物質を構成する粒子

 物質を構成する粒子には、原子・イオン・分子がある。これらの粒子が集まって物質となる。

1)原子

 物質を構成する基本的な成分を元素といい、元素は元素記号によって表された。ここで学習する原子は、元素の実際の姿である。原子は粒子の状態であり、物質を構成する基本的な粒子であるといえる。すなわち、元素といった場合はその種類をさし、原子といった場合はその元素の実際の姿(粒子)のことをいう。



2)原子の構造

原子は原子核電子から構成されている。原子核はさらに陽子中性子からできている。陽子は電気的に正(+)に、電子は負(−)に荷電した粒子で、中性子は±0の粒子である。原子は原子核を中心として、電子はその周りに陽子の数と同じだけ存在する。つまり、原子全体では電気的に中性である

原子の構造

また、原子核に含まれる陽子の数は、それぞれの元素に固有のものである。つまり、陽子の数によって、その原子が何原子なのかが分かる。そこで、この陽子の数をその原子の原子番号と呼ぶ。その他、陽子数と中性子数の和はその原子の重さを決定する(電子は陽子・中性子に比べてかなり軽いさいので無視できる)ので、その原子の質量数という。これを表すときは、元素記号の左上に質量数を、左下に原子番号をつけて表す

原子の構造

3)同位体

原子番号が同じで、原子核内の質量数が異なるものを互いに同位体またはアイソトープという。つまり同じ種類の原子でも中性子が異なることなるものが存在するということ。同位体の化学的性質は非常によく似ていて、それぞれの元素は多くの場合、何種類かの同位体が一定の割合で混じって存在する。 など同位体が存在しない元素もある。

問題 次の各原子の中に含まれている陽子,中性子,電子の数を答えよ。

それぞれ、陽子数=原子番号, 質量数=陽子数+中性子数 より、中性子数=質量数−陽子数, 電子数=陽子数 から計算する。

 (1)陽子数=7,中性子数=7,電子数=7 (2)陽子数=15,中性子数=16,電子数=15

 (3)陽子数=19,中性子数=20,電子数=19 (4)陽子数=53,中性子数=74,電子数=53




4)電子配置

 原子の構造は陽子と中性子からなる原子核を中心として、そのまわりに電子が存在していた。この電子はいくつかの層に分かれて存在している。この層を電子殻という。電子殻は原子核から近いものからK殻,L殻,M殻,・・・と呼ばれている

1つの電子殻に入りうる電子の最大数は決まっている。内側の電子殻からK,L,M,・・・となるが、これをn=1,2,3,・・・と対応させた場合、それぞれの電子殻には最大で2n個の電子が入る。

電子殻

次に原子番号1〜20の原子の電子配置を見てみる(下表)。

電子配置

K殻には電子は2個まで入るので、HとHeにはK殻しか存在しない
Li〜10NeはK殻に2個の電子が入り、これでK殻がいっぱいになるので、残りはL殻へ入っていく。
11Na以降はL殻が電子8個までしか入らないので、さらに外側の電子殻へと入っていく。

 ここで、M殻は最大で電子が18個まで入るが19Kと20CaはM殻に8個電子が入って残りはN殻に入っている。これは、この状態が安定なためで、このように電子は電子殻の容量を満たさないまま次の殻に入っていくこともある(18Arまでは普通に考えてよい)。また、最大の電子数で満たされている電子殻を閉殻といい、閉殻の状態の電子殻は安定である。


希ガス元素の電子配置

周期表の最も右側の縦の並びである18族(He,10Ne,18Ar,36r56Xe,86Rn)は希ガスといわれ、化学的に非常に安定で、他の原子と反応したりすることはほとんどない。これらの原子の電子配置には共通の特徴が見られる。

希ガスの電子配置

 上に希ガス元素の電子配置を示した。これを見ると、He以外は最外殻電子が全て8個である。Heの場合K殻(最大で電子を2個収容)なので8にはならない。希ガス元素は化学的に安定という事実から、最外殻電子が8個という条件が化学的安定につながるといえる。この最外殻の電子が8個の状態をオクテッドという。

ポイント:安定な電子配置

最外殻電子が8個の状態(K殻しかないものは2個)

