「グループ各社の現状把握、サポート態勢を強化する」と山本氏
名古屋鉄道は六月末の定時株主総会後の取締役会で、山本亜土副社長が社長に昇格する人事を内定した。山本氏は谷口清太郎氏以来十五年ぶりのプロパー社長となる。世界同時不況、トヨタショックに代表される東海地方の経済不況真っ只中の登板。少子高齢化など鉄道事業を取り巻く環境は厳しさを増す一方、長年の経営課題となっている、グループ会社の収益力向上も道半ばだ。山本氏に今後の経営方針について聞いた。
―昨秋以降の米リーマンの破たん、世界同時不況、トヨタショックの影響は出ていますか。
「鉄道は、不況に強いという定説があったが、今はそんなことはない。特に年明けから輸送人員は大きく落ち込んでいる。一年を通じてみれば、かろうじてプラスを維持したが、下半期(〇八年十月―〇九年三月)は前年同期比でマイナスとなってしまった。上半期の<貯金>をかなり取り崩してしまった。まずはメーカーさんの非正規従業員の減少の影響があるのか、週末の外出を控えている影響なのか―など分析しなければならない」
―「名鉄グループ新三カ年経営計画」(〇九年度―二〇一一年度)の中で、グループ企業の基盤強化、経営体制の強化を掲げています。
「近く『グループ経営改革委員会』を設置するが、同委員会の役割はグループ会社の経営改善の進ちょく状況を日常的に把握するほか、本体と当該グループ企業が協力して経営再建を図ることをめざすものだ」
「昨年も『グループ本社』という考え方で組織改正を行った。これまで名鉄(本体)はグループ企業に対して『がんばれ』『がんばれ』というだけで、各社の現状の把握、サポート態勢が不十分だった」
―人事交流、人材育成についても改革を検討しています。
「グループ会社からの要請に応える格好で本体から経営幹部層を中心に派遣していたが、これからはもっと若い時に『その道のプロ』になってもらうことを目的に、本体からグループ会社に派遣する。その後も流通なら流通系の会社で異動してもらうことで、その道のプロをめざしてもらう」
―グループ会社の社長を含めた若返りも大きな課題です。
「例外もあるし、内規を変えたりするようなものではないが、(事実上の社長の定年内規となっている年齢)六十七歳から徐々に従業員と同じ六十五歳になっていくと思う。競争が激しい時代、年次の逆転などもこれからはもっと出てくる。もう、そういう時代になっている」
<プロフィル>やまもと・あど 1971年(昭和46年)早稲田大学第一政治経済学部卒、同年名古屋鉄道入社。01年取締役秘書室長兼総務部長、04年常務、06年専務、08年6月から副社長。09年6月社長就任予定。趣味はゴルフ。岐阜市出身。60歳。