7月12日の海外株式・債券・為替・商品市場
(ブルームバーグ):欧米市場の株式、債券、為替、商品相場は次の通り。
◎NY外為:ドル上昇、米緩和縮小の観測強い-対円99円前半
ニューヨーク外国為替市場ではドルが大半の主要通貨に対して上昇。米金融当局は欧州中央銀行(ECB)よりも早期に緩和策を解除するとの見方が背景にある。
ドルは対ユーロで週間での下げ幅を縮小した。米フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁は債券購入を9月に縮小し始めるべきだと述べた。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が10日に債券購入のペースが近い将来に減速されることはないと示唆したことを受けて、ドルは過去2日間は下落していた。格付け会社フィッチ・レーティングスによるフランス格下げやポルトガルの政局不安を背景に、ユーロは下落。
野村ホールディングスの外国為替ストラテジスト、チャールズ・サンタルノー氏(ニューヨーク在勤)は電話インタビューで、「緩和縮小は年末前に検討されるとの見方に変わりはない」と指摘。「成長の源や労働市場改善の兆しといった、あらゆる細部に注目が集まるだろう」と述べた。
ニューヨーク時間午後5時現在、ドルは対ユーロで前日比0.2%高の1ユーロ=1.3067ドル。前日は一時1.3207ドルと、6月21日以来の安値水準をつけた。ドルは対ユーロで週間では1.8%下落。ドルは対円でこの日は0.3%高の1ドル=99円22銭。週間では2%安。ユーロは対円でほぼ変わらずの1ユーロ=129円66銭。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル指数 は0.3%上昇の1037.63。前日は1.4%下げていた。
「健全な措置」ドルは主要16通貨の14通貨に対して週間ベースで下落。バーナンキ議長の発言を受けて、当局が債券購入プログラムを減額するとの観測が後退した。議長は「予見可能な将来において高度に緩和的な金融政策が米経済には必要だ」と述べた。
バーナンキ議長は来週、金融政策に関する半期に一度の議会証言を予定している。
プロッサー総裁はこの日、ワイオミング州ジャクソンホールでブルームバーグのインタビューに応じ、「一気に行動することは望まないが、早急に縮小を始めるべきだと考えている。年末までには終了したい」と述べ、「経済にとって健全な措置だ。漸進的に進めればよい」と続けた。
RBSセキュリティーズの為替ストラテジスト、ブライアン・デンジャーフィールド氏は電話インタビューで、「緩和縮小はやはり9月に始まるというのが一般的な見方で、バーナンキ議長の発言でそれが変わったとは思わない」と述べた。
フランス格下げフィッチはフランスの格付けを「AAA」から「AA+」に1段階引き下げた。成長不足と債務増大に対する懸念が理由。
ポルトガル国債はこの日、3日続落した。政局不安が強まったことが背景。同国の10年債利回りは7.84%に上昇、3日につけた日中ベースでの7カ月ぶり高水準の8.11%に近づいた。
原題:Dollar Gains Versus Most Peers on Stimulus Outlook; AussieDrops(抜粋)
◎米国株:最高値を再び更新、銀行決算を好感-UPS下落
米株式相場は7営業日続伸となり、過去最高値を更新した。金融機関の決算が予想を上回ったことが手掛かり。UPSは利益予想の下方修正が嫌気され下落した。
S&P500種株価指数の業種別10指数では金融株が最大の上げ。JPモルガン・チェース とウェルズ・ファーゴ の決算では利益がアナリスト予想を上回った。UPSは安い。同社は4-6月(第2四半期)の景気減速を理由に2013年通期の利益予想を引き下げた。ボーイングも下落。英ロンドンのヒースロー空港で、駐機中の「787」(ドリームライナー)から出火したことが嫌気された。
S&P500種 株価指数は前日比0.3%上昇の1680.19。ダウ工業株30種 平均は3.38ドル(0.1%未満)上げて15464.30ドル。
ラッセル・インベストメンツのチーフ市場ストラテジスト、スティーブン・ウッド氏は電話取材に対し、「決算は極めて重要になる」とし、「その週、その月の中心的な材料になるだろう」と述べた。
S&P500種は前日に1.4%上昇し、終値ベースで過去最高値を更新した。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が刺激策の維持を支持したことが手掛かり。
