上手出し投げで千代大龍(右)を下す白鵬=愛知県体育館で
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◇名古屋場所<7日目>
単独トップの横綱白鵬(28)=宮城野=は平幕の千代大龍を左上手出し投げで退け、7戦全勝とした。春場所からの連勝は昭和以降で単独5位の37に伸びた。大関稀勢の里(27)=鳴戸=は関脇豪栄道に寄り切られて3敗目を喫し、今場所後の横綱昇進はなくなった。横綱日馬富士は旭天鵬を送り出して6勝目を挙げた。他の大関陣は、琴欧洲が1敗を守ったが、琴奨菊は関脇妙義龍の注文にはまって2連敗し、鶴竜とともに5勝2敗となった。白鵬を、1敗で日馬富士、琴欧洲と平幕魁聖が追う。
敬愛する双葉山を超える歴史的白星。支度部屋に引き揚げてきた白鵬は目を閉じたまま、「ほんとに大きな白星になりましたね」。ひと呼吸置いて言葉を発した。
2度目の37連勝。双葉山が2度目の36連勝を成し遂げたのは69年前。以来、行く手を阻んできた前人未到の境地に、白鵬が足を踏み入れた瞬間だった。
この日に向けた戦いは5日目の夜から始まっていた。本来なら6日目に対戦する松鳳山の取組をビデオで研究するが、横綱が見つめていたのは稀勢の里対千代大龍戦。勝った千代大龍の動きを分析するためスローで何度も何度も再生した。
千代大龍の武器は強烈な立ち合い。初挑戦を受けた春場所は、その立ち合いを右で張りながら回り込んでかわした。この日は真正面から受け止めた。
「どういうタイミングでも備えがよかった。当たる瞬間、同時に右がすぐに入ったから。何だろう、立ち合いがずれたのかなあ。すかしたというか」。千代大龍のかち上げを完全に封じて右を差し、上手を引いた左から瞬時の出し投げ。完全に読み切っていた。
モンゴルで大学を運営する父・ムンフバトさんの教え子で、12日にモンゴルの例祭ナーダムに出場した力士が優勝。新横綱に昇進した。
インターネットで観戦したという横綱は「手に汗握る相撲。力強い。持ち上げて、落として勝った。うれしいね。興奮したなあ」と自分のことのように喜んだ。
モンゴル相撲は年に1回。「(大相撲が)年に1回なら50歳までできるけど」と冗談を飛ばしたが、年齢が問題なのではなく「最終的には心」という。心技体のうち心が8割を占めると公言する横綱。ここから先も自分との戦いだ。69連勝に向かって。 (岸本隆)
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