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新規制基準施行 5原発の審査申請
7月8日 19時43分

新規制基準施行 5原発の審査申請

おととしの原発事故を教訓に、重大な事故への対策を初めて義務づける原発の新たな規制基準が8日、施行され、早期の運転再開を目指す電力会社4社が、5つの原発について、国に新基準に基づく審査の申請を行いました。

原発の新たな規制基準は、これまで電力会社の自主的な取り組みに任されてきたおととしの原発事故のような重大な事故への対策を初めて義務づけるほか、地震や津波の想定をより厳しく評価するよう要求するもので、8日、施行されました。
原発が運転を再開するには、事故の対策や地震などの評価が新基準に適合することが前提になっていて、国の原子力規制委員会では電力会社4社の幹部が5つの原発について安全審査の申請書類を提出しました。
申請が行われたのは、北海道にある北海道電力泊原発の1号機から3号機、福井県にある関西電力大飯原発の3号機と4号機、高浜原発の3号機と4号機、愛媛県にある四国電力伊方原発の3号機、それに鹿児島県にある九州電力川内原発の1号機と2号機の、合わせて10基です。
審査について規制委員会は、原子力規制庁の職員を中心に3つのチームを編成して、今月から始める方針ですが、「少なくとも半年以上かかる」としています。
また、申請どおりに対策が実施されているかを確認する検査や、自治体の同意も必要で、原発の運転再開の具体的な見通しは立っていません。
このほかの原発では、九州電力が佐賀県にある玄海原発の3号機と4号機について、今月12日に申請を行うことにしています。
東京電力は柏崎刈羽原発の6号機と7号機についての申請を規制基準の施行後「できるだけ速やかに行う」としていましたが、地元・新潟県の理解が得られていないことから8日の申請を断念しました。
東京電力は今月5日の会談が物別れに終わった泉田知事に再び説明する機会を今週中にも得たいとして調整を進める方針ですが、具体的な予定は立っていません。

申請の背景は

4つの電力会社が8日、新たな基準に基づく安全審査を申請した背景には、厳しい経営状況や電力供給の問題があります。
福島第一原子力発電所の事故の影響で全国の原発が停止して以降、電力各社は火力発電の比率を高めたことに加え、円安が進んだこともあって燃料費が大幅に増えています。
原発を保有しない沖縄電力を除く全国の電力9社の燃料費の合計は、原発事故の影響がほとんどなかったおととし3月期の決算では3兆6000億円でしたが、ことし3月期には7兆円と2倍近くに増えました。
このため、ことし3月期の決算では、8日、安全審査を申請した4社を含む8社が赤字でした。
4社は、すでに電気料金を値上げしたか、値上げを政府に申請しています。
電力各社は1基の原発が運転を再開すると、毎月60億円から100億円程度の燃料費を削減できると見込んでいて、早期の運転再開で収支の改善につなげたいとしています。
原発の運転停止は、電力の供給にも影響しています。
原発が停止して以降、電力各社は、▽老朽化で止まっていた火力発電所の運転を再開したり、▽火力発電所の定期的な検査を規定の範囲内で先送りしたりすることで供給力を確保していて、もし、老朽化した発電所でトラブルが起きれば、電力需給がひっ迫する可能性もあるとしています。
また、震災前、原発への依存度が高かった関西電力や九州電力は、ことしの夏が平成22年並みの猛暑となった場合、家庭や企業がこれまでと同じように節電に努めたとしても、電力の供給余力はいずれも国が最低限必要と定めている3%ぎりぎりの水準まで低下すると説明しています。
このため、電力会社としては供給力を確保するうえでも、原発の運転再開が必要だとしています。

専門家は説明の重要性指摘

耐震工学が専門で新たな基準の策定にも携わった東京大学の高田毅士教授は、審査のポイントについて、「自然災害は答えは簡単に見つからないので、さまざまな専門家が一緒になって評価することが必要だ」としたうえで、「規制委員会の評価は分かりやすさに欠けている」と述べて、国民の信頼回復につながるような説明の重要性を指摘しました。
高田教授は、まず、8日施行された新基準について「福島第一原発での重大な事故を反映しているほか、地震や津波に加え、火山や竜巻などの対象も入り、自然災害に厳しい基準だ」としたうえで、特に活断層について、「対象とする範囲が40万年前までさかのぼり、よりたくさんの断層を評価するので安全性が高まる」と説明しました。
一方で、今後の審査の課題について高田教授は、まず、自然災害について、「予測が難しいのでどういう考え方で評価するかが重要だ」としたうえで、「自然災害は、答えは簡単に見つからないので、さまざまな専門家が一緒になって評価することが必要だ」と述べました。
特に津波については、「経験は少ないうえ、波の高さだけでなく、速さや強さ、さらに浸水した場合にどうなるかなど施設によって対策も違う」と述べて、審査で特に議論が必要だという認識を示しました。
また高田教授は、「規制委員会の評価はいまだに非常に専門的で、分かりやすさに欠けている。審査の過程や結果がどのように導き出されたかをうまく伝えないと、国民は規制委員会が具体的に何をしているかを理解できず、疑問を抱いたり、信頼が損なわれることになる」と述べて、国民の信頼回復につながるような説明の重要性を指摘しました。

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