夏山シーズンがこの週末の3連休から本格的に幕を開ける。今年の話題は何といっても、世界文化遺産に登録された富士山だ。1日の山開き以降、例年以上の登山者が押しかけ、にぎわっている
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とりわけ「弾丸登山」の人たちだ。山頂で日の出を迎えるために前の晩から登り始める。山梨県富士吉田市が登山口でカウントしたところ、夜間の入山者はいつもの年の1・8倍に増えていたという。登山者全体の15%ほどになる
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富士はこと高山病では、日本一危険な山である。山頂の気圧は低地の3分の2しかない。富士の中高年登山者は、普通なら酸素吸入が必要なほどの低酸素状態になっている―。鹿屋体育大の調査を以前この欄で紹介した。58〜69歳の7人に実際に登ってもらい、測定した結果である
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その山に夜を徹して登る。山慣れた人なら決してしない登り方だ。こんな状態でシーズンのピークを迎えたら、救護所は高山病の人であふれ返るだろう。心配なことである。夜間の登山を規制できないか、地元は検討を始めている
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弾丸登山を数年前に敢行した友人から様子を聞いた。8合目から上、登山道の脇にへたり込み、横たわる人を何人も見かけたという。「さすがに疲れたが登れてよかった」。友人は強がっていたけれど、遭難と紙一重。褒められる登り方ではない。山はゆっくり登ってこそ。富士に弾丸は似合わない。