勘三郎さん、ジョブズ氏…「がん手術は間違い」 慶大・近藤誠医師が直言(上) (3/3ページ)

2013.07.10


がんの手術、抗がん剤治療は患者を幸せにするのか。近藤氏は早期発見の有効性に異を唱える【拡大】

 ──スキルス胃がんと聞くと「逸見さん」「あっという間に亡くなる」と連想し、手術に走ってしまうのか

 「スキルス胃がんそのものではなく、手術が恐ろしいのだと見方を変えなければならないのです。スキルス胃がんで手術した患者の生存期間を調べると、多くは1年以内、ほぼ全員が3年以内に亡くなっています。しかし、僕が手術も抗がん剤投与もしないがん放置療法で様子をみていると、ほぼ全員が3年以上、なかには9年生きた方もいます。僕が診た患者さんの経過が『手術は間違っている』ということを証明しています」

 ──アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏(2011年10月死去、享年56)は、膵(すい)がん発見から9カ月放置したことを、後に「早く手術すればよかった」と後悔したとか

 「手術で転移が判明したのですが、膵がんもメスを入れると転移が早まります。膵臓を取ったところにがんが再発しやすいのです。僕ならば放射線治療でたたく、鎮痛剤で症状を緩和するといった治療をすすめました。実際に亡くなった年齢よりは長生きできたのではないでしょうか」

 ──多くの人が、がん治療は早期発見が有効だと思っている

 「結局は医療も産業で、患者さんの幸せより産業の発展が第一目標になっています。健康な人たちに病院へきてほしい医者たちが集団検診事業を展開し、治療しなくてもよい『がんもどき』をたくさん見つけ、それを手術した成績を加えているから生存率がアップしたように見えます。そうして、早期発見が有効なように感じてしまうのです」

 ──先生は医療を「恫喝(どうかつ)産業」「恐怖産業」と表現している

 「実際にがんになったとき、医者に『治療を受けたくない』といえば、ありったけの言葉で不安に陥れられ、『手術しなければすぐに死ぬ』などと脅されます。そこではじめて、医療は恫喝産業、恐怖産業だと実感するのです」

  =次回テーマは「がん告知、そのときどうする」

 ■近藤誠(こんどう・まこと) 1948年生まれ、東京都出身。慶応義塾大医学部卒。73年に同大医学部放射線科入局。79−80年、米国へ留学。83年より同大医学部放射線科講師。乳房温存療法のパイオニアとして知られる。『患者よ、がんと闘うな』(文春文庫)など著書多数。新著に『「余命3カ月」のウソ』(ベスト新書)。

 

注目情報(PR)

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

毎日25分からのオンライン英会話。スカイプを使った1対1のレッスンが月5000円です。《体験無料》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

サンスポ予想王TV

競馬などギャンブルの予想情報を一手にまとめたサイト。充実のレース情報で、勝利馬券をゲットしましょう!