「グルだったのか、お前等…」

二人を見やるや否や発せられた台詞、俺には一瞬二階堂の言っている事の意味がよく分からなかった。
今日は北山くんにご飯に誘われていて、俺の撮影が終わるのを待って二人で一緒に帰ったのだが。
途中で携帯を忘れてきたと北山くんが言い出して、まだ駅にも着いていなかった事もあって戻ると言うので、俺も一緒に戻ったのだ。
でもあるだろうと思っていた楽屋には無くて、他の部屋を見てくると言われ俺は楽屋で一人待っていた。

「‥ぇ、どーゆう…」
「嵌められたんだよ、俺達」
「、はめ、‥え?」

そこへ撮影が終わったのだとう、二階堂が慌てて戻ってきたから正直どうしようかと思った。
相手は俺が此処にいる事を知らなかっただろうし、どうやら藤ヶ谷くんに用があったみたいだったからそう告げれば。
すんなりと部屋から出て行ってくれそうだったのでほっとしたのも束の間。
何故か共に待っていた二人が一緒に戻ってきたから、当然俺は訳が分からず吃驚して。
でも二階堂は直ぐに状況が掴めたらしく、威嚇するみたいに二人を鋭い眼差しで睨み付ける。

「んな言い方すんなって、俺達はただお前達の事が心配で、」
「余計なお世話だって、そんなの」
「お節介って事かよ…。まぁそう思ってもいいけどさ、一体何があったんだよ、お前等」

鈍い俺でも流石にその台詞でなんとなく察しがついた、つい先日問われたものに似ていたから。
俺達二人がギクシャクしているのが気になって、その原因を問うためにわざわざこんな手の込んだ事をしたのか…。
二階堂に何をされても絶対に言うまいと心に決めた事を、無関係な人に話す訳にはいかない。
それにその事をもし話したとしても…それを話すには俺達が特別な関係にあった事から話さなければならない。
一つ話すのに何個話をしなければならないか、今回の事はそんな単純な事では無かった。

「何もねーよ、別に。ちょっと話さないくらいでそんな追求されなきゃいけないのかよ」
「や、ちょっとじゃねーじゃん?健永とかさ、明ら様避けてたし」
「っ…、すぐ、元通りになると思うから…もう、放っておいてよ」

別れたから距離を置いているだけ、普通のカップルだったらそれで済むはずの言い訳も俺達には使えない。
一方的なものだから揉める事は想定内、それでも頑なに拒むつもりだったが第三者の加入は予定外だった。
俺達は余りに一緒にい過ぎた、だから少し距離を置くだけも不信感を与えてしまったのだろう。
自分の日頃の行動を悔やまずにはいられなかった、でも傍に居たかったのだから仕方ない。
それに一緒に居たのは付き合う前からの事…俺達にとっては飽く迄も友情の延長みたいなものだった。
とは言え特別な感情が伴っていたのは事実、二階堂が忘れてしまっても俺はきっとこの気持ちを捨てる事は出来ないだろう。
そんなどうでもいい事ばかりが脳内を占拠してしまって、良い考えなんて何一つ浮かばずに。
どうやってこの場を切り抜けようかと思っていた矢先だった、痺れを切らした藤ヶ谷くんが口を開いて。

「つか聞くけどさ、お前等本当に俺達が何も知らないとか思ってんの?」
「‥、どーゆう意味だよ」

どうも言い方が癪に障ったらしく二階堂が不機嫌丸出しで問い掛ける、勿論相手の眉間にも皺が寄ったけれど。
一発触発しそうな二人を制すようにして、北山くんが真顔で口にしたのは。

「付き合ってんだろ?お前等二人」

俺達がずっと隠してきた秘密で、思わず二人で顔を見合わせてしまい直ぐに各々視線を逸らした。







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