ホーム > こどもたちのために > 身体のおはなし > 化学物質過敏症が増えている

化学物質過敏症が増えている

このページを印刷する
この記事を印刷する

化学物質過敏症が増えている

マナメッセ14号(1995年4月1日発行)より抜粋
TEXT
北里大学眼科教授医学博士
宮田幹夫先生
化学物質過敏症、及びその治療法の研究に長年携わる。
石川哲主任教授との共著に「化学物質過敏症ってどんな病気」
(合同出版)がある。

超微量の化学物質で頭痛、めまいなどの症状がでる

この数十年の間に、人工的な化学物質の数が次々に登場し、今や私たちの身のまわりには、化学物質があふれています。そして暮らしが便利になった半面、体にさまざまな障害が起こってきています。そのひとつが「化学物質過敏症」。日本人の10人に1人が悩まされています。有害な化学物質を一定量以上体内に取り込むと中毒になります。摂取量がごく少量でも、それがしばらく続けば慢性的なアレルギー症状が起こります。化学物質過敏症は、さらに微量の100万分の1g以下の化学物質で症状がでます。(ページ2 図参照)
アレルギーについては研究も進んできており、血液中の免疫グロブリンE(IgE)の数値を調べることで、アレルギー反応が起きているかどうかを調べられます。ところが化学物質過敏症はアレルギーとは違ってあまりにも微量の化学物質で引き起こされるため、IgEの数値にも血液にもあまり変化が認められず、患者さんの訴えで判断するしかありません。そのため頭痛、めまい、しびれ、下痢、疲れやすいなどといった化学物質過敏症の症状がでていても、気づかなかったり、単に体調がおかしいだけと思っている場合も多いのです。しかも知らないうちに、自律神経の中枢に影響を及ぼし、イライラしやすくなったり、攻撃的になるなど性格まで変わってしまうこともあるほどです。なかなかつかみどころのない化学物質過敏症ですが、比較的原因物質として特定しやすいのが、有機リン、ホルマリン、シンナードなどです。このように書くと、ふつうの生活にはほとんど馴染みがないように思うかもしれません。ところが有機リンは殺虫剤や防虫剤として、ホルマリンは衣類などの消毒に、シンナードは塗料として、家のいたるところで使われている物質なのです。これらの物質は揮発性が高いため、ガスとなって家の中に充満します。そして家族の中では家にいる時間の長い主婦、そして新陳代謝が高いため化学物質を取り込みやすい子どもが、もっとも影響を受けてしまいます。
もうひとつやっかいなことには、いったん何かの物質で症状がでてしまうと、次々にほかの化学物質でも反応がでてしまいます。化学物質過敏症への取り組みが進んでいる米国では公共の場所での有機リン系の殺虫剤の使用が、ドイツでは免疫異常を起こすという理由でトイレの芳香剤が禁止されているほどです。
私たちに何ができるのか