◇名古屋場所<5日目>
千代大龍(右)に送り出しで敗れる稀勢の里=愛知県体育館で(佐藤雄太朗撮影)
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(11日・愛知県体育館)
大関稀勢の里(27)=鳴戸=は平幕の千代大龍に送り出されて3勝2敗となり、場所後の横綱昇進が厳しくなった。横綱白鵬(28)=宮城野=は臥牙丸をすくい投げで退け、琴奨菊、琴欧洲の両大関、平幕の魁聖とともに全勝を守った。
敗戦後の支度部屋。途切れ途切れに質問に答えた後、「もういいッスか」と取り巻いた報道陣を遠ざけた稀勢の里。右手で頭を抱え、2度3度と首をひねる。そして「あーっ!」と言葉にならない声を発し、悔しさを表現した。
5日目で早くも2敗目。しかも、ともに平幕相手に。印象の悪さばかりが目立ってしまう。今場所は、相手の変化に足がついていかない。この日も千代大龍の強烈な左のど輪で上体を起こされ、右にいなされると耐えきれず、あっさり土俵下まで送り出された。
「うーん、まあ…。まだ終わったわけじゃないですけどね」。もどかしい?と聞かれると「どうだろう。まっ、切り替えていくだけ」。何度も舌打ちとため息を交えながら、険しい表情を崩さなかった。
期待が大きいからこそどうしても落胆の声が大きくなる。北の湖理事長(元横綱)は「今場所は初日から内容が良くない。肘が空いているし、前に持っていく力もない」と指摘。昇進に関しては「ここでの2敗は痛い。これからどうなるか分からないが、今後は対戦相手が厳しくなる。来場所につながる相撲をとってほしい」と、先送りをにおわす発言。
土俵下で敗戦を見届けた鏡山審判部長(元関脇多賀竜)は「厳しいといえば厳しいが、しょうがない。最後は星数(勝ち数)なんだから星を挙げていくしかない。理事長は13勝と言っている。いちるの望みを持って頑張ることだ」と激励した。
こんなデータがある。第46代横綱朝潮は昇進場所となった1959年の春場所で13勝2敗。2日目、5日目と序盤に2敗しながらその後10連勝フィニッシュで昇進を決めた。今回、稀勢の里に課せられた当確ノルマは「14勝以上」か「13勝以上の優勝」。数字上、まだ可能性は消えてない。このまま白星を重ね、常勝街道を走る白鵬まで破れば、印象度も抜群だ。
綱とりのプレッシャーについて「一日一日の積み重ねですから」と稀勢の里。厳しい状況に追い込まれたことは事実だが、あきらめるにはまだ早すぎる。開き直って奇跡の10連勝を目指すだけだ。 (竹尾和久)
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