相反するメッセージ相場は一時下げる場面があった。フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が、債券購入を9月には縮小し始めるべきだとの見解を示したことが手掛かり。しかしその後セントルイス連銀のブラード総裁が、インフレ率が金融当局の目標である2%に向かって上昇しない限り債券購入を縮小するべきではないと指摘したことに反応し、相場は下げ止まった。
ここ6週間、金融当局者の発言を受けて市場では債券購入の縮小時期や規模を見極めようとする動きが広がり、相場が上下する要因となっている。
ボストン・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・ガウル氏は電話取材で、「金融当局が望むのは、市場が徐々に流動性主導の強さから、経済主導の強さへと変化することだ」とし、「真の意味で経済が力強さを備えているかはまだ分からない。ただ2、3年前よりはずっと近づいている」と続けた。
この日の経済指標では、7月の米消費者マインド指数が前月から予想外に低下。また6月の米生産者物価は市場予想を上回る伸びとなった。エネルギーや自動車の価格上昇が影響した。
銀行決算JPモルガンとウェルズ・ファーゴの決算を好感し、金融株の指数は1.5%上昇となった。S&P500種の構成企業でこの日決算を発表したのはこの2社のみ。
ウェルズ・ファーゴ は1.8%高の42.63ドル。同社の4-6月決算は利益が前年同期比で19%増加した。経費削減が寄与した。
JPモルガンは0.3%安の54.97ドル。同社の利益は31%増で、アナリスト予想を上回った。株式・債券トレーディングの収入が増えた。
UPS は5.8%安の86.12ドル。下落率は08年12月以降で最大。ボーイングは4.7%値下がりし、101.87ドルだった。
原題:S&P 500 Extends Record as Bank Rally Overshadows UPSForecast(抜粋)
◎米国債:5日ぶり下落、当局者が9月の縮小開始を支持
12日の米国債は5日ぶりに下落。フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁が債券購入の縮小は9月に開始するべきだと述べたことが材料となり、売り優勢に転じた。
10年債利回りは8日に約2年ぶりの高水準となる2.75%をつけたが、バーナンキ連邦準備制度理事会(FRB)議長が予見可能な将来において高度に緩和的な金融政策が米経済には必要だと述べたことに反応し、その後は下げが続いた。
CIBCワールド・マーケッツのマネジングディレクター兼米国債トレーディング責任者、トム・トゥッチ氏(ニューヨーク在勤)は、「先週は当局の行動を織り込み過ぎて相場が下落した」と述べ、「金融当局は刺激策を緩めようとしているだけで、金利の上昇は望んでいない。政策金利はもっと長い期間、低水準で据え置かれるだろう」と続けた。
ブルームバーグ・ボンド・トレーダーによれば、ニューヨーク時間午後5時現在、10年債利回り は1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.58%。同年債(表面利率1.75%、2023年5月償還)価格は2/32下落の92 26/32。
10年債利回りは週間ベースで16bp下げた。これは2012年6月1日までの週以来で最大。
金融政策、依然として緩和的10年債利回りは6月に36bp上昇した。バーナンキ議長は先月、景気動向が予測に沿っている場合には年内にも量的緩和を縮小させ始め、2014年年央には終了する可能性があると述べた。議長は来週、米議会で半期金融政策報告を行う。
ノバスコシア銀行の米国債トレーディング責任者、チャールズ・コミスキー氏(ニューヨーク在勤)は「金利は短期間に上昇し過ぎた」と述べ、バーナンキ議長は「市場に対し、量的緩和が終了しても、金融政策は依然として緩和的であることを伝えた」と指摘した。
FRBが10日公表した連邦公開市場委員会(FOMC、6月18-19日開催)の議事録は、バランスシートの適切な道筋をめぐる議論では、参加者19人のうち「約半数」が「今年遅くに資産購入を終了するのが恐らく適切だろう」とする一方で、「多くのメンバーは、資産購入ペースの減速が適切になるには労働市場の見通しが一段と改善する必要があると指摘した」と記した。
