なんというか、特にネット論壇において、20代のもの書きが異様に少ないと思うんですよね。
20代はなぜ少ない?
たとえばYahoo!個人のオーサー一覧を見ても、20代は非常に少ないです。けっこう頑張って探したのですが、社会学者の開沼さんとぼくくらいしかいないんじゃないでしょうか。総勢50名以上のライターのうち、20代が数名ってのは何だか寂しいものがあります。
「論壇」的なマーケットにいる20代を思い浮かべてみると、突出しているのは古市さんですね。それ以外はいまいち思い浮かばず…。
気になるのは、なんで20代の論客がこんなにも少ないか、という話です。ちょっと考えてみました。
年齢=コンテンツ力?
論壇的な仕事というのは、年齢とコンテンツ力がよく比例する分野です。20代の若者と、50代の年長者では、やっぱり持っている情報量・蓄積してきた経験の量が違います。これはそのままコンテンツの魅力にはね返ってきます。たとえば、ぼくには佐々木俊尚さんのような骨太な文章はやっぱり書けないのです。
とはいえ、20代には20代にしか書けない言葉もあります。ある意味では、若者は「ずるい」存在です(大してうまくいってはいませんが、ぼくはかなり意識的に、この「若者」ポジションを取ってきたつもりです)。
ゆえに、論壇においては必ずしも年齢=コンテンツ力という等式が成り立つわけではありません。テクノロジーや「価値観」についてなど、むしろテーマによっては若者の方が有利な場合すらあります。
嫌われたくないという恐れ
ではなぜ発信しないのか。異論はあるかもしれませんが、大きな要因になっているのは「恐れ」なのではないかと、ぼくは感じています。
若者が書く文章というのは、冷静な論理に裏打ちされたものというよりは、ときに怒りの感情すら交錯する、情熱的で危うい文章です。
これは内田樹先生の指摘だったはずですが、社会的な立場が弱い若者である以上、話を聞いてもらうためには「いいからぼくの言うことを聞いてくれ!」「ぼくはこんなに危険なんだぞ!」というある種の威嚇・脅しが必要になります。ぼくの文章が時折攻撃的に傾くのは、まさにこの「聞いてもらいたさ」がためだったりもします。
しかし、この威嚇・脅しはエネルギーが必要なものですし、何より「周囲から嫌われる」というリスクとセットです。また、無知を曝け出すわけですから「周囲からバカ呼ばわりされる」ことも避けられないでしょう。こうした悪影響が怖いから、多くの若者は発言しないのだと考えます。物申すのは、十分な知識や経験、肩書きを得てからにしよう、と。
でも、みんな、言いたいことはあると思うんです。人間ですから。でも、それを伝えることができない。自分の想いを伝えようと思うと、どうしても強い言葉になってしまう。それを発言すると嫌われる。理解してもらえない。やっぱり嫌われたくない。だから黙ることにする。そうして、表向きはニコニコ、裏でグチグチ。
…若いうちは、もっと、怒りに任せて想いを発信してもいいと思うんですよね。嫌われるのが怖ければペンネームでもいいでしょう。黙っているのは不健全なので、多くの若者が「物申す」ようになれば素敵だとぼくは思います。
「物申す」のが得ではない日本社会
同調圧力の強い日本社会においては、立場の弱い若者が「物申す」のは損なアクションということなのでしょう。
それは会社のなかで若者が上司に楯突くようなものです。「この会社はおかしい!」と若者が叫んだところで、上司から「何を言っているんだ!」となじられる、それどころか「うん、わかるぞ。だが社会とはこういうものなんだ」と生暖かい目で諭されるのがオチです。
若者がしっかり物申すようになるためには、意見をするという行為が「得」な領域を用意してあげることが必要なのでしょう。実際、ぼくが知る限り、多くの若者はワークショップやゼミのような「安全地帯」でなら、積極的に自分の意見を発露しますし。
「若者が自分の意見を堂々と発信する社会」をつくるために
「若者が黙り込む社会」と「若者が自分の意見を堂々と発信する社会」、どちらが美しいかと言われれば、ぼくは断然後者だと思います。
こうした文化を作っていくためには、
①若者が安心して物申すことができる場を用意する
②年長者たちが若者の意見に寛容になる
この二つが求められるでしょう。
①に関しては、たとえばハフポのような、よく管理されたコメント欄付きメディアなどが良い場となるでしょう。Blabo!のようなサービスも有望です。もちろん学校のようなオフラインコミュニティも大切な存在です。ある種の「安全地帯」を社会に広げていくことから始めないといけません。
②に関しては、上の世代はそう簡単に変わるものではないと思うので、まずは若者同士で認め合うことが大切になるでしょう。ぼくら同士で出る杭を叩き合っても、世の中は変わりません。この世代で「お互いの意見を認めあう」というカルチャーを作り、ぼくらがそのまま年老いていくのが、もっとも手っ取り早い方法かもしれません。
というわけで、自分の意見を積極的に発信する若者が増えればいいなぁ、と切に願います。「俺は言いたいことがあるぞ!」という方は、自分のブログをまずは作ってください。そんでもってぼくに連絡を下さい、読みますので。