池田信夫 blog 利他的な遺伝子
2011/11/04 04:59:00

[info]メカAG
※初出2007-04-29

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/5b3a2daecd4aa5db9cca0069d85c4b80

NATROMの日記は以前から読んでるけど、彼は自分ではトンデモ批判側のつもりでいるけど、彼って結構トンデモだと思うんだよね。なんとういか遺伝子原理主義?(笑
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070427#p1

| 自分のよく知らない分野(たとえば私にとっては経済学)について
| 二者が議論しているとして、どちらの言い分が正しそうなのか判別する
| 簡易的な手段はあるだろうか。私がよくやるのが、
| 自分がよく知っている分野(たとえば私にとっては医学、遺伝学、進化生物学)
| についての発言を調べてみるということである。
| もちろん、医学についてトンデモ発言する人が別の分野では正確な発言をする
| こともありうるので、あくまでも簡易的な手段に過ぎない。
| しかし、たとえば「エイズはエイズ菌によって起こる」などと自信たっぷりに
| 断言する人が別の分野について何か発言したとしても、
| その発言の正確性を疑っておくほうが賢い態度だと言えるだろう。

この考え方が俺に言わせればそもそもトンデモだ。間違ったことを言わない人間はいない。人間の知識には限りがあるからね。逆に言えば自分の気に入らない人間を「間違ったことを言ったことがある」という理由をつけて、好きなように否定できる。魔女狩りと同じで「こいつは魔女だ」と言いさえすれば、いくらでも魔女である理屈をつけられる。なぜなら自分が魔女でないことを証明できる人間などいないからだ。

彼は医者らしい。町医者で研究者ではないっぽい。何かと遺伝子の話題が好きで遺伝子専門家を自負しているのは大学の卒論でその手のものを扱ったかららしい。それは別にいいんだけど、ただどうも彼の言動を見ていると、教授に言われるままに手足となって研究しただけで、自ら深い洞察力を持っているようには感じられないんだよなぁ。彼の言動が一般向けの啓蒙書に書いてる域を出てないように感じるのは俺だけだろうか?

俺はもちろん遺伝子の専門家ではないし医学とも無縁だけれど、仮に俺がその手の話が大好きで一般向けのその手の本を読みあさっていればこの程度の内容は書けるだろうな、と思ってしまう。彼は自分の日記を一般向けに書いているだろうから、平易な話が多くなるだろうけれど、それなりにある分野を深く研究している人間なら、市販の啓蒙書からはみ出た内容がちらちらと見え隠れするものだと思う。彼の日記の場合それがない。

まあ余談はさておき、主張の正当性はあくまでその発言そのものか、あるいはそれと因果関係のある発言の妥当性のみによって判断されるべきだ。しかしその時問題となっている主張とは直接関係のない言動の粗探しをして、元の問題についても当人の発言の信憑性を疑う、というパターンの論法、平たく言えば揚げ足取り、を使う人はネットで少なくない。と学会の山本弘のトンデモ批判もその手のパターンばかりだ。確かにこの論法を使うと「楽」なんだけどね。しかしこれは禁断の技であって、これを使い出せばいくらでも自分の主張を正当化できてしまう。たとえそれば間違った主張であっても。

俺が、彼のこうした言動を理由に、彼の本職である医者としての能力にも疑いを抱いたら彼はどう釈明するのだろう?


こんなのものある。

■[科学]子の知能は両親の知能に近い このエントリーを含むブックマーク
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20050616

彼の主張の問題点は、知能を遺伝病に置き換えてみればよく分かる。遺伝病のうち研究が進んでいるものは確かに子供に遺伝する確率は数学的に計算できる。しかし同じような外見的な症状を示す複数の遺伝病があり、現時点の研究では個々の遺伝病の区別がつかない場合はそれはできない。

人間の知能も同じで、我々が知能と一口で呼んでいるものは複数の要素の集合体だ。外向的で頭の回転の速い人間の「頭の良さ」と、内向的で深く静かに研究するタイプの「頭の良さ」は違うし、ならば「外向的な頭の良さ」「内向的な頭の良さ」ならば一括りに出来るかといえば、その保証はない。我々の現時点での「知能」に関する認識など「高い熱が出る病気はすべて熱病だ」といってるレベルに過ぎない。

遺伝病の遺伝の確率が計算できるのは遺伝子の組み合わせと病気が1対1に対応していることが確定できるからだ。いいかえれば病名と遺伝子の組み合わせの関連を立証することが最大の難関。知能と遺伝の関係も同じで、その対応を証明することがもっとも重要な点なのに、それを「仮に知能が遺伝子で決まるなら~」という前提で「子の知能は両親の知能に近い」と主張しても、意味のある主張にはならない。こんなおおざっぱ考え方じゃ「あの家は悪魔付きだ」というのと変わらないだろうに。


