July 10, 2013
カナダ、ケベック州のラックメガンティックで7月6日、原油を満載した貨物列車が脱線・転覆し爆発、周囲を巻き込んで大火災となった。8日時点で死者は13人に上っており、現在も近隣住民の安否確認が続けられている。
事故の直前、原油を満載した73両編成の貨物列車は、夜間の乗員交代のためラックメガンティックから7キロの地点に停車していた。しかし、牽引していた5両の機関車から切り離されて制御を失い、下り傾斜の線路上を町の中心部に向って暴走。脱線した末、爆発、炎上した。アメリカのメイン州境に程近い小さな町は何十時間にもわたって炎に包まれた。列車を運行していた鉄道会社の発表によれば、機関車で発生した小火災の消火活動にあたった消防隊員が、列車のブレーキを解除したことが原因だという。
今回の大惨事は、石油の鉄道輸送について議論を呼ぶきっかけになるかもしれない。北アメリカでは近年、石油の輸送手・・・
事故の直前、原油を満載した73両編成の貨物列車は、夜間の乗員交代のためラックメガンティックから7キロの地点に停車していた。しかし、牽引していた5両の機関車から切り離されて制御を失い、下り傾斜の線路上を町の中心部に向って暴走。脱線した末、爆発、炎上した。アメリカのメイン州境に程近い小さな町は何十時間にもわたって炎に包まれた。列車を運行していた鉄道会社の発表によれば、機関車で発生した小火災の消火活動にあたった消防隊員が、列車のブレーキを解除したことが原因だという。
今回の大惨事は、石油の鉄道輸送について議論を呼ぶきっかけになるかもしれない。北アメリカでは近年、石油の輸送手段として鉄道が再び脚光を浴びているからだ。最大の要因は、アメリカのノースダコタ州からカナダにかけて広がるバッケン・シェール油田の台頭にある。水圧破砕法(フラッキング)という新しい採掘方法により、ノースダコタ州はアメリカ国内の石油生産量第2位へと急浮上した。だが、石油パイプラインの整備は追いついていないため、採掘された石油は鉄道を使って北アメリカ沿岸部の各石油精製工場に輸送されている。ラックメガンティックで脱線した貨物列車も、バッケン・シェール油田から、カナダ東部、ニューブランズウィック州の石油精製工場への途上だった。
鉄道による石油輸送量は急上昇している。アメリカ国務省の最新分析によると、バッケン・シェール油田の出荷量は2013年末までに1日80万バレルを超えると予想されている。これは2011年8月の実に10倍に相当するという。国内で稼働した貨物車両は2013年第1四半期だけで延べ9万7000両に上る。2008年の年間9500両から、わずか5年間で40倍に増加した計算になる。カナダでも同様の傾向が見られ、2009年のわずか500両から、2013年は13万~14万両に達するとカナダ鉄道協会は見積もっている。
◆鉄道輸送の危険性
だが、石油の鉄道輸送に対する需要が高まる中、安全性に関する議論は置き去りにされている感が否めない。
フランス、パリに本部を置く国際エネルギー機関(IEA)は、「鉄道輸送量の増加に伴い、安全性に関する問題点もいくつか出てきている」と指摘する。もっともIEAは、「パイプラインと比べて事故発生率は高いが、輸送中の石油流出量の割合は低い」と分析。だが、今年3月にミネソタ州で起きた貨物列車の脱線事故は、この分析に加味されていない。同事故では、カナダ産石油3万ガロン(約11万リットル)余りが流出。過去4年間分の2倍を上回る量が一気に環境に漏れ出たことになる。
貨物列車の事故による惨事は、石油輸送だけではない。過去には、化学物質のエタノールを積んだ貨物列車が脱線、大規模な火災が発生したケースも複数ある。最悪の事例が2009年のイリノイ州で、エタノールを積載した計13両が脱線して炎上。踏切付近の車に火が燃え移り1人が死亡、7人が負傷した。事故現場周辺のおよそ600世帯が避難する騒ぎとなり、事故による損害額は約8億円に上った。
ラックメガンティックの脱線事故で、カナダ鉄道協会は次のようなコメントを公式に発表している。「犠牲者の方々には心からお悔やみ申し上げます。甚大な被害をもたらした今回の事故については、カナダ運輸省およびカナダ運輸安全委員会と連携して原因究明に全力を挙げる所存です」。
Photograph from Surete du Quebec via Canadian Press/AP