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「新マン」さん(ショートショート)
作者:練り消し
「はい、カーット!」


本日の撮影が終わり、出演者達が続々とスタジオから引き上げて来る。


「お疲れ様です!お疲れ様でーす!」


番組ADが労いの言葉を掛けながらそんな彼らを出迎える。

と、


「あ、どうも新マンさん、お疲れ様です!」

「新マンさん、お疲れ様でーす!」


そこへ現れたのはこの番組主役のヒーロー、『新マン』さん。


AD 「あ、どうも新マンさん。お疲れ様です!」

新マン 「ん、お疲れ」


さすが主役相手にはADの応対にも力が入るが、
するとふと、
その新マンが遠くの方に何かを見付けた。


新マン 「何だあれは・・・?」

AD 「え?」


ADがその方向に目を向けると、
番組担当のディレクターと新マンさん専属スタイリストの女性が
何かを話している。


新マン 「何を話しているんだ・・・」

AD 「さあ・・・」


見ているとどんどんディレクターの口調が厳しくなって来る感じで、
スタイリストさんはかなりの叱責を受けている様子。


新マン 「オイオイ、一体何なんだ」

AD 「あ、新マンさん・・・」


新マンさんは我慢出来ずに二人の方へと駆け出して行った。


新マン 「オイオイ、一体何なんだこれは。え?」

D 「あ、新マンさん・・・」


やって来た新マンにディレィターは何か気まずい雰囲気。
片やスタイリストさんの方はもう完全に涙目だ。


新マン 「何なんだこれは?え、オレの事なのか?」

D 「あ、いえそれは、そんな事は・・・」


新マン 「ハッキリしろ!オレの事なんだろ?」

D 「ええ、まあ。その・・・」


問い詰められて、ディレィターもやっと二人で話していた内容を
新マンに打ち明けた。


D 「あの、その。非常に言い難いんですが。新マンさんのその・・・」

新マン 「オレの何だ?」


D 「新マンさんのその、頭の後ろのビラビラの部分なんですが・・・」

新マン 「頭の後ろのビラビラ・・・?」


D 「ええ、その頭の後ろのビラビラなんですが・・・」

新マン 「オレの頭の後ろの、このビラビラが一体何だって言うんだ・・・!?」


D 「いえその、視聴者からの指摘で、その新マンさんのビラビラが、
   横の方に倒れて来てるって・・・」

新マン 「何だって・・・?」


するとディレィターは既に用意してあったのか、
具体的に写真を持ち出して新マンにその問題箇所を指摘して見せた。


挿絵(By みてみん)


新マン 「オイ、何だこれ・・・」

D 「ええ、初代ウルトラマンさんの方と比べて貰えれば一目瞭然だと思うんですが、
   初代ウルトラマンさんの時はそんな事無かったじゃないかと・・・」


新マン 「・・・・・・」


その写真を見て、新マンの表情がどんどんと青ざめて行く。


D 「まあ確かにみっともないと言えば、みっともな・・・」

新マン 「オイッ!」

D 「わー、すいません!」

新マン 「みっともないってなんだ!みっともないって・・・!」

D 「いえその・・・」


新マン 「・・・・・・・」


新マンはもう、込み上げる怒りにワナワナと肩を震わせつつ、


ピコン、ピコン、ピコン・・・・・・・。


D 「わー!し、新マンさん・・・!落ち着いて・・・・・!」


しかしふと、

新マン 「ん・・・?」

と、
新マンはある事に気が付いて再びディレクターに向き直って話しを続けた。

新マン 「あれ、けどお前この写真・・・」

D 「はい・・・?」


新マン 「お前これ、合成だろ?」

D 「あ、いえその・・・」


新マン 「合成だろ!?こんな写真知らんぞ。ああ?」

D 「いえ、そのまあ・・・、すみません。
   ちょうどいいサンプルが無かったもので・・・」


新マン 「あ?困るんだよ、そういうの。それで見た方が直ぐ、
     “ヤラセ”だとか騒ぎ出すんだから」

D 「はい、それはどうもすみません。」


新マン 「頼むよ、ったく・・・」

D 「はい、でもその・・・、問題のビラビラの部分なんですが・・・」


新マン 「アッ!?何だって!?」

D 「あー!はい、すみません!すみません・・・!」


新マン 「大体ビラビラがって、これお前・・・、衣装製作の方の問題だろ!」

D 「え、ですからその、担当の彼女とですね。その・・・」


新マン 「オイオイ何を言っているんだ!お前そんな事、
     初めからわかってんだよ!
     だからずっと直そうとしてんだよ!このビラビラ!
     けど幾ら直そうとしても倒れて来ちゃうんだよ!
     あ?」

D 「あー!はい、すみません!すみません・・・!」


新マン 「・・ったく、え?これお前、一体誰のせいだと思っているんだ!
     こっちのせいか?あ、違うよ、
     金だよ、金。
     お前らがケチって碌な予算組まないから、
     それで他の怪獣やミニチュアにしたって、
     雑な物ばっかしか作れないって、
     みんな頭に来てんだよ!
     あ?」