今週実施された米国債入札での需要を見ると、国債市場からの資金流失が収まりつつあることが示された。
入札での需要週内に実施された3年、10年、30年債の入札(計660億ドル)の応札倍率は平均で2.89倍。これは6月27日までの3日間で実施された2年、5年、7年債入札(計990億ドル)での平均応札倍率2.71倍を上回った。
米国債のボラティリティ(変動性)の指標とされるメリル・オプション・ボラティリティ・エスティメート(MOVE )指数は94.46。5日は117.89と、2010年12月以来の最高だった。1年間の平均値は64.27。
米政府債のディーラー間ブローカーで最大のICAPによると、米国債の出来高は2582億8000万ドルと、前日の3490億ドルから26%減少した。年初からの平均は3215億ドルとなっている。
フィッチ・レーティングスはフランスの格付けを「AAA」から「AA+」に1段階引き下げた。ムーディーズ・インベスターズ・サービスとスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は既にフランスを最高格付けから引き下げている。フィッチの格付け見通しは「ステーブル」。
ポルトガルの政局不安で欧州債務危機が悪化する恐れがあるとの懸念から、米国債は一時上昇する場面もあった。
原題:Treasuries Fall 1st Time in 5 Days on Plosser TaperingComments(抜粋)
◎NY金:反落、ドル上昇で-週間では2011年以来の大幅高
ニューヨーク金先物相場は反落。ドルの上昇を背景に、代替投資先としての金買いが後退した。米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長が刺激策を支持する発言をしたことをきっかけに、週間ベースでは2011年10月以来の大幅上昇となった。
金は前日までの4日間に5.5%値上がりした。バーナンキ議長は10日、「予見可能な将来において高度に緩和的な金融政策が米経済には必要だ」と述べた。主要10通貨に対するドルの値動きを見るブルームバーグ・ドル指数は一時0.6%上昇した。
インテグレーテッド・ブローカレッジ・サービシズ(シカゴ)のヘッドディーラー、フランク・マギー氏は電話インタビューで、「ドルが金を押し下げている」と指摘。「全体的なトレンドはまだ軟調だ」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)COMEX部門の金先物8月限は前日比0.2%安の1オンス=1277.60ドルで終了した。週間では5.4%上昇。
原題:Gold Decline Pares Best Week Since 2011 as DollarStrengthens(抜粋)
◎NY原油:反発、在庫が3週連続で減少するとの思惑で
ニューヨーク原油先物相場は反発。米国の在庫が減少を続けるとの思惑から買いが入った。過去2週間の在庫は少なくとも30年ぶりの大幅減少だった。
米エネルギー情報局の10日発表によると、5日までの2週間で在庫 は2020万バレル減少の3億7390万バレル。ニューヨーク原油先物市場では期近物が期先物を上回る逆ざやになっており、在庫を保有する魅力が薄れている。米企業決算がアナリスト予想を上回っていることも原油の買い材料。
エナジー・アナリティクス・グループのディレクター、トム・フィンロン氏(フロリダ州ジュピター在勤)は「過去2週間の原油在庫は驚くほど減少した。市場の構造を考慮すると、在庫は再び大幅に減少しそうだ」と指摘した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物8月限は前日比1.04ドル(1.04%)高の1バレル=105.95ドルで終了した。週間では2.6%安。
原題:WTI Crude Rises on Speculation U.S. Supply to Drop a ThirdWeek(抜粋)
◎欧州株:ほぼ変わらず、5週間ぶり高値近辺-米決算に注目
12日の欧州株式 相場はほぼ変わらず、前日の5週間ぶり高値近辺で取引を終えた。来週発表される米決算が注目される。この日は合併・買収(M&A)を手掛かりにして急伸する銘柄があった一方、スペインの電力会社が大きく売られた。
