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薬効のデータに“操作の疑い”
7月12日 0時39分

薬効のデータに“操作の疑い”
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大手製薬会社「ノバルティスファーマ」の高血圧の薬の効果を調べた複数の大学の臨床研究にこの会社の社員が関与し、研究結果に疑問が投げかけられていた問題で、京都府立医科大学の調査委員会は、データに何らかの操作があった疑いがあるとしたうえで、ほかの薬より脳卒中や狭心症を減らせるとした臨床研究の論文の結論には誤りがあった可能性が高いとする調査結果を発表しました。

この問題は、ノバルティスファーマが販売する高血圧の治療薬「ディオバン」の効果を調べた京都府立医科大学などの臨床研究にこの会社の当時の社員が関与し、データの解析などを担当していたもので、「ほかの薬より脳卒中などのリスクを下げる効果が高い」などとした論文が発表され、薬の販売促進に使われていました。
これについて京都府立医科大学の調査委員会は11日夜、患者のカルテに書かれた情報と論文作成に使われたとされる解析データに食い違いがあり、データに何らかの操作があった疑いがあると発表しました。
そのうえで、血圧を下げる薬の効果に問題はないもののほかの薬より脳卒中や狭心症を減らせるとした結論には誤りがあった可能性が高いと指摘しました。
ノバルティスファーマは、この臨床研究の結果を薬の販売促進などに使っていて、ディオバンは、年間1000億円以上を売り上げる商品になっていました。
これについて厚生労働省の治験推進室は「京都府立医科大学の発表は、臨床研究のデータを操作したことが強く示唆される内容で、このようなことが起きたのは非常に遺憾だ。今後については京都府立医科大学以外に同様の臨床研究が行われた4つの大学の調査結果などを踏まえたうえで対応を検討したい」と話しています。
「ディオバン」は、ノバルティスファーマが開発した高血圧の治療薬です。
17年前、ドイツで承認されて以降、世界のおよそ100か国で承認されています。
日本では13年前の平成12年に承認、販売され、去年までの売り上げの額はおよそ1兆2000億円に上っています。
京都府立医科大学の調査結果について、ノバルティスファーマは「大学の報告からは、臨床研究の際の外部の委員会の判定記録との照合結果が示されていないので、恣意的(しいてき)なデータの操作があったとは確認できない。大学関係者の方々や患者様に対して、ご心配をおかけしていますことを申し訳なく思っています。今回、京都府立医科大学の報告においても、ディオバンの降圧効果に問題がないことが確認されました」とするコメントを発表しました。

京都府立医科大の検証

京都府立医科大学の調査委員会は、臨床研究に参加したおよそ3000人の患者のうち今もカルテが保管されている223人の患者のデータと論文に使われたデータとを突き合わせ、論文の作成が正しく行われたのか検証しました。
その結果、カルテには、脳卒中や狭心症と診断された記録があったにもかかわらず、論文に使われたデータには、症状がないようにされていた患者が複数いたことが分かりました。
また、逆に脳卒中や狭心症と診断されていないのに症状があったようにされていた患者もいましたが、結果としては、脳卒中などを防ぐ効果が高くなるようにデータが変わっていたということです。
調査委員会は「意図されたものか、意図しないミスなのかは判断できない」としたうえで、「何らかの操作が行われた疑いがある」としています。
そして、「正しく分析されていれば、ほかの薬と効果に違いがないという結論になる可能性が高い」としています。
また血圧を下げる効果についてもほかの薬と大差はなかったとしています。

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