宝塚市役所:火柱、黒煙…職員らが恐怖語る 行政機能停止
毎日新聞 2013年07月12日 12時16分(最終更新 07月12日 13時27分)
立ち込める黒煙、火の海となるフロア−−。12日朝に発生した兵庫県宝塚市役所の放火事件。庁舎の外壁には焼け焦げた跡が残り、火災のすさまじさを見せつけた。「何でこんなことが」「一歩間違えば大惨事だった」。事件当時、現場に居合わせた職員らは、恐怖と怒りの表情で当時を振り返った。
「生きていかれへんやろ」「こういうことや」
市税収納課の男性職員(26)によると、逮捕された高橋昭治容疑者(63)は、同課のカウンターで、預金を差し押さえられたことに腹を立て、大声を出していた。「ガシャーン」。直後、ごう音が3回響き、火柱が天井まで上がった。男性職員は「(高橋容疑者は)火炎瓶を3本投げた。2本目は若い職員の額に当たった。突然の出来事だった」と話した。
出火後、市職員が消火を急いだが、火勢はおさまらず、タオルなどで顔を覆った大勢の職員らが建物から逃げ出した。
火炎瓶を投げつけた後、高橋容疑者は下の階に降り、自動販売機で飲料水を買っていたという。
別の市税収納課の男性職員(27)も「突然カウンター内の2、3カ所で火の手が上がった」と驚きの表情で振り返った。「床などに当たって割れたのでガラス製だと分かった。1カ所は消火器で消し止めたが、残りの箇所は手に負えなかった」と語った。
最初に応対した女性職員(22)は「男は最初から燃料の臭いがしたが、口調は普通だった。突然2メートルほどの火柱が上がったので、次々に窓を開け、ベランダから中庭に避難した」と戸惑った様子で話した。
当時、3階で勤務していた男性職員(52)は「火災報知機が鳴ったのとほぼ同時にダクトから煙が入ってきた。窓の外は黒煙が立ち込めていた」と話した。
現場に居合わせたカメラマンの伊藤千尋さんによると、火災の直前、初老の男が「借金までして一生懸命やってるのに」と興奮した様子で大声で怒っていたという。「ボン」という音がした後、机が燃え、床に燃え移って辺り一面が火の海のようになったという。伊藤さんは「何事が起こったかわからなかった。化学薬品のような臭いが漂っていた」と話した。