アニメ:幻のフィルム発見 大藤信郎作「のろまな爺」など

毎日新聞 2013年07月14日 09時35分(最終更新 07月14日 10時48分)

大藤信郎作「のろまな爺」(1924年)の35ミリフィルム。夜を表現するために青く染色された部分から=安井喜雄さん提供
大藤信郎作「のろまな爺」(1924年)の35ミリフィルム。夜を表現するために青く染色された部分から=安井喜雄さん提供

 日本の実験アニメーション作家の草分けで、毎日映画コンクールにも名前を残す大藤信郎(おおふじ・のぶろう)(1900〜61年)の、文献などで存在のみ知られていた幻のフィルムが発見された。第1作「のろまな爺(じじい)」(24年、白黒、無声)の全編と、未完成に終わった「竹取物語」(61年、カラー)の未編集ネガ。ともに35ミリフィルムで、長さは5分。神戸映画資料館の安井喜雄館長(64)が関係者から今年5月に購入し、確認した。

 大藤は東京生まれ。江戸千代紙を用いたり、色彩セロハンによる影絵に取り組むなど、実験的手法のアニメを個人で製作。セロハンアニメの「くじら」が53年のカンヌ国際映画祭に出品されるなど、海外で高い評価を得た。没後、毎日映コンに実験アニメを対象とした大藤信郎賞が創設された。

 「のろまな爺」は、大藤が初めて試作した作品。都会へ出て来た年配の男が色気たっぷりの女にひと目ぼれし、財布をすられたのにも気付かずに追いかけるコメディー。男が昼寝中の馬子(まご)のはなちょうちんに乗るなど、ギャグが盛り込まれる。夜の場面は、フィルムが青く染色されている。

 「竹取物語」は千代紙を用い、日本では当時ほとんど例のなかった横長のシネマスコープサイズで製作されていた。見つかったのは竹の中からかぐや姫が現れる場面などで、テスト撮影した素材とみられる。

 安井さんは「現代のコンピューターを使ったアニメに比べて手作り感と人間味がある」と話す。神戸市長田区の神戸映画資料館で9月7日と8日、今回発見された両作を他の大藤作品と併せて上映する。【鶴谷真】

 東京国立近代美術館フィルムセンターの岡田秀則・主任研究員(映画史)の話 大藤の時代は、大人向けのシュールなアニメ芸術を評価する素地が国内になく、不遇の天才だった。今や世界的に評価される日本アニメ界の忘れてはならない先駆者であり、フィルムの発見は感動的だ。

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