5)価電子

 原子が他の原子と反応するときは最外殻の電子が関与する。内側の殻の電子は外側の殻に覆われた形になるので、内側の殻の電子は反応にはほとんど関与しない。そのため最外殻の電子がその原子の性質を示すことになる。この最外殻の電子をその原子の価電子という。最外殻電子の数が1〜7のときは、そのまま価電子数1〜7という。しかし最外殻電子が8(K殻しかないものは2)の場合は先に説明したように、ほとんど反応しないので、荷電子数は0(ゼロ)とする。また、周期表上で同じ族(縦の並び)の原子は価電子が同じになる。



問題 

1、解答例にならって、次の原子の電子配置をかけ。 解答例 K2,L8,M1

F,  12Mg  16S,  18Ar  



 順に、K2,L7    K2,L8,M2    K2,L8,M6    K2,L8,M8



   2、次の図は原子の電子配置を示したものである。これについて次の問いに答えよ。

(1) ()の原子番号はいくらか。  (2) 化学結合をしにくいものはどれか。  

(3)同じ族に含まれるのはどれとどれか。

(1)原子番号=陽子数=電子数だから 8。 

(2)化学結合しにくいものは最外殻電子が8(K殻しかないものは2)のもの。(ア)と(エ)

(3)同族(周期表で同じ縦の並び)の元素は最外殻電子数が等しい。この組み合わせはこの問題に場合、存在しないが、(ア)と(エ)はともに希ガス元素の原子である。(ア)がK殻しかないため、最外殻電子数は合わないが、同族である。




6)イオンの電子配置(イオンの生成)

原子は最外殻電子が8個(K殻しかないものは2個)の状態が最も安定であった。ということは、最外殻電子が8個(K殻しかないものは2個)でないものは安定な状態になろうとする。そこで原子は自身が持っている電子を放出(捨てる)したり、逆に足りない分を受け取ったりして、最外殻電子が8個の状態になる。この状態をイオンという。電子はマイナスの粒子なので、電子を受け取った場合は、陰イオン(マイナスイオン)、放出した場合は、陽イオン(プラスイオン)になる。



  最外殻電子1〜3の原子 → 最外殻電子を放出し、一つ内側の電子殻で8になり、安定化。・・・陽イオンの生成

  最外殻電子6〜7の原子 → 足りない電子を受け取って、その電子殻で8になり、安定化。・・・陰イオンの生成

  最外殻電子4〜5の原子 → イオンにならない。別の方法で安定化する。

イオン化

 イオンの化学式をイオン式という。+,−は元素記号の右上に付ける。電子を1個放出した場合+,2個では2+,3個では3+と表記する。電子を1個受け取った場合は−,2個では2−と表記する。+,2+,3+をそれぞれ1価,2価,3価の陽イオンといい、−,2−,3−をそれぞれ1価,2価,3価の陰イオンという。


イオンの電子配置は必ず希ガス元素の電子配置と同じになる。また、FMg2+のように原子1つからできているイオンを単原子イオンという。


陽イオンになるのは金属元素陰イオンになるのは非金属元素である。  注意:水素Hは特別。 非金属だがH+となる(H-にもなる)。


問題 次のイオンの電子配置をかき,また同じ電子配置をもつ希ガスの原子の名前をいえ。 

(ア)Li (イ)Cl (ウ)S2 (エ)Ca2+



まず、イオンになる前の原子の状態の電子配置を考えて、そこから、イオンの電子配置にする。

(ア)LiはLiなので、電子配置は K2,L1 である。Li+は最外殻の電子を1つ放出したイオンなので、 K2,L1 つまり、K2

(イ)Clは17Clなので、電子配置は K2,L8,M7 である。Cl-は最外殻に電子を1つ受け取ったイオンなので、K2,L8,M7+1 つまり、K2,L8,M8

以降同様に考えると、 (ウ)K2,L8,M6+2 より、K2,L8,M8  (エ)K2,L8,M8,N2 より、K2,L8,M8

また、同じ電子配置をもつ希ガスは、それぞれのイオンの電子数と同じ電子数の希ガスを答えればよい。

(ア)ヘリウム (イ)アルゴン (ウ)アルゴン (エ)アルゴン






7)イオン化エネルギー

イオン化エネルギー 原子中の電子は原子核と電気的な力によって引き付けあっているので、原子から電子を無理やり取り去るにはエネルギーを加えなければならない。

原子から電子を取り去り、陽イオンにするのに必要なエネルギーをイオン化エネルギーといい、特に電子を1個とるのに必要なエネルギーを第一イオン化エネルギーという。

陰イオンになりやすい元素(非金属元素)・・・イオン化エネルギーが大きい 

電子を受け取って陰イオンになる。→ 自ら電子を放出す(捨て)ることはない。 

→ 電子を無理やり取り去るには大きなエネルギーが必要。

→ 陰イオンになりやすい非金属元素はイオン化エネルギーが大きい。


陽イオンになりやすい元素(金属元素)・・・イオン化エネルギーが小さい

 電子を放出して陽イオンになる。→ 自ら電子を放出し(捨て)ようとする。 

→ 電子を無理やり取り去るには小さなエネルギーよい。

→ 陽イオンになりやすい金属元素はイオン化エネルギーが小さい

 

