iOS 7 使って感じるアプリデザイン大変更の波

中村 祐介 | 株式会社エヌプラス代表取締役

iOS 7

先週、Appleから「iOS 7 beta 3 now available.」のメールがきた。これは、iPhone や iPad などの開発者に送られてくるもの。iOS 7の秋公開に向けて、僕らのような開発会社は事前にこうしてiOS 7を触ったり、そのiOS 7上でアプリを開発したりする。

■「iOS 7」ベータ第3版がリリース--パフォーマンス向上やバグ修正など

http://japan.cnet.com/news/service/35034440/

そこで、さっそく手持ちの iPhone5 を iOS 7 に変えてみた。下の写真が、それ。もし、iPhoneをお持ちの方は、現在の画面と見比べてほしい。だいぶ変わったことがわかるはずだ。

iOS 7 beta 3
iOS 7 beta 3

今回のリリースではフォルダの透過性が増し、楽曲コントロールのデザイン変更、カレンダーでイベントのある日が分かるようになったなどが変更点。こうして何度も修正が行われ、この秋に、みなさんのところに届くのだ。

<iPhoneはじまって以来の大幅変更>

今回の iOS 7 は、iPhoneはじまって以来の大幅なデザイン変更と言われている。そのことで、様々な人が様々なことを言っている。その中で Laws of Simplicity のジョン・マエダさんのは面白いです。

デザインとは「厳然たる真実(hard truths)」ではなく、むしろ「柔軟な解答(soft solutions)」へのアプローチの多様性に関する事柄である。デザインは振れ幅(spectrum)があるものであり、「実物を模倣するかそうでないか」というような二者択一の決定ではない。

出典:「iOS 7」論争とデザインの本質:ジョン・マエダ

<モバイルのデザイン(UI)議論>

デザイン論を話し出すと、今回の記事から少し外れてしまうので省くが、特にモバイルのデザインについては「実際にデバイスに搭載させ、あらゆるシーンで使ってみて」初めてわかるものが多い。だから、僕はiOS 7 beta 3のリリース日にFacebookでこんなことを書いた。

Appleから「iOS 7 beta 3 now available.」のメールがきた。さっそく変えてみよう。みんなあれこれいうけど、僕は今使っていて、モバイル利用では視認性がよくなったと思うよ。その結果、操作性もよくなる。 モバイルのUIをキャプチャーして、PCであれこれ言うのは古いね。むかし、Webデザインを紙に打ち出して赤字を入れていたような古さを感じる。モバイルのUIはあらゆるシーンで使ってみないと、何もわからないよ。 フラットとかスキューモとかいう前に、プロダクトで利用することを前提に設計していく議論がないモバイルUI/デザイン論は、机上の空論にしか聞こえないのは僕だけかな。

出典:https://www.facebook.com/yusuke.nakamura.nplus/posts/10151704061315842

大切なのは、ユーザーのあらゆる利用シーンを想定して、そのデザイン(UI)が設計されているかどうかだと思う。特にPC上でデザインをしたモバイル用のデザイン(UI)は穴が多い。それを実際にモバイルで使ってみて、軌道修正を行っていくしかない。それでもモバイルの開発は非常に重要になってきているのは疑いようのない事実だ。

Google の調査資料では、スマートフォンなどのモバイルで検索をする大半は自宅や会社だという。しかも、その半数以上が自宅や会社にパソコンがあるというのに、だ。つまり、パソコンがあっても、移動していなくてもスマートフォンによる検索が増えてきている。これはスマートフォンが人にとってもっとも身近なデバイスであることの証明になる。それだけのデバイスを、無視するわけにはいかない。

Google や Apple は、プロダクトやサービスをモバイルから考える「モバイルファースト」という概念を経営に取り入れている。この概念はLuke Wroblewskiが提唱したものだ(ちなみに、いま日本国内で「モバイルファースト」とか言っている制作会社の多くは、Luke の Mobile First すらちゃんと読んでいないまま、語っていることが多いのは実に残念。実はここでもiOS 7 のデザインに近い無意味な議論も起きているが、それはまた別の時に)。

■Mobile First

http://www.abookapart.com/products/mobile-first

<iOS 7 で開発側が苦労しそうなこと>

iOS 7をデザイナーと見ながら話していて思ったのは、旧来の Skeuomorphism のアプリアイコンやアプリデザインをiOS 7上で利用すると違和感があるということ。OS全体がフラットデザインになったことで、 Skeuomorphism のデザインはどうしても浮いてきてしまう。

たとえば、標準アプリのカメラはフラットデザインのアイコンになった。その横にある Instagram が、違和感あり。

画像

標準アプリの「録音」は現OS ではマイクだが、ごらんのようにタイムラインで録音がわかる仕組みなっている。電卓もフラットデザインになっている。 Newsstand も木目はなくなり、さっぱりだ。

録音
録音
電卓
電卓
Newsstand
Newsstand

こうなってくると、既存アプリもデザインをフラットに変えていかざえる得なくなってくるのかも。もしくは、Apple 側から何かしら“ルール”が決められるかもしれない。Flash の開発者が、衰退の波に呑まれていくように、 Skeuomorphism を得意としてきたデザイナーたちは、ジョン・マエダさんの言う「振れ幅」を嫌でも持たざるをえなくなるだろう。

Apple によれば iOS用アプリケーションの数は90万本(Worldwide Developers Conference でアナウンス)。これらは、iOS 6 までのデザインに合わせてデザインされてきた。iOS 7 になり、OS のデザインが一新されたことで、これらアプリのデザインも見直しの必要がでてくる。日本国内の大手企業で、いちはやくデザインに対応したのはANAだろう。

ANA
ANA

思いだしてほしい。ほんの数年前まで、Flash のデザイナーやエンジニアたちは Flash を至上のもののような扱いをしていた。それが今はどうだ。まるでそのことはなかったかのように、Flash 礼賛を辞めている。Apple という一社が、iPhone や iPad で Flash を使わない決めた結果で、だ。

同じようなことが、この秋以降、起きてくるのかもしれない。同時に「アプリアイコン、フラットデザインに変えます!」みたいな一瞬のビジネスなんてのも、でてきそうだけど。

中村 祐介

株式会社エヌプラス代表取締役

大手出版社の編集記者職を経て、株式会社エヌプラス代表。企業のクリエイティブ、マーケティング、SNS等の戦略立案から実施まで手がけ、多数のメディア開発を行う。人材開発やデジタル分野の事業導入のコンサルティングも勤める。複数の海外企業とも提携し、日本での事業展開をサポート。大学での講演・講師活動を通じて後進の育成にも取り組んでいる。著書に『ユーマネー』(講談社)などがある。

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