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福島原発元作業員が提訴 雇い主に3000万円請求 仙台地裁

 福島第1原発の廃炉関連作業に従事したが、危険手当や合意した賃金が支払われない上、違法に解雇されたとして、元作業員で東北の40代男性2人が12日、雇い主だった宮城県亘理町の業者に計約3000万円の支払いを求める訴えを仙台地裁に起こした。
 訴えによると、2人は原発事故後の2011年7月、業者と雇用契約を結んだ。福島県広野町のJヴィレッジスタジアムから原発構内などへタンクローリーで軽油を運搬。基本給として1日2万5000円の賃金を受け取ることで合意した。
 原発構内への運搬は放射線被ばくを伴うため、2人は防護服などを身に着け、汚染されたタンクローリーに軽油を入れ替える作業などをしたが、危険手当は支払われなかった。
 基本給についても業者側が賃金をカットし、昨年10月に1日1万6000円への引き下げを通告された。2人は撤回を迫ったが、同11月10日付で解雇された。解雇の理由は明らかにされなかったという。
 元作業員側は「業者は危険手当を不当にピンはねし、雇用契約で確定した労働条件を守らずに賃下げした。解雇は無効だ」と主張している。
 業者は「違法なことはしていない。訴状を見て、弁護士と相談する」と話している。

◎「使い捨て労働者なくす」

 「使い捨てにされる労働者をなくしたい」。福島第1原発事故の廃炉関連作業に携わり、仕事を失った元作業員が提訴の理由を語る。
 2011年3月の原発事故後、男性の1人に電話があった。「原発に軽油を運ぶ仕事をしないか」。知り合いの宮城県亘理町の業者からだった。
 家族の反対もあり、男性は3度目の誘いで応じた。「放射能の不安はあったが、同じ東北の人間として役に立てるかもしれないといった使命感が湧いた」と言う。
 知人男性に声を掛けた。知人男性は「1日2万5000円を受け取れるということで、原発に入る覚悟を決めた」と振り返る。
 11年7月以降、2人は福島県広野町を生活拠点にして軽油を原発へ輸送した。軽油は発電機やダンプ、原発関係者の移動車両などに使われた。
 知人男性は建屋付近にも足を踏み入れた。「どれだけの線量を浴びていて、将来的に体がどうなるのか」と身を案じたという。
 昨年10月、2人は軽油運搬に関わる東京の業者から「今までの給料は出せない」と言われた。解雇を危惧し「新しい作業員が来るのか」と聞くと、業者は「来る」と答えた。業者からは念書も求められ、「仕事で放射能を浴び、健康被害が起きても会社を訴えない」と記したという。
 男性は「私たちが行動を起こしたことで、少しでも原発労働者の条件が改善されれば」と望む。


2013年07月13日土曜日


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