最近探求しているテーマに「ネット上の誹謗中傷にまつわる問題をどう解決するか」というものがあります。「誹謗中傷をする人たちは一定数存在するよ!考えるだけ無駄だよ!」みたいな意見もわからんでもありませんが、それでは問題解決にならないので、ぼくは無謀でもアクションを取りたいと考えます。
解決にあたって、どんなアプローチがあり得るのでしょう。3つの切り口で整理してみました。
1. 仕組み(アーキテクチャ)的解決
まず考えられるのは仕組みレベルの解決策。よりカッコよく、アーキテクチャといってもよいでしょう。
仕組み的な解決の例としては、下記のようなものが挙げられます。
・インターネットを完全実名性にする
・「サイバー侮辱罪」を制定する
・いじめと同様、加害者を積極的に警察に引き渡していく
・フェイスブック(英国)のように「パニックボタン」を用意する
・誹謗中傷と見られる言葉を投稿する際に「あなたのIPアドレス、住所は記録されています」と表示する
・そもそも誹謗中傷ワードを一切投稿できないようにする
・誹謗中傷を投稿すると、警察のデータベースにIPが自動で記録される
などなど。ちょっとラディカルなものも含みますが、あくまで思考実験です。
こういった仕組みレベルの解決策は、範囲が広範であるため効果も大きいです。ただし、こういった施策は、やはり限定的に機能すると考えるのが現実的でしょう。
つまり、いくら「ネットを完全実名性」にしたところで、その網の目をかいくぐった「アングラサイト(ってもう言わないか…)」が登場してくることが想像できます。
仕組みは仕組みを用いている以上、どこかに穴が発生します。効果は大きいですが、仕組みだけで十分な問題解決になると考えるのは、やや安直でしょう。
2. 倫理的解決
そもそも、「誰かを誹謗中傷すること」は、「人のものを盗んではいけない」「人を殴ってはいけない」といった行為と同レベルの「悪いこと」です。
「誰かを誹謗中傷すること」が「善いことである」考えている人は、ほとんどいないでしょう。もしも「善いこと」だと思っていたとしても、それは「本当は悪いことだけど、これこれこういう理由で善いことになる」という論理が介在しているはずです。「自分を守るために、あいつを殴ったんだ」という「正当防衛」は、まさにこの論理です。どんな人でも、根源的には「誰かを誹謗中傷すること」は悪いことだと考えていると、ぼくは考えます。
となると、誹謗中傷を行う人たちに対しては、「なぜあなたは誹謗中傷という『悪いこと』をするのか?」という問いに向き合うことで、その暴力性を下げることが可能だと思われます。
「誹謗中傷」を行う場合は、多くの場合本人が「弱さ」を抱えているものです。「あいつはバカだ、死ね」と語る彼・彼女の内面には、「嫉妬心」や「復讐心」といった悪感情が観察されるでしょう。
このとき、うまく問い(「なぜあなたは誹謗中傷という『悪いこと』をするのか?」)を投げかければ、彼らは誹謗中傷を行う自らを省みることができます。彼・彼女が、自分の弱さに気づいたとき「あれ、わたしなに不毛なことやってるんだ?」と、自分の行いに立ちかえることができるはずです。
たとえば、仕組みとして、うまく「問い」を投げかけることができたら面白いですね。「死ね」と投稿すると、システム的に「この投稿には誹謗中傷ワードが含まれています。なぜこの言葉を用いたのですか?」と問いかけが出てきて、その理由を選択しなければならない、とか。
ごちゃごちゃと書いてしまいましたが、もっと端的にいえば、「面と向かって言えないようなことは、ネット上でも言わない」という規律を個々人が身につけていけば、問題の大部分は解消されるでしょう。これはそんなに難しい話ではないと考えます。
倫理的なアプローチは、もっとも根本的で、もっとも効果の高いものだと考えます。ぼくら一人ひとりが「面と向かって言えないようなことは、ネット上でも言わない」ようになることは、そう難しい話ではないのではないでしょうか。
夢見がちだと言われそうですが、こんな野蛮なこと、50年後もやられているとは思えないんですよねぇ。「魔女狩り」という常識が廃れたように、「ネットの誹謗中傷」も廃れるとぼくは予想します。
また、社会的に「ネットで誹謗中傷を行うような人間は未熟な子どもである」という認識を強めることも、誹謗中傷を無力化するアプローチになるでしょう。
こういう認識の元では、攻撃を受けた人は「あぁ、未熟な子どもに絡まれてしまった。彼らが『卒業』することを期待して、静観しよう」と感じることができます。対等だと思うからダメージが大きいわけで、うまくレイヤーを作り出せば、攻撃力を落とすことができるでしょう。
もっとも、これは傲慢な考え方ですから、問題もあるかもしれません。…まぁ、実際他者を批判する際に誹謗中傷を交える人は、どう考えても「未熟」なわけですし、現実的にはこういう理解が促進していくような気もします。少なくともぼく個人は、ぼくに対して罵詈雑言を投げつけてくる人を「あぁ、この人は未熟なんだなぁ」と思ってしまう思考回路ができています。
3. メンタル強化的解決
これはすでに試みられていますが、発信者のメンタルを強化することもまた、誹謗中傷問題の解決策の一つでしょう。
ぼくはすでに、だいぶ図太くなったので誹謗中傷は気にならなくなりました。誹謗中傷による精神的ダメージは、自己鍛錬によって軽減できるということです。
「どういう思考回路をもてば、誹謗中傷が気にならなくなるか」を共有し、個々人が鍛錬していけば、誹謗中傷に心を痛める発信者も減っていくでしょう。
ただ、これは痛みを伴いますし、すべての人が身につけられる技術でもないので、効果は限定的であることを忘れてはなりません。
なお、この思考回路については以前詳しくまとめております。誹謗中傷に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。ぼくはこう考えるようになってから、炎上が気にならなくなりました。
1. 何かを変えようとしたら、必ず批判が起きる
2. 本当に新しいものは、同時代の人には理解されない
3. 叩かれれば叩かれるほど、一流の人たちに近づく
というわけで整理してみました。「ネットの誹謗中傷にまつわる問題をどう解決するか」。ぜひみなさんのご意見をください。これは非常に重要なテーマです。