「課題を一つひとつ解決し、『輸送品質』を高めたい」と話す山本社長
名古屋鉄道は、今3月期、3カ年中期経営計画の最終年度を迎える。東日本大震災の影響で連結純利益の目標は未達になりそうだが、有利子負債の削減目標は前倒しで達成した。当面は名鉄百貨店の黒字化が課題となる。社長として3年目に突入した山本亜土社長に、鉄道事業の震災の影響と展望、名鉄百貨店の方向性などを聞いた。
―中期経営計画の仕上げ。手応えは。
「ICカード乗車券『マナカ』の導入と利用拡大、ワンマン運転の拡大など、着実に取り組んできた。計画に掲げた今期純利益150億円という目標は、東日本大震災の影響などで残念ながら、57億円にとどまる公算が大きい。しかし、課題であった有利子負債残高については、今年3月末時点で6547億円まで削減した。今期末までに6800億円という計画に対して、前倒しで達成することができた」
―グループ最大の課題ともいえる名鉄百貨店の再建は。
「ヤング館を閉鎖しヤマダ電機を核テナントとして誘致するなど、収支構造の改革に取り組んでいる。6月末に佐藤健名古屋鉄道専務が名鉄百貨店副社長を兼務する陣容をひいた。さらに名鉄から、役員を含めて実務部隊10人程度を百貨店に送り込んだ。鉄道と百貨店が一体となって改革を進めるつもりだ。今期は経常損益ベースで黒字化することを目標にしている」
―本業である鉄道事業の震災後の輸送状況は。
「6月は、前年同月とほぼ同じ水準まで回復した。夏休みにどれくらい人が動くか、注意深く見ていくが、年度当初に覚悟していたほどには悪くならないのではないか」
―今後の取り組みは。
「この春のダイヤ改正で、朝のラッシュ時に名古屋駅に入る列車本数を減らしたことで、さまざまな原因で発生する数分程度の遅れがほとんどなくなった。鉄道事業者にとって最重要課題のひとつである、定時運転のレベルを引き上げることができたと思う。こうして課題を一つひとつ解決し、『輸送品質』を高めたい。鉄道のイメージが良くなれば、名鉄グループ全体のイメージアップにつながり、中期経営計画の目標達成に追い風になるだろう」