早稲田大学の白井裕子准教授らは、切削工具のエンドミルを使い、遠隔操作で木を切り倒すロボット「天竜」(写真)を開発した。エンドミルで幹の3カ所を残した状態で削るという方法で伐倒する。幹の直径が大きい木でも安定を保ったまま人手を介さず切り倒せるため、安全性が高い。エンドミルで木を切り倒す装置は初めて。今後は伐倒時間の短縮や、最適なエンドミルの使用など改良を進めて実用化を目指す。
木を切り倒す場合、チェーンソーで幹を「く」の字型に切り取り、その反対から切れ込みを入れる方法が一般的。ところが、直径の大きな木で行うと木が不安定になり、死傷者が多いという問題がある。三角形の頂点を残すように幹を切り進める「三ツ紐(ひもぎ)伐り」は、木が最後まで安定して立っているため作業中の危険が少ない。ただしチェーンソーでこの切り方をするには、方向を様々に変えて複数回に分けて刃を入れる必要があり、作業が複雑だった。
エンドミルは幹に穴を開けて平面に動かすだけで複雑な空間を削れる。また、チェーンソーのように刃が幹に挟まって動かなくなることがない。そこで、エンドミルを伐倒ロボットに応用することで、作業を単純化し遠隔操作できるようにした。
ロボットの土台の大きさは縦150cm×横120cm。土台からエンドミルを搭載したアームの高さは約130cmで、最大で直径約45センチメートルの木を切り倒せる。木を倒したい方向に合わせてロボットを幹にセットし、プログラムに木の直径を入力すると、削る場所を自動で計算する。計算結果を元に遠隔操作で木を切り倒す。動力にエンジンを用いてロボットを小型化した。道が狭く斜面が急な日本の山林にも適用できる。
開発当時修士2年の松尾雄希さんが設計を担当し、フォレストテクニック(浜松市浜北区)、森林総合研究所、静岡県農林技術研究所などと開発した。将来は自動化し、企業などと連携して実用化を目指す。
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