2013年07月03日 (水)狙われる高齢者の財産 実態は


あなたや、家族の財産が狙われています。初めての消費者白書によると、「架空の投資話で財産を奪われた」などの高齢者からのトラブル相談が、昨年度、20万件余りに上っています。「被災地の復興支援」など、社会貢献の意識を利用して勧誘する新たな手口もあります。きょうは実態を、あすは対策についてお伝えします。

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トラブルの始まりは、「電話」が目立ちます。ある60代の女性のケースでは、電話をかけてきた詐欺グループの男は、証券会社の社員を名乗りました。
130703hakusyo10.jpg女性の自宅には社債の書類が入った封筒が届いていて、男は、国が管理するものだと安心させる一方、購入すれば5倍から6倍の値段で買い取ると巧みに持ちかけてきたといいます。女性は架空の会社の社債を購入させられ、1000万円をだまし取られました。130703hakusyo15.jpg先月閣議決定された初めての「消費者白書」では、こうした高齢者の財産被害などの消費者トラブルの実態を特集しています。
130703hakusyo17.jpg白書では、全国の窓口への相談件数が、全体では平成16年度の192万件をピークに年々減少し、昨年度には約84万件になった一方で、65歳以上の高齢者の相談件数が、平成20年度以降増加し、昨年度は20万件余りに上るとしています。
高齢者の相談で最も多いのは、金融の投資商品を巡るトラブルで、4万件を超えています。具体的には、「必ずもうかる」という業者の話を信じて投資をすると、やがて業者と連絡が取れなくなるといったもので、こうした被害を救済すると持ちかけて、さらに手数料名目などで金銭を支払わせる「二次被害」も目立つとしています。
130703hakusyo18.jpgさらに白書は、「社会の役に立ちたい」という高齢者の意識につけ込んだ新たな手口があると指摘しています。「病院への投資」や「被災地の復興支援」など、社会貢献の意識を利用して勧誘してくるというのです。
130703hakusyo20.jpg独り暮らしの80代の女性は、以前、病院などへの出資を繰り返し持ちかけられました。
130703hakusyo21.jpg数年前に入院してから医療の大切さが身にしみていた女性は、「病院経営の役に立ちたい」と趣旨に賛同し、最初は数百万円を手渡しました。担当者はその後もたびたび訪れ、パンフレットを見せながら年利4%といった利率の高さを強調したといいます。すっかり信じ込んだ女性は、担当者から指示されたとおり、銀行の窓口で「老人ホームを買う」などと言って預金を引き出し、結局、10回以上に分けて、合わせて1億円余りを渡してしまいました。
130703hakusyo23.jpgしかし、この出資の話は病院の信用を悪用したうそで、ことし2月、東京の医療法人の元幹部らが詐欺の疑いで逮捕されました。元幹部らは「東日本大震災の影響で人工透析を受けられる病院は不足していて、社会貢献にもつながる」などと説明していたということです。
130703hakusyo29.jpg全財産を失った女性は、今は病院に行くのを我慢し、食事も切り詰めた生活を送っています。女性は「以前、入院していたということが大きく、何かは病院の役に立つのだろう、そういう気持ちだった」と話していました。
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【取材後記】
1億円をだまし取られてしまった女性。みなさんは、資産家が投資に失敗したと思われるでしょうか。事実はまったく違います。定年まで勤め上げ、こつこつと貯めてきたお金だったといいます。女性は全財産を失い、毎月の年金以外何もなくなってしまい、今後の生活への不安を口にしていました。
決して、一部の裕福な人の、影響が限定的な被害というわけではありません。ごく身近な高齢者が、老後の生活資金を根こそぎ持って行かれ、未来を奪われるという悪質なものなのです。
女性は、どうしてだまされたのか分からないと振り返っていましたが、原因の一つには、「独り暮らし」があると思います。女性は、それまで何をするにも自分一人で決めてきたといいます。逆に言えば、相談する人がいなかったのです。女性は、誰かに相談できていればと悔やんでいました。
女性のもとにはその後、被害を取り戻すという別の業者からの電話がたびたびあります。まさに、被害を救済すると持ちかけて、さらに金銭を支払わせる「二次被害」の始まりです。しかし女性は、今はそういう電話には一切耳を貸さず、すぐにきっぱり断っているということです。

高齢者の独り暮らしには特に注意が必要です。あすは対策をお伝えします。ぜひ読んで、親や知り合いの高齢者などに伝えていただき、実践につなげ、被害を食い止めていければと思います。

投稿者:三瓶佑樹 | 投稿時間:06時00分
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