で、ちょっと各論。どうもNATRONは愛国心と遺伝子を結びつけたことが気に入らないらしく、ヒステリックに必要以上に池田信夫に絡んでいるようにしか見えない。普通に読めばNATROMのいうところの

| 母親が自分を犠牲にして子を守る行動は、利己的な遺伝子によるものと考えられる。

の「母親が自分を犠牲にして子を守る行動」という利他的な部分を池田信夫は「利他的な遺伝子」と呼んでいるだけで、別に池田信夫は遺伝子の専門家でないし、彼の文章も遺伝子学の論文ではないのだから、何をどういう呼称で呼ぼうが、たいした問題ではない。単に呼び方の問題だけだからだ。

その証拠に池田信夫の文章全体は、この部分の呼称だけを置き換えれば特におかしなところはないはず。いや、もしあるならその部分こそNATROMは指摘すべきだろう。それを単に用語の使い方が専門家のそれとは違うから「けしからん。遺伝子というものを全く分かっていない。彼の主張はデタラメだ。ひいては彼の専門分野における発言も信用ならん」というのは、ヒステリーといわずしてなんというのやら(笑

> 愛国心についても、いったいなんでまた遺伝子レベルで説明をつけたがるのか理解できない。

普通に考えれば群れを作る生物は服従本能や群れを守る防衛本能があるのだから、人間の場合それを愛国心と結びつけることは純粋に科学的にはそれほど妙なことではないと思うけどね。これほどNATROMが反発を覚えるのは彼の思想的なものや、科学が政治的なものに利用されることへの警戒心のためだろう。

分からないではないが、だからといって屁理屈やヒステリックな揚げ足取りでそれを妨げようとするのは、科学的な姿勢からかけ離れている。彼がそういう主張(「科学を使って政治問題の一部である愛国心を正当化するな」)をしたいなら、科学とは切り離しイデオロギーの場で主張すべきで、彼が科学の言葉で屁理屈を並べ立てて抵抗するのは、彼自身が科学を使ってイデオロギーを主張していることになる。科学のあり方は科学の言葉を使って主張してはいけない。


追加
本質的でない下らない箇所の揚げ足取りをすれば、同じように揚げ足取りをされるのは当たり前なんだけどね。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20070429#p1

まあ揚げ足取りはそれで楽しいし知的なゲームとしては否定はしない。俺も好きだし(笑)。しかしそれと真正面からの反論は分けて扱わないとならないし、まして自分が揚げ足取りを始めたのに、相手が揚げ足取りで応戦してくると、相手を見下すのはどうかと思う。ゲームを楽しむなら対等な立場に降り立たないとね。結局NATROMの文章から伝わってくるのは愛国心に対する拒絶反応だけだ。しかし愛国心と遺伝子を結びつける考え方を科学の言葉では否定できない。

科学でないものは科学では否定できないのだ。それでもなんとか否定しようとすればNATROM自身が今やっているように揚げ足取りによる誹謗中傷合戦となる。この手の人間は無知である人間は誹謗されても仕方ないと考えているようだからね。

正しい反論をしたいなら相手の言葉ではなく相手の頭の中にある思考を推測しそれに対して反論しなければならない。相手が自分の思考をきちんと言葉にしている保証はないのだから。相手以上に相手の思考を理解してこそ、的確な反論ができる。逆に敢えて正しくないタイプの反論をしたいなら(要するに「煽り」ですな。俺の大好きな)、敢えて相手の言葉の中で相手の思想とは逆の意味に解釈できる部分を捜して反論すればいい。相手は「これは心外だ!」とばかり水を得た魚のように再反論してくるだろう。そうすればいつまでも楽しいゲームが続けられるという寸法だ。


追加2007.04.30

池田信夫の上記リンクのコメント欄に「NATROMの非建設的な議論」の例としてリンクが示されているので、転載。

http://www.misokichi.com/2006/03/post_139.html
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20040810#p1
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20060715#p1
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20060914#p1

なんというか彼の論法ってのは表層的な揚げ足取りに終始してるんだよね。そもそも彼の主張の根本は遺伝子学とは関係ないことが多い。今回の「愛国心への反発」みたいにね。遺伝子学をつかってイデオロギー「反愛国心」を主張しているのは彼の方だ。科学を使ってイデオロギーを主張するのをトンデモさんという。彼は自分はトンデモさんを批判しているつもりなのだろうが、彼自身もまたトンデモさんなのだ。トンデモ批判を行っている人間はミイラ取りがミイラになってることが多い。




