● 既成事実 ●
 宇宙戦艦ヤマトの著作権は、1996年12月20日に西崎氏本人(氏の関連会社も連帯)から株式会社東北新社に譲渡されました。
 それから松本零士氏が西崎プロデューサーに対して起こした裁判の一審判決が出るまでの約5年間に、様々な手段で松本零士氏を宇宙戦艦ヤマトの原作者に仕立てようとする動きがありました。その方法の主たるものは、宇宙戦艦ヤマト関連コンテンツの一部に“原作 松本零士”と表記し、コピーライト表記(C)を、(C)松本零士/東北新社・バンダイビジュアルとご丁寧に表示するというものでした。(注意:この表記自体は、明らかな法上の違反行為ではありません。(C)西崎義展/東北新社でも問題ありません。誤解を招く表記には違いありませ。)
 これはまさに宇宙戦艦ヤマトユーザーに対するイメージ戦略、既成事実を作り出す事によって、宇宙戦艦ヤマトの原作者は松本零士氏であることを狙ったものでした。
 「全ての悪因」の項でも述べましたが、宇宙戦艦ヤマトは松本作品とする風潮は西崎プロデューサーの戦略でした。しかしこれはイメージの中だけのものであり、実際に第一作では“原作:松本零士”などとは表記しませんでしたし、コピーライトは(C)オフィスアカデミー、(C)WCC等、西崎氏の会社の表記になっていたのです。
 
 それが誰かが、放映当時存在しなかった原作者名を追記し、(C)を三者表記にするように差し向けたのです。そしてその手段は実に巧妙に、しかもインパクトのある手段でした。
 
 著作権が移動後にバンダイビジュアルから発売された宇宙戦艦ヤマトのDVD、既存の発売済みソフトでは存在しなかった“原作 松本零士”とのテロップが、本編前の画面に挿入され、ジャケットにも同じ事が書き足されました。また、同じように原作テロップが追記された映像がカラオケ会社に提供され、宇宙戦艦ヤマトの主題歌を気分良く歌おうと思うと、故意に偽装された映像が流れしらけてしまうものでした。
 また、web上におけるサイトにおいても、堂々と“原作・総設定 松本零士”、“(C)松本零士/東北新社・バンダイビジュアル”との表記がされ、中には個人のサイトもこれと同じ表記をするものが現れました。さらに、個人では通常入手困難な資料を持ち出して、原作 松本零士を後押しするような個人サイトさえ登場したのです。
 また一説では、TV・マスコミでの宇宙戦艦ヤマト及び、松本氏の登場がこの頃盛んになったともいわれています。もちろん、原作者として・・・。
 当時の状況は、まさに『西崎排斥』との言葉が当てはまる時代だったのです。この西崎排除の流れには、正直、私も反省する点があります。
 西崎氏の会社が破産し、西崎氏が刑事事件を起こしたとき、それまであった新作への期待が打ち壊され、新作に期待していた多くのファンは悲しみました。『このままではヤマトはダメになってしまう・・・。』と。
 そのヤマトを救えるのは、もはや彼しか居ませんでした。松本零士氏です。
 
 私は当時在籍していた個人ファンクラブの方々と、零時社の松本先生に会いました。
 当時の私の気持ちは、宇宙戦艦ヤマトをこのまま埋もれさせてはいけないとの気持ちでいっぱいで、先生には期待を込めて自分の思いを話しました。ですが、そうしたファンの先生に対する期待が、実の所悪かったのかもしれません。
 松本先生がファンの期待という「支持」を受けて、ご自身が宇宙戦艦ヤマトを創造し、作り上げた原作者であると勘違いされたとは思いたくはありませんが、一部のファンの動向が、先生のお考えに影響したのなら、私は大変な罪を犯しました。
 ただその期待は、原作 松本零士の表示や、(C)表記の三者化を願っていたのではありません。しかし、純粋な新作製作への期待だけではなく、宇宙戦艦ヤマトをそっくり松本零士氏の物にしてしまえ・・・そんな流れがファンの間にあったことを、私は薄薄感じていたのも事実です。
 
 それは極めて不愉快なものでした。
 つい先日までは西崎プロデューサーの関係会社等に媚売っていた人達が、西崎プロデューサーからヤマトが離れるや否や、コロリと掌を返して松本零士氏側に媚売っていたのです。自分の利益の為に。
 その後、本来の著作権保有者の権利を誰かが誇大表示し、原作者名の追加などイメージ戦略が次々と行われ、既成事実は着々と進んで行きましたが、私たちファンは多少の疑問を持ちながらも、特にそれを問題視する事はありませんでした。既成事実を作り上げたい人達も、事はうまく進んでいると思っていた事でしょう。そして今頃は、新作宇宙戦艦ヤマトの1本2本位は出来上がっていたと思います。
 それがです、事態は驚くべき方向に進み始めたのでした。松本零士氏が西崎氏に訴訟を起こしたのです。これは宇宙戦艦ヤマトで一儲けしたい人々にとっては、シナリオには無い出来事でした。
 この訴訟はマスコミやネット上で大きく取り上げられ、今までの異常な著作権表示に疑問を持っていたファンの怒りを爆発させてしまったのです。
 まさか、松本氏が宇宙戦艦ヤマトの原作者で無いと思っているファンがこんなにいるとは、一部の利益追求者は思ってもいなかった事でしょう。
 
 松本零士氏の訴訟と、それに続く批判の声に一番苦い顔をしたのは、この既成事実を作ろうとした、事実をねじ曲げた偽りの表記をするように差し向けた張本人達だったはずです。
 ではいったい、それは誰なのでしょうか?
 正直、誰なのかは分かりません。個人とは限らないでしょう。
 
 では、著作権を保持している株式会社東北新社はこの著作権表示をどのように考えているのでしょうか?少なくとも、マスコミなどに映像を提供する窓口は東北新社にあり、コピーライトを(C)松本零士/東北新社・バンダイビジュアルとするように指示、もしくは映像に入れるのは同社の権利内と思いますし、DVDジャケットに“原作 松本零士”と入れる権利もあるはずです。(同社によるとは、オリジナル映像のスタッフリストを改変した事実は無いそうです。)
 
 (C)表記についての東北新社のコメントは、その効力は著作権保有者だけにとどまらないとするものでしたが、原作表記について私が東北新社の担当者に電話で確認した所、驚くべき返答が帰ってきました。
「松本零士さんは著作権者だと思っていた。」
 自社単独で持つ権利を、張本人が理解していなかったとは・・・。まさにミステリーです。
 

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「宇宙戦艦ヤマト」の
著作権者・原作者は誰か?

H14. 3.25 東京地裁 平成11(ワ)20820等 著作権 民事訴訟事件
として争われた民事訴訟。

西崎義展氏がアニメ「宇宙戦艦ヤマト」の著作者人格権を侵害し、松本零士氏の名誉も傷つけたとして、松本氏が訴えた。
これに対して西崎氏は、自身が「宇宙戦艦ヤマト」の著作者であることの確認を求めて反訴した。

裁判の大きな争点としては、「宇宙戦艦ヤマト」を創作したのは誰か?と、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」の大元となる『原作』は存在するか?があり、1審判決では西崎義展氏の主張が認められた。
名誉棄損に関しても、松本零士氏には「名誉毀損となる理由が存在しない」と退けられた。