から「すべての児童は出生によって差別されない権利を持つ」と、何度も是正を勧告されてきたが従っていない。欧米は一九六〇年代以降、相続の平等化に動きだし、日本と同様の規定のあったドイツやフランスなどは法改正し、先進国では日本だけが残っている。
本欄の社説「少数者差別、司法が救え」に茨城県牛久市の男性(77)が意見を寄せてくれた。
最近、意外にも妻に父方の遺産相続が降り掛かってきたという。父母が結婚していない婚外子で、生まれてすぐに世間の非難をかわすため、他家に引き取られていた事実を知ることになった。「妻にとっては屈辱だ。長く放置された法は悪いが、マスコミも訴えることを忘れていたのではないか」という指摘もあった。
「子は平等」。司法は世界に恥じない判断を示してほしい。
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