周期表上では、金属元素は左寄り非金属元素は右寄りに分布しているので、同一の周期(横の並び)では右に行く(原子番号が大きくなる)ほどイオン化エネルギーは大きくなる。

同一の族(縦の並び)では、下に行く(原子番号が大きくなる)ほど最外殻はKLM・・・と外側に行く(原子核から離れていく)ので、原子核と電子の引き合う力は小さくなるので、電子を取り去るエネルギー(イオン化エネルギー)は小さくてすむ。つまり上に行くほどイオン化エネルギーは大きくなる。

⇒ イオン化エネルギーは周期表で右上にある元素ほど大きい ・・・ Heが最大





8)多原子イオン

  2つ以上の原子でできているイオンを多原子イオンという。

例1 水酸化物イオン OH- → O原子1個とH原子1個が結合し、さらに電子1つを受け取った形。全体で−1

            電子の数は O原子の電子数8 + H原子の電子数1 + 受け取った電
子数1 = 10個



 例2 アンモニウムイオン NH4+ → N原子1個とH原子4個が結合し、さらに電子1つを放出した形。全体で+1

             電子の数は N原子の電子数7 + H原子の電子数1×4 − 放出した
電子数1 = 10個





9)イオンの名称とイオン式

 オン式を書くときはその元素が電子を何個もっていて、それがK殻に何個,L殻に何個・・・と考えていけば書けるが、代表的なものは覚えてしまうとよい

イオン

Feや銅Cuなどは複数のイオンになることがあるので、(U)や(V)をつけてくべつする。

 

周期表では同族(縦の並び)の元素は同じ価数になる。

イオンと周期表

問題 次のイオン1個に含まれている電子の数は,それぞれ何個か。

   () K+   () NH4+   ()Cl   ()NO3   () SO42




各原子の電子数の総和を求めて、イオンになったときの+,−を引いたり、足したりする。

(ア)Kは19Kだから、電子を19個もっている。Kなので、1個引いて、18個。

(イ)7N + 1H×4だから、NH4で11個。NH4+だから、1個引いて、10個。

(ウ)17Clだから、Clで17個。Cl-なので、1個足して、18個。

(エ)7N + 8O× 3 だから、NO3で、31個。NO3-だから、1個足して、32個。

(オ)16S + 8O × 4 だから、SO4で、48個。SO42-だから、2個足して、50個。






10)元素の周期律

周期表は元素を原子番号の順に並べたもの。横の並びを周期、縦の並びを族という。1,2族および1218族を典型元素、3〜11族を遷移元素という。イオン化エネルギーなどの元素の性質は原子番号とともに周期的に変化している。これを元素の周期律という。

周期律

11)イオンからなる物質

 金属元素と非金属元素が結合する場合、それぞれの元素は陽イオン(+イオン),陰イオン(−イオン)になる。電気的に+と−は互いに引き合い、このときの引き合う力を静電気力という。陰イオンと陽イオンは静電気力により互いに引き合い結合する。これをイオン結合といい、イオン結合でできている結晶をイオン結晶という。イオンからなる物質を表すには、成分元素の原子数を最も簡単な整数比で表した組成式で表す。


 組成式の作り方 

,−の数を合わせて組み合わせる。+イオンの原子,−イオンの原子の順で書く。名前は−イオンの名前,+イオンの名前の順に呼ぶ。(酢酸イオンが含まれるときだけは逆にする。