英エンジニアリング会社インベンシスは15%急伸。仏シュナイダーエレクトリックから約33億ポンド(約4960億円)の買収提案を受けた。英フェニックス・グループ・ホールディングスは10%上昇。スイス再保険の部門との統合に向け交渉中であることが明らかになった。スペインでは再生可能エネルギー会社や電力供給会社の利益圧迫につながる政府計画を受け、関連の公益銘柄が売られた。
ストックス欧州600指数 は前日比0.1%安の296.2で終了。一時は0.6%高となっていた。今週全体では2.7%上昇。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長が10日、米経済には予見できる将来において刺激策が引き続き必要との認識を示したことと、米決算発表でシーズン一番乗りのアルコアの業績が予想を上回ったことが支えとなった。
BTIGの株式ストラテジスト、ニック・ザンダーズ氏(ロンドン在勤)は「来週は決算発表が本格化し、それが相場動向の鍵となる」と指摘。「多くの企業は第1四半期末のガイダンスで下期の回復を見込んでいたため、通期ガイダンスが注目される公算だ」と付け加えた。
シティグループやゴールドマン・サックス・グループなどが来週に決算を発表する。
この日の西欧市場で主要株価指数が上昇したのは18カ国中8カ国。英FTSE100指数は0.1%未満の上げ。独DAX指数は0.7%上昇。一方、仏CAC40指数は0.4%下げた。
原題:European Stocks Little Changed as M&AOffsets Spain Utility Drop(抜粋)
◎欧州債:ポルトガル債が下落、政局不安で-英仏独の国債上昇
12日の欧州債市場では、ポルトガル国債が下落。10年債は週ベースで、少なくとも1997年以来最長の下げを記録している。同国での政争が総選挙につながり、金融支援プログラムが脅かされるとの懸念が根強い。
ポルトガル10年債利回りは昨年11月以来の高水準に近づいた。同国の公債当局は市場環境が整えば定期的に債券を発行する方針を示した。一方、ドイツとフランス、オランダの国債は値上がり。
欧州中央銀行(ECB)のコンスタンシオ副総裁はユーロ圏の金融政策が緩和的にとどまるとの認識を示した。アイルランド10年債利回りは1週間ぶりの大幅低下。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が同国の格付け見通しを「ポジティブ(強含み)」に引き上げた。
モニュメント・セキュリティーズのストラテジスト、マーク・オストワルト氏は「ポルトガルは政治動向を背景に売られている」と発言。「政党間の共通項はあまりないようだ。また、ポルトガルのように小さい債券市場では相場の動きが大きくなりがちだ」と続けた。
ロンドン時間午後4時54分現在、ポルトガル10年債(表面利率4.95%、2023年10月償還)利回りは前日比61ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の7.51%。3日には8.11%に達し、昨年11月21日以来の高水準となっていた。過去1年の平均は7.38%。価格はこの日、3.845下げ82.09。2年債利回りは58bp上昇の5.78%。
ドイツ10年債利回りは6bp低下し1.56%。先月19日以来の低水準である1.54%まで下げる場面もあった。フランス10年債利回りは4bp低下の2.19%。オランダ債利回りは6bp低下の1.97%。
アイルランド10年債相場は3日ぶりに上昇。利回り は7bp低下の3.90%。
英10年債相場は5営業日続けて上昇。3月以来最長の連続高となった。英米などで中銀が緩和的な政策を続けるとの観測が支えた。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は10日、米経済には予見できる将来において刺激策が引き続き必要との認識を示した。
ロンドン時間午後4時15分現在、英10年債(表面利率1.75%、2022年9月償還)の利回りは前日比7bp低下の2.31%と、6月20日以来の低水準。価格は0.53上げ95.38となった。前週末比では17bp低下し、3月1日終了週以降で最もきつい下げとなった。
原題:Portuguese Bonds Tumble Amid PoliticalUpheaval as Bunds Rally(抜粋)原題:Gilts Advance for a Fifth Day on StimulusOptimism; Pound Drops(抜粋)
更新日時: 2013/07/13 07:06 JST