追加2007.05.09
http://b.hatena.ne.jp/entry/4633356
| * 2007年05月05日 NATROM NATROM トンデモ 「彼は自分はトンデモさんを批判している
| つもりなのだろうが、彼自身もまたトンデモさんなのだ。
| トンデモ批判を行っている人間はミイラ取りがミイラになってることが多い」←はげしく同意。

NATROMは相変わらず分かってないな。上記の前段には「科学の言葉でイデオロギーを主張するのがトンデモさんである」という文章がある。少なくともその定義の下では、NATROMはトンデモだが俺はトンデモではない。俺は俺の主張を科学の言葉を使って行ってはいないからね。俺は徹頭徹尾イデオロギーとして自分の主張をしている。

相手の揚げ足を取ることに腐心していると、自分が転ぶという良い実例ですな。相手の文章は「相手は完璧な文章を書いているはず」という前提で読まなければならない。そのつもりで読んで初めて相手の文章の欠点が見定められる。最初から「相手は間違っている」という前提で読むと、どうしても読み込みが浅くなり、こうして浅はかな揚げ足取りをして醜態を晒してしまう。ま、俺もさんざんこの手のミスをしてきたからいえることだけどね(苦笑


追加2007.06.18
http://b.hatena.ne.jp/entry/http%3A//www.asks.jp/users/mechag/41645.html
| # 2007年05月05日 NATROM NATROM トンデモ 「単に呼び方の問題だけだからだ」
| ←私が何を問題にしていたのか理解していない。

そもそも問題など存在しないといってるんだけどね(笑)。NATROMはありもしない問題を作り出し騒ぎ立てるマッチポンプのようなものだ。

http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.asks.jp/users/mechag/69231.html
| * 2007年06月15日 NATROM NATROM トンデモ 「鳥が人間を批評するのは許されない」。
| 誰もそんなことは言っていないように思えるが、そんな解釈もあるんだね。
|「俺は俺の主張を科学の言葉を使って行ってはいないからトンデモではない」
| ってのもあったな。

言ってないように思えるのはNATROMのと学会および山本弘に関する単なる認識不足ですな。まあ猛進している人間はあばたもえくぼに見えるのだろう。

「トンデモさんとの論争は不毛だから自分はトンデモさん相手に論争はしないよ」と、山本弘およびと学会のメンバーが考えるのは自由だけれど、それを正当化するのに鳥とバードウォッチャーの関係を持ち出すのは、「お遊び」の域を超えていると俺は思うね。

トンデモか否かというのは要するに何をトンデモと定義するかなんだよね。これは山本弘にもいえることだけれど、定義をその場その場で都合のいいように変えていることが多い

ある時は「トンデモ本とは必ずしも疑似科学本をさすわけではない」といい、別な時にはあからさまに「あの本はトンデモ本だからまともに取り合うべきじゃない」と疑似科学批判に活用する。と学会が批判されると「と学会はトンデモ本を楽しんでいるだけ。むしろトンデモ本がもっと増えほしい」と批判をかわし、一方で「世の中にはトンデモ本が多すぎて科学がないがしろにされている」と説く。

言葉は所詮は多義的だから複数の意味で同じ言葉を使うのは悪いことではない。問題なのは言葉の多義性を悪用して自分に対する批判をかわそうとすること。ちなみに俺は批判をかわそうとはしてないつもりだけどね。科学の言葉を使っていようがいまいが、俺の主張自体が気に入らないという人は、それはそれでOK(笑)。

まあと学会内部でも不協和音が目立つように思う。原因は山本弘の疑似科学批判への暴走だろう。唐沢俊一とかはと学会が掲げていた「トンデモ本を(批判するのではなく)楽しむ」に現座も近いが、山本弘は最近は疑似科学の浸食から科学を守る勇者気取りだ。そして志水一夫は霊能者宜保愛子擁護だし。

別にと学会が一つの思想に統一される必要はないけれど、山本弘が「と学会会長」の名で書くと学会の著書の前書きはいつも疑似科学反対の立場が明確に示されている。それと本文の唐沢俊一や志水一夫の記事との不整合は本人たちも感じていたのだろう。最近はばらばらに本を出すことが多い。「と学会にはオカルト擁護派もいる」というなら(これ自体は嘘ではないが)、山本弘はと学会のメンバーの一人として疑似科学批判をするならいいけれど、会長の肩書きで疑似科学批判をするのはダメだろう。


参考サイト:
[ふしぎテクニック][実験]トンデモに騙されないテクニックとは。 - 絶叫機械+絶望中止
http://d.hatena.ne.jp/screammachine/20070508#p1

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