 Na+ナトリウムイオン)とCl塩化物イオン) → NaCl塩化ナトリウム

+と−だから、Na+Cl1つずつで結合させる。




Ca2+カルシウムイオン)とCl塩化物イオン) → CaCl塩化カルシウム

         2+と−だから、Ca2+1つにCl2つで結合させる。




Mg2+マグネシウムイオン)とOH-水酸化物イオン) → Mg(OH)水酸化マグネシウム

2+と−だから、Mg2+1つにOH2つで結合させる。多原子イオンが複数必要なときは「(  )」でくくる



問題 次の物質を化学式(組成式)で書け。



1)塩化マグネシウム  2)水酸化カリウム  3)炭酸カリウム  4)硝酸カルシウム  5)酸化バリウム  

6)硫化鉄(U)  7)硫酸亜鉛  8)塩化アルミニウム  9)酸化鉄(V)  10)炭酸アルミニウム  

11)硝酸アンモニウム  12)硫酸銅(U)  13)酢酸ナトリウム  14)塩化銀  15)リン酸カリウム  

16)炭酸水素ナトリウム




1) MgCl2   2) KOH   3) K2CO3   4) Ca(NO3)2   5) BaO

6) FeS   7) ZnSO4   8) AlCl3   9 ) Fe2O3   10) Al2(CO3)3

11) NH4NO3   12) CuSO4   13) CH3COONa   14) AgCl   15) K3PO4

16) NaHCO3





12)分子からなる物質

 希ガス元素を除く、元素の原子は単独(1個)では不安定である。そのため、イオンのような安定な状態になる。イオンには陰イオン(非金属元素のイオン)と陽イオン(金属元素のイオン)があり、静電気力によりイオン結合をした。つまり、金属元素と非金属元素はイオン結合によって結合していた


ここで、H2Oを考えてみよう。H2OH原子2つとO原子1つが結合してできている。この2種類の元素はともに非金属元素である。つまり、H2OHOとの結合は、これまでのイオン結合ではないことになる。ここでは非金属元素どうしの結合を考える。この非金属元素の原子どうしが結合してできるもの分子という。また、H2Oのように分子を示す化学式を分子式という。





13)共有結合(一部化学Uの内容)

 非金属元素どうしの結合。通常、非金属元素は陰イオンになるので、非金属元素どうしが結合する場合は静電気力による結合は起こらない。非金属元素どうしは互いに何個かの価電子(最外殻電子)を出し合ってそれを両者で共有することによって結合する。原子は最外殻が8の状態、または閉殻の状態が最も安定なので、互いの原子が価電子(最外殻電子)を共有することによって最外殻が8の状態になる。この結合を共有結合という。


 ここでは最外殻の電子だけを考える。そのため、電子式というもので考える。電子式とは次のように最外殻の電子だけを「・」で表したものである。

電子式

 例1でNH3Nの価電子5個のうち3個は、Hの価電子と共有して対を作っており、これを共有電子対という。またNの残りの2個の価電子は対になっているが共有結合に使われていない。このような電子を非共有電子対という。NHが共有結合する前の対になってない電子を不対電子といい、共有結合は互いの不対電子を共有することによって結合している。




価標と構造式

 共有結合で結合している原子どうしは、互いの不対電子を共有して結合しているが、これは互いに手をつなぎあっていると考えると分かりやすい。たとえば、Nは不対電子が3つなので手を3本、Hは不対電子が1つなので手を1本持っていると考え、N1つとH3で手をつないでいると考えると次のようになる。このいわゆる手を価標という。また価標を用いてあらわすと、その分子の構造がわかるので、価標を用いて示した式を構造式という。

構造式

☆ 価標はいわばその元素の手である。非金属元素の価標の数を覚えておくと、色々な元素を共有結合させる(手をつながせる)ときに便利である。 

H1本, C4本, N3本, O2本,ハロゲン1本, 希ガス0本 

価電子のうちの不対電子がその元素の手の数になる → 同族では手の数も同じになる

 

14)主な分子

分子式と構造式

1本の価標で結ばれた結合を単結合、2本を二重結合、3本を三重結合という。分子の形も覚えておくこと!!特に水の「折れ線形」は注意!!



15)原子からできている物質

 金属元素どうしの結合を金属結合という。金属元素は多数の原子が集まって結合し、結晶となっている。金属の原子は一般的にイオン化エネルギーが小さく、価電子を放出して陽イオンになりやすい。金属の原子が多数で結合するときは、まず各金属原子が価電子を放出して陽イオンになる。陽イオンどうしは反発しあうので、直接結合することはないが、放出された電子によって、陽イオンどうしが集まる。この電子は陽イオンの間を自由に動き回ることができる(下図)。このような電子を自由電子という。この自由電子のため、金属には伝導性が現れる。

金属結合

金属は、多数の原子からなるが、数が決まっていないので、金属を化学式で表すときは組成式を用いる。 例) Na ,Cu など、元素記号をそのまま書けばよい





16)物質のまとめ

物質のまとめ


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