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婚外子相続格差で最高裁大法廷弁論
7月10日 18時55分

婚外子相続格差で最高裁大法廷弁論
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両親が結婚しているかどうかで子どもが相続できる遺産に差を設けている民法の規定について、最高裁判所の大法廷で弁論が開かれました。
明治時代から続く民法の規定が憲法に違反するかどうかについて、最高裁が判断を見直す可能性もあり、結論が注目されます。

民法では、結婚していない両親の子ども、いわゆる「婚外子」は、結婚している両親の子どもの半分しか遺産を相続できないと規定されています。
これに対し、東京と和歌山のケースで、婚外子の男女が「法の下の平等を定めた憲法に違反する」と訴えていて、10日、最高裁判所の大法廷で双方の意見を聞く弁論が開かれました。
婚外子側の弁護士は、「両親が結婚しているかどうかは子どもの意思とは無関係なのに差別は不当だ。事実婚の増加などで家族や結婚の価値観は変化し、規定の存在意義はすでに失われている」と述べました。
また、東京の婚外子の男性は法廷で、「子どもの頃や結婚の時に肩身の狭い思いをしてきた。差別をなくすべきだ」と訴えました。
これに対し、相手側の弁護士は、「法律上の結婚を尊重するための規定で合理性がある。家族や結婚について国民の意識が大きく変化したとは言えず、見直す必要はない」と述べました。
最高裁は、18年前の平成7年も大法廷で審理を行い、この時は「憲法に違反しない」という決定を出していますが、再び大法廷で弁論が開かれたため、これまでの判断が見直される可能性もあります。
最高裁は、この秋にも判断を示すとみられていて、「憲法違反」とされれば、明治時代から続く民法の規定は改正が迫られることになります。

訴えた女性「差別は絶対おかしい」

申し立てを行った和歌山県の40代の女性は、両親や姉と4人で暮らしていました。
小学生の時、自分の父親と母親が婚姻届を出していないままで、父親には別に妻と子どもがいることを知ったということですが、子どもの頃は周囲から差別を受けるようなことはなかったということです。
その後、父親は「自分の財産のことは母親に任せるように」と書いたメモを残して10年余り前に亡くなりました。
しかし、正式の遺言状ではないことから、遺産相続の額が争いとなりました。
最高裁での弁論の後、女性は「相続の権利が2分の1だと言われた時に、自分の価値も半分しかないと言われたように感じました。自分で選んで両親のもとに生まれたわけではないのに、差別されるのは絶対におかしいことなので、最高裁はこの機会に考えを改めてもらいたい」と話しました。
一方、今回の相手方で結婚した妻の子どもは、「私たちは長い間精神的な苦痛に耐えながら生きてきました。法律の規定が心の支えであり、婚外子を相続で平等に扱うことは絶対に反対です」というコメントを出しました。

「家族多様化で実情に合わず」

両親が結婚しているかどうかで相続に差を設ける規定は、115年前の明治31年に施行された民法で設けられました。
当時の資料などによりますとこの規定は、「法律上の結婚を重視しながら、結婚していない両親の子どもにも一定の相続を認める」という理由で定められたということです。
その後見直しを求める声が高まり、平成8年には法制審議会が見直しを求める答申を提出したほか、3年前も国が民法の改正案をまとめました。
しかし、「規定が見直されると結婚せずに子どもを産む人が増える」とか「結婚の制度が崩れかねない」などの反対意見が出され、改正は行われないままとなっています。
一方でこの規定に対しては、国連の委員会がことし5月に婚外子などを差別する法律を改正するよう求める勧告を行うなど、何度も見直しが求められています。
家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は、「明治時代には想定していなかった家族の多様化が進んだため現在の規定は実情に合わなくなっている。子どもの意思とは無関係に両親が結婚しているかどうかで不利益な扱いをすることはもはや許されないのではないか」と話しています。

「規定が差別の風潮生んだ側面も」

最高裁で弁論が開かれたことについて、婚外子に対する差別の問題などに取り組むNPO法人「mネット・民法改正情報ネットワーク」の坂本洋子理事長は、「遺産の相続に差を設けている規定が、婚外子は社会的に差別されてもしかたがないという風潮を生んだ側面もある。最高裁判所が憲法違反だと判断をすれば、両親が結婚していても結婚していなくても子どもは平等だという意識を広めることにつながるはずだ」と話しています。

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「婚外子」相続で10日最高裁弁論へ (7月10日 4時17分)

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