内容的には完全な負け試合だったが、グランパスは個の力で押し切った。選手の技術面では圧倒的に鳥栖を上回っているのに、それが試合に表れないのが歯がゆいし、今後の戦いにも不安が残る。
1番の問題は、明らかに運動量が少ないこと。いい攻撃、安定した守備ができない根本的な要因がそこにある。特に攻撃から守備への切り替えが遅い。例えば、グランパスの攻撃が止められ、鳥栖が大きくクリアし、もう一度グランパスがボールを持った場面。前線では必ず1人か2人、オフサイドのポジションに残っている。これでは次の攻撃をしようとしても、ゆっくりと攻めるしかなくなる。3年前にリーグ優勝した時とほとんどメンバーは変わっていない。しかし運動量はがくんと落ちている。年を取って動けなくなったのか、それとも意識が薄れてしまったのか。守備から攻撃の切り替えは感覚的な部分があるが、攻から守への切り替えは、意識しないと難しい。チームとしての統一感がないから、個の力では劣る鳥栖にパスを回され、苦戦するのも不思議ではない。 (愛知東邦大監督、元グランパスDF・藤川久孝)