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金融政策―高橋財政からの教訓

日銀が、きのうの政策決定会合で「景気は緩やかに回復しつつある」と判断した。黒田総裁のもと、「異次元」の金融緩和を始めて3カ月。円安は輸出産業の収益を改善させた。来春の消[記事全文]

国際化と教育―多様さに背を向けるな

教育をめぐる自民党の選挙公約を読むと首をかしげることがある。「世界で勝てる人材」、つまりグローバル人材の育成についての項目の中で、なぜか教科書問題に触れているのだ。歴史[記事全文]

金融政策―高橋財政からの教訓

 日銀が、きのうの政策決定会合で「景気は緩やかに回復しつつある」と判断した。

 黒田総裁のもと、「異次元」の金融緩和を始めて3カ月。円安は輸出産業の収益を改善させた。来春の消費増税を見越した住宅関連の駆け込み需要や、13兆円という破格の補正予算も影響している。

 金融と財政の拡張を柱としたアベノミクスによる景気浮揚は80年前になぞらえられる。世界恐慌時に高橋是清蔵相が主導した「高橋財政」である。

 当時、財政拡大に伴う大量の国債を日銀が直接引き受け、金融緩和で世の中に出回るお金を増やし、金利を下げ、円安を導いた。その結果、景気回復には成功したものの、財政支出に歯止めがかからず、悪性インフレにつながった。

 「黒田緩和」は国債を直接引き受けるわけではない。ただ、新たに発行される国債は全額が市場で消化されるが、その70%相当分を日銀が市場から買う。高橋財政では日銀がいったん買った国債の90%を市場で銀行に売っていた。

 黒田緩和なら財政の膨張を防げるのか。違いはそれほど明確ではない。

 高橋財政を始める際、国会審議では第1次大戦後に独仏で起きた悪性インフレの二の舞いになるのでは、と懸念の声が上がった。だが、「景気のため」という空気が強く、議論は深まらなかった。

 とりわけ、景気回復時に日銀が自由に利上げして経済を制御できるのかという点が素通りされた。いまでいう「出口戦略」の欠如だ。

 金利が下がっている間はうまくいったが、景気回復で民間の資金需要が増えると銀行は日銀から国債を買わなくなる。危機感を覚えた高橋は軍事費などを減らそうとしたが、1936年の2・26事件で反乱軍の凶弾に倒れた。

 日銀が国債を抱え込みすぎると、金融政策ががんじがらめになって破綻(はたん)に至る。それが高橋財政の教訓なら、黒田緩和とは入り口が違うだけではないか。

 国際通貨基金(IMF)が示し始めたアベノミクスへの懸念も、同根のものだろう。

 いま政府も日銀も「国債引き受けはしない」「財政ファイナンス(尻ぬぐい)はしない」と言う。それなら、出口に向けた議論を「時期尚早」と封じ込めるのではなく、リスクと対応策について語るべきだ。

 参院選は景気が争点という割に、論戦が深まらない。何やら80年前の風景と重ならないか。

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国際化と教育―多様さに背を向けるな

 教育をめぐる自民党の選挙公約を読むと首をかしげることがある。「世界で勝てる人材」、つまりグローバル人材の育成についての項目の中で、なぜか教科書問題に触れているのだ。

 歴史教科書の「自虐史観」を正すため、どの教科書にも共通して書くべきことがらを文部科学相が定める、という。

 グローバル化と教科書問題はどう関係するのか。党が4月に出した提言は、グローバル人材をこんなふうに描く。

 英語が話せる。世界のトップ大学に進める学力がある。日本の伝統や文化を発信できる。その前提となるのは日本人としてのアイデンティティーだ――。

 だから教科書制度を見直し、歴史と文化を尊ぶ心を育む。両者はそうつながるらしい。

 しかし、思い出してほしい。安倍首相や日本維新の会の橋下徹共同代表の歴史認識をめぐる発言は、近隣の国々ばかりか、米国でも批判を招いた。

 日本の立場を発信することは大切だが、異なる視点への配慮を忘れ、自己弁護ばかりしていると受け取られれば、国際社会で理解をえられない。

 世界を舞台に働くには、多様な文化や意見をもつ人と対話をし、自他ともに生かす道を見いだす能力が問われる。そういう視点が欠けていないか。

 国内に目を向けても、いじめや外国人排斥デモの背景には、自分と違う存在への不寛容さが横たわる。これからの社会には自らの価値観を相対化し、異質な他者を受け入れる力がますます必要になるはずだ。

 民主党は与党の時、大学改革の提言で「多様な他者とコミュニケーションできる」人材の育成を掲げた。が、今回の公約にそんな視点は乏しい。今こそ有権者に問うべきではないか。

 いろいろな人がいて、一色に染まらぬ方が社会は強くなる。戦後の日本はそう考え、教育現場に政治が口を出しにくい仕組みをあえて築いた。教科書や教育委員会の制度がそうだ。

 今の教科書制度は基本的に、どう書くか、どの本を選ぶかを出版社や教委の自主性に委ねている。多様な教科書があってよいという考え方が土台にある。

 参院選では自民だけでなく、維新も教科書検定と採択の全面見直しを掲げている。選挙の結果によっては、その理念は塗り替えられるかもしれない。

 多様性を大切にしてこそ、異なる人びとと自分との接点を探る知恵をまとった人材が育つ。国内外ともに人が交じりあい、多極化する時代にふさわしい教育のあり方を論じてほしい。

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