D 「あー!はい、すみません!それはどうも、
   大変すみません・・・!」


新マン 「すみませんじゃないんだよ!
     あ?
     謝るくらいならもっと予算を回さんか、予算を!
     それが誠意ってもんだろ、違うか?」

D 「それはどうも、はい・・・・・」


新マン 「はいじゃないんだよ!
     言葉だけ幾ら謝ったって、
     どうせお前達、悪気なんてこれっぽちもないんだろ。
     ああ!?」

D 「は、はい・・・・・」


すると、
ディレクターは何やら、
体の下の方で新マンの片手を掴んでゴソゴソと・・・。


新マン 「ん・・・?
     何だこれ・・・・・」

D 「いえその、少ないですけど、どうぞこれ・・・・・」


新マン 「オイ!貴様ァ!このオレを一体誰だと思ってるんだ!」

D 「あー!はい、はい・・・・・」


新マン 「お前こういうのが一番困るんだよ!え?」

D 「え、ええ・・・・・」


新マン 「例えば総会屋だとか暴力団への不正利益供与だとか、
     捕まってるのはいつも脅されて金を払ってる方の側で、
     脅している方の側が捕まったなんてニュースは全然聞かんだろ!
     ええ!?
     麻薬とかだって、元締めの方が挙げられたなんて全然聞かんぞ!
     あ?
     こっちが捕まるだけなんだよ、こんなの!」

D 「あー、はい、はい・・・・・」


新マン 「え?あれ、お前・・・、
     お前もしかしてこのオレに弱み掴ませ様として・・・・・」

D 「あー!いえいえ、そんな事!とんでもありません!とんでもありません!」


新マン 「この野郎~・・・」

D 「あー!
   新マンさんそれは・・・!それだけは・・・!
   腕をクロスさせるのだけは・・・!」


新マン 「あ、何だと?」

D 「はい!どうも申し訳ありません・・・」


新マン 「ああ!?この野郎~・・・!」

D 「はい、どうもすみません、すみません・・・」


新マン 「ったく、このォ~・・・!」

D 「は、はい・・・」


新マン 「大体お前達のその、“新マン”って呼び方もさ?」

D 「はい・・・?」


新マン 「どうすんだよこんな、被っちゃってさ。あ?」

D 「あ、いえその、それは・・・」


新マン 「一応呼び名はその“新マン”って事になってるけどもさ、
     新しいって割りに、何か地味じゃね?」

D 「あ・・・、それは・・・・・」


新マン 「お前達が金使わねえからだろ!
     オイ!」

D 「あー!すみません!すみません・・・!」


新マン 「だからだろ、このビラビラも!人気の無さも!」

D 「は、はい・・・!」


新マン 「ああ?知ってんだぞ、実は数字取れてないって。
     この前、聞いちまったんだよ、
     重役会議でプロデューサーが話してんのを」

D 「そ、それは・・・」


新マン 「ああ?どうしてくれんだよ、オレのせいか?オレのせいなのか?
     ああ!?」

D 「い、いえ決してそんな事は・・・。
   新マンさん専門の殺陣師ですし、動きが全然違いますから。
   それは勿論、見る人が見れば・・・」


新マン 「おお、そうだよ。
     こっちだって毎日大汗掻きながら頑張ってんだよ。
     自分でだってそんな、人気無いのも薄々感じてるしさ」


D 「い、いえそんな・・・」


新マン 「けど何だよ、お前達が“やってくれ”って押し付けて来た、
     例のあの“流星キック”って・・・。
     “絶対ウケますから!”って、
     で、実際にやって見たらばさ、
     え?
     飛べるウルトラマンがキックなんて全然意味無いじゃないかなんて、
     ええ!?
     どうしてくれんだよ、オイ!」

D 「あー!すみません!すみません・・・!
   わかってますハイ、その事は・・・・・。
   勿論反省して、また今、新しいの考えていますから、凄いの」


新マン 「凄いの?」

D 「ええ、今度また新マンさんに新しい武器が付きますから。
   ウルトラブレスレットって、
   凄い強いヤツで、
   それで凄い、宇宙大怪獣って、
   とんでもないバケモノ怪獣をやっつけますから」


新マン 「ほんとか?」

D 「ええ」←(但しその前に一度ボロ負けさせる)


新マン 「全くほんと、頼むぜオイ。
     オレは本当は“新マン”なんて呼ばれ方も好きじゃないんだよ。
     真の“マン”はたった一人でいい。
     違うか?」

D 「ええ全く、その通りです」


新マン 「オレ達がそれをやる。
     そうだろ?」

D 「仰る通りです。任せて下さい」

新マン 「よしよし」←(後に“ジャック”と命名される)


D 「実はもう最終回のシナリオも考えてあるんです」

新マン 「ほう、どんなのだ?いいのか?」


D 「はい、もちろん新マンさん大活躍で、
   敵、強いの二体が相手で、
   その内の一体はあの、初代ウルトラマンさんを倒した、
   あのゼットンが相手ですから」

新マン 「え・・・!?お前、ゼットンって、ゼットンはヤバイだろ。
     オレもゼットンだけはちょっと、
     流石に自信が持てんぞ・・・?」

D 「大丈夫です。その、ブレスレットありますし、
   それともう一つ、
   ゼットン用に新マンさんに必殺技、また用意しますから」


新マン 「おおッ!新必殺技か・・・!
     しかし大丈夫なのか?
     もう流星キックの二の舞はゴメンだぞ」

D 「はい大丈夫です。ゼットンのヤツには光線技が効きませんから。
   初代さんが考え付きもしなかった様な斬新な方法で新マンさんが
   ヤツを倒す展開になって、
   それで当然、新マンさんスゲーってなりますから」


新マン 「おおッ!何だやれば出来るじゃないか。
     そうだよ、
     初めからそうしてくれればいいんだよ」

D 「はい、どうもありがとうございます。
   これからもよろしくお願いします!」


新マン 「あっはっは!何だこの野郎~・・・、ジュワッ!」

ビーッ!

D 「ぎゃーッ・・・!!!」

新マン 「あー!いかんいかん、つい・・・」








その後、

最終回にて新マンがゼットンを倒す為に使った必殺技。

「ウルトラハリケーン」



この技の微妙さに付いては・・・、

見た人の判断にお任せするとしよう。

(結局ゼットンを直接倒したのはスペシウム光線・・・、え?)


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