北朝鮮:「核兵器保有は米のせい」…金総書記が小泉氏に
毎日新聞 2013年07月15日 11時56分(最終更新 07月15日 12時21分)
【北京・西岡省二】米国のせいで、仕方なく核兵器を持つのだ。ブッシュに言ってくれ−−。北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記(2011年12月死去)が02年9月の日朝首脳会談の際、小泉純一郎首相(当時)に対し、核保有に至る自国の立場をブッシュ米大統領(同)に伝えるよう求めていたことが14日、分かった。当時は日朝対話が進む一方、米朝間は北朝鮮の核開発疑惑によって緊張が高まりつつあった。日本を仲介させ、対米交渉を有利に進めようとする北朝鮮の戦略が浮き彫りになった。
毎日新聞が入手した朝鮮労働党幹部による内部講演の音声記録で判明した。北朝鮮は最近も日朝対話をてこに米国との対話再開を求める姿勢を見せており、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記も同様の路線を踏襲している模様だ。
講演者の話によると、金総書記は首脳会談の際、小泉首相に対し「これから私が言うことをそのままブッシュに言ってくれ」と前置きし「我々は核兵器を持たないようにしているのに、米国が執拗(しつよう)に持つようにしているため、仕方なく持つのだ」と主張したという。また、金総書記が「米国のせいだ」「生きていくためだ」などと訴えたことも紹介。
日本外務省の記録によると、小泉首相は首脳会談後の記者会見で「米朝関係について金総書記から『常に対話の門戸を開いている。日本からもこのことを伝えてほしい』という趣旨の発言があった」と述べていたが、核兵器に関する伝言は明らかにされていない。
内部講演は3回目の核実験(今年2月12日)後、間もなく開かれたとみられ、核実験を強行した背景などにも触れている。
核実験前、米韓両海軍が北朝鮮をけん制するため、日本海で合同軍事演習を実施。これを「敵国はいろいろな手段で我々を破壊しようとしていた」と批判し「元帥様(金第1書記)が『1歩退けば、次からは10歩、100歩引き下がることになる』とおっしゃって核実験を成功に導かれた」と紹介し、金第1書記の指導力をたたえた。
さらに、衛星打ち上げを成功させた「2012年12月12日」、核実験を成功させた「2013年2月12日」の年月日の数字をすべて足し合わせると、いずれも「11」になると説明。「11」を金正恩体制を担ぐ「祖国」「核」「宇宙強国」のシンボルとなる数字だと強調している。