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<放送芸能部記者の目> 私を推す?推さない?

公演を終え、ハイタッチでファンを送るSKE48のメンバー。一人一人の個性をアピールする=名古屋市中区のSKE48劇場で

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 ネットが、選挙で躍進する鍵を握った。

 参院選ではない。六月八日にあったアイドルの「AKB48選抜総選挙」。躍進したのは、名古屋・栄を拠点にするSKE48だ。

 東京を拠点にAKB48が有利に人気を集める中、新曲四曲を歌える「定数六四」のメンバーに、SKEの十七人が“当選”。上位へも多数が食い込んだ。

 「地方はどうしても不利。それを補っているのがネットだ」。SKE設立時からファンという男性(26)は語る。

 メンバーはネットを駆使し、身の回りの話題を発信してきた。ネットに地域格差はなく、内容で勝負できる。

 多く利用されているのが会員制交流サイトのグーグル・プラス。ここで人気をつかんだとして評判なのが、SKE研究生の松村香織さんだ。四十八人の正規メンバーではなく、テレビや劇場にもほとんど出ないのに、総選挙で二十四位になった。

 SKE48の番組を制作する東海テレビの稲吉豊プロデューサー(40)は「ネット動画で自分のキャラクターをうまく伝え、全国のファンをつかんだようだ」。

 五年目を迎え、社会現象になりつつある選抜総選挙。今春、SKE48劇場からAKB48劇場支配人になった湯浅洋さん(50)は、盛り上がりの理由を「この人に懸けたい、と思わせてくれるメンバーがいるから」と言う。

 ネット選挙が解禁された参院選だが、どうも盛り上がりに欠けて見える。湯浅さんに「政治家って、いまひとつ顔が見えない」と指摘され、ハッとした。

 政治姿勢、信条、活動…。それらが心に届いて初めて顔が見えてくるのではないか。ネットが政治家と有権者をうまくつないで「この人に懸けたい」となってくれば、選挙は変わる。選挙運動の道具ととらえていたネットに、大きな可能性があるように思えてきた。

(文・浅野宮宏、写真・小